⚠️梵天軸
⚠️蘭竜
⚠️キスする
⚠️ちょっと三途とココ出てくる
👆🏻上記大丈夫な方のみゴー👇🏻
眠気で瞼が開ききらない。どう足掻いても寝不足を否定できない。
竜胆の、自分より僅かに小さく筋が浮き出ている手をとった。
蘭「竜胆」
竜胆は返事をしなかった。まあ返事をする程の言葉でもなかった。
竜胆は、怪我をした。数ヶ月前の南アジアでの任務で敵の銃弾がその美麗な右頬を、敵の刃物がその右腕を傷つけた。
だから、世話をしている。
竜胆はぼんやりと座っている。前は表情の変化が豊富な方でよく笑いよく怒っていた。そのよく変わる顔が好きだった。今となってはそんな過去は虚実で、ただ虚脱感に満ちた表情から抜け出すことは無い。
綺麗な俺の竜胆の、青みを帯びた紫色の瞳の焦点は合わない。
蘭「眠……」
通常半日どころか丸1日寝れてしまう蘭にとって、睡眠を削り甲斐甲斐しく他者の世話をすることは苦痛だった。相手が竜胆でなければとうに誰かに┈┈┈三途とか、九井とか┈┈┈に世話を押し付けていただろう。
相も変わらず汚部屋、薄暗いその部屋のカーテンが開かれることは無い。床は埃1つなく清潔を保っている。机上の冷めきった料理も異臭を放つことはない。部屋に満ちる空気も湿度もベスト、高待遇だ。
壁に無機質に並ぶヘッドホンが静かに佇んでいた。
幼少期に思いを馳せた。曖昧の権化、傲慢な人間の想像の成れの果てを加持し心酔する大人と共に祈りを捧げていた幼少期。
2人で抜け出そうと決意しすぐに竜胆を教会の外の汚い社会へ誘った。
宵闇と暁が入り交じる空を見上げながら、その時も竜胆の手を取ったことを思う。あの時は弟の己が守り続けた純粋無垢な心に羨望を抱いていた、と思った。
諦念が胸中を占領していく。
蘭「はいりんどー、あーん」
料理を掬い口元に持っていく。そうでもないと利き腕が使えない竜胆はひとりで食事ができない。
それでも反応しない竜胆の心はもう壊れているんだろうと悟った。
その気づきたくなかった現実から逃避し目を逸らし今日も竜胆に人間活動を強い続ける。
過去を回顧し出せば際限がない。
初めて負けた日、初めて誰かの傘下に下った日、初めて「仲間」が死んだ日、反社会的勢力になるには十分すぎるほど環境と状況が揃っていた。
反応がないことにはもう慣れた。しぶしぶ料理を口元に押し付ける。それでも飲み込もうとしないのも日常茶飯事へと化した。
蘭「もー」
口に食べ物を含み唇を重ねた。口移しで栄養分をねじ込む。深い口付けを伴う食事ですら拒否しようとしない弟に僅かな焦慮と空虚感が沸く。
蘭「……ん、」
十数秒の接吻の後顔を離す。唾液が糸を引いていた。
先程抱いた負の感情は消え去り、満足感だけが胸中を支配していた。
竜胆は俺に依存している。
依存せざるを得ない状況。
かつての堂々たる瀟洒たる立ち居振る舞いはもう見る影もない。
それを思い軽微な歪んだ悦び、憂愁を綜合した笑みを浮かべる。
蘭「……俺しかいないよな、竜胆。」
もう1度唇が重なった。
九井「……なあ、灰谷まだ部屋から出てこないのか」
三途「ああ、この間見えちまったんだけど」
言いにくそうに三途が続ける。
三途「枕、椅子に座らせて食べ物押し付けてた」
九井「幹部がそれじゃあな……」
しばらく沈黙が場を満たす。2人の反社会的勢力は揃って眉根を寄せた。
九井「竜胆の葬式、来なかったんだろ?」
三途「死んだって受け入れらんねえんだ」
九井がちらりと蘭の業務部屋を視界に入れた。ひとりで蘭が話している声が漏れだしてくる。
三途「俺がラリってる時ですら枕を竜胆とはしねえわ」
九井「あれ、昔から竜胆が使ってた枕らしい」
三途「げえ」
不気味なものを見たように三途が舌を出した。
三途「あれ、なんつーんだろうな」
愛情とも執着とも形容しがたい蘭の感情を慮り九井が黙り込んだ。
九井「このまま戻ってこないようじゃ……」
三途「マイキーの判断次第だが、まあ」
━━━━━━━━━沈めるんだろうな。
九井「俺としてもそれは避けたい」
三途「幹部が減るのは困るし、アイツほどサラッと人を殺せるやつはそうそういない」
九井「でも、機密情報を知ってる幹部が情緒不安定で心の病気なら、いつなにをしでかすか分からない……それこそ、突然警察に電話したっておかしくない」
三途「竜胆もツイてねーよな、任務で……」
九井「そういう世界だろ。ツイていようがいまいが」
まあ、と不服そうに三途が頷いた。
2人揃って、ここ数ヶ月開かれないドアを見た。
楽しそうな、ひとりぶんの話声が聞こえていた。
「竜胆、ほらこっち向いて♡ちゅーしよ?」
「……無視すんなってば」
「おーい」
「……ったく、しょうがねぇなあ」
「ん」
「……たまには自分からもしろよって言ってるのに」
「全く竜胆は」
「ま、いっか」
「なあ、夕飯何がいい?」
「えー?オムライスなんて俺作れねぇよ」
「もっとなんか簡単なやつにしろよ」
「え?いや簡単じゃねえわ」
「んー、まあ作らせればいっか」
「それ治ったら外食しようぜ」
「うん、それがいい」
「はは、そんなのなんでもいいだろ」
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