短編小説「性格の闇」
たまに考える。自分は何のために生まれて生きているのか。そんな事ばかりを考えていたら病んでしまう。俺は仕事に追われて人生に疲れてしまった。もういっそ死んでしまおうか?そう思い俺は飛び降りをしようと自分の住んでいる12階建てのマンションの最上階に行き手すりに手をかける。
「こんな人生ともお別れか。」
そう言い俺が飛び降りようとした瞬間、
「待って!そこのお兄さん!」
くっそ…住民か。そう思い後ろを向くとそこには住民ではなく頭の上に輪っかみたいなのが浮いていて足が透けている人物がいた。
「お、お前は!?」
俺は驚きすぎて死ぬことも考えれなかった。
「すいませんこんな時に。私は幽霊。ここで飛び降り自殺をした者です。」
ゆ、幽霊が喋ってる…?俺は気が狂ったのか?
「何だお前は俺になんか用があるのか?ないなら帰ってくれ。」
「いやいやすみません。実はですねその…言いにくいのですが…」
「…何だ。」
「自殺をやめてくれませんか?」
「……何故だ?」
「この世界には色んな性格の人が居ます。例えば優しい性格とか、怒りっぽい性格とか、冷静な性格とか色々と人によって違います。そしてその性格によってまた自殺の方法も違うのです。優しい人は誰にも目のつかないところで自殺する、怒りっぽい性格の人は堂々と自殺する、冷静な性格の人は計画性のある自殺をする。これがいわゆる“性格の闇(病み)”ですね。」
「……で、何故自殺をやめて欲しんだ?」
幽霊は少し沈黙して勇気を振り絞るように言う。
「貴方にはまだ生きて欲しんです。」
「なんでだよ!俺にはもう希望も目標も無い!生きててもしょうがないんだよ!」
俺は自信過剰になりながらも訴える。
そしてその幽霊が言った言葉で俺は思い出す。
「貴方には生きて欲しんです。“充”。」
そうだ。俺には随分前だが嫁がいたんだ。だが三年前自殺でこの世を去った。
そうか。君がそうだったんだね。
「……わかった。生きるよ。」
「分かってくれてありがとう。」
そうしてその幽霊は少しずつ薄くなり、しまいには居なくなった。
俺は自殺しようとする度に思い出す。あの幽霊の言ってくれた事を。
「ありがとう。“紅音”」
そうして俺の人生はこれからも進んでいく。
~完~
この物語は前回の短編小説の続編でした。
この物語はフィクションです。