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8話目もよろしくお願いします!

スタートヽ(*^ω^*)ノ




《キヨ視点》


キヨくんとの事件から気付けば一か月が経っていた。


時間が経てば少しは楽になると思ってた。

でも──違った。


目が覚めて、仕事して、寝て。

何をしていても、頭のどこかにキヨくんがいる。

部屋中にキヨくんとの楽しかった日々が染み付いている。


「……はぁ。何してんのやろ、俺」


苦笑しても、胸の奥は冷たいままだ。

空っぽになった心の隙間に、キヨくんとの記憶だけがずっと居座ってる。


あの日のこと、何度も何度も思い返して、

怒って、悲しくなって、でもやっぱり、寂しさのほうが勝ってしまう。


うっしーは何も言わず、俺のそばに居てくれる。

コーヒーを差し出したり、冗談を言ったりして、何とか笑わせようとしてくれるけど……

俺の心には、もう笑いの余白が残っていなかった。


キヨくんからは、何度か連絡が来ていた。

「話したい」「会えないか」──そんな言葉が並んでいた。


でも、俺は一度も返さなかった。

怖かった。

あの日の光景が脳裏に焼き付いて離れない。


やがて、キヨくんからのメッセージは途絶えた。


──それだけで、また胸がきゅうっと締めつけられる。


「もう、俺のこと……諦めたんかな。ずっと無視してるしな。そりゃそうやんな。」



涙は、もう枯れた。

でも、心はまだ、ずっと泣いていた。




《キヨ視点》



レトさんと喧嘩してから、一か月が経った。


最初の一週間は、何度も連絡をした。

LINEも、電話も、何度も。

でも、返事は一度もなかった。

どうしても誤解を解きたくて。もう一度レトさんと話がしたくて。

でもメッセージの「既読」がつく事はなかった──

まるで、世界からレトさんが消えてしまったみたいだった。


『……レトさん、なにしてるのかなぁ』


スマホを握るたび、自分の指が震える。

何か言葉を打とうとしても、どれも嘘くさく見えて、結局、送信ボタンは押せなかった。


それでも、アプリ開発の仕事は待ってくれない。

プロジェクトは佳境に入り、P-Pとの打ち合わせや作業は連日徹夜続き。


…P-Pとはあれ以来、ちゃんと話をした。

和解…?と言ったらいいのか分からないけど

以前と同じ関係に戻っていた。


どれだけ忙しくしていてもふとした瞬間に思い出してしまう。

レトさんの笑った顔、拗ねた声、甘えた時の仕草。

全部、焼き付いて離れない。



あのカニのキーホルダー──

レトさんがくれたキーホルダーは、今も机の引き出しにしまったままだ。


触れるたび、胸が締めつけられる。


『レトさん……本当にごめん。逢いたい….逢いたいよ….」


夜のオフィスで、誰にも届かない言葉をつぶやいた。


──喉の奥が、痛いほどに熱かった。



レトルトはパソコンに向かって、淡々と作業を進めていた。

頭はぼんやりと重く、指先だけが自動的に動いていた。


──ふと、スマホが鳴る。


見知らぬ番号だった。


一瞬ためらったが、なんとなく嫌な予感がして通話ボタンを押す。


「……もしもし?」


「あ!レトさん? ガッチマンです。突然ごめん」


一瞬、誰か分からずに目を瞬かせる。

でもすぐに、あの落ち着いた声の主が浮かんだ。


「え……あ、ガッチさん……どうして……?」


「……キヨが、倒れたんだ」


その瞬間、頭が真っ白になった。


「っ……え?」


「連絡先分からなくて……だから、キヨのスマホ見て、番号調べた。勝手にごめん。

でも……レトさんにだけは知らせたくて」


「なんで……なんで倒れたんですか!? どこ!? 病院、どこですか!?」


動悸が激しくなり、息が上ずる。


「過労だって。最近、キヨが作ってるアプリが完成間近で連日徹夜で作業してて…..。病院の 場所は──」


ガッチマンが病院の名前を告げたと同時に、レトルトは椅子を蹴るように立ち上がっていた。


カバンもスマホも乱雑に掴み取り、玄関へと走る。


仕事のことなんて頭になかった。

服装がどうだろうと関係なかった。


ただ──


「キヨくん……」


彼の名前を呼ぶと、喉の奥が痛くなった。


まだ好きだった。

会いたかった。

喧嘩のことなんてもうどうでもよかった。

怖かった。悲しかった。

キヨくんのいない世界なんて考えられない。



「死なないで……」


掠れた声が、誰もいないエレベーターホールに消えていった。


レトルトはそのまま、駆けるようにマンションを飛び出した。



病院に到着したレトルトは、案内もそこそこにエレベーターへ駆け込み、まるで夢の中を歩いているような感覚で病室の前へとたどり着いた。


そこには、ガッチマンが立っていた。

いつも穏やかな笑みをたたえる彼が、今日は少しだけ険しい顔をしていた。


「……中にいるよ。」


そう言って、扉の前をそっと空けてくれる。

レトルトは震える手で取っ手を握り、深く息を吸ってから静かに病室へ入った。


中は静まり返っていて、レトルトの心臓の音だけがうるさく響いていた。


ベッドの上──

キヨが眠っていた。


目を閉じ、静かに呼吸をしている彼は、どこか夢の中のように綺麗で、儚くて。


(キヨくん……)


1カ月ぶりに見るその顔に、胸が締め付けられる。


気づけば、レトルトの目には涙が溢れていた。


そっと、キヨの手を握る。


あたたかい。ちゃんと、生きてる。


「……っ、キヨくん……ごめん、ごめんなさい……」


声にならない声で、レトルトは何度も何度も謝った。


「突き放して、ごめん……あんなこと言って、ごめん……ずっと、ずっと……ずっと会いたかった……っ……!お願い、死なないでよ。死んじゃやだよぉ….」


嗚咽混じりに言葉を吐き出しながら、手を握りしめる。


そのとき──


『……うるさいなあ、レトさん……泣きすぎ笑』


ふいに、かすれた声が降ってきた。


「っ!? キヨくん!?」


レトルトが顔を上げると、キヨがうっすらと目を開けていた。

その目には優しさと安堵が滲んでいた。


『死なないよ……ちょっと働きすぎちゃっただけ……寝てただけだよ……」


そう言って、キヨは弱々しく笑いながら、レトルトの涙を指でそっと拭った。


その手のぬくもりに、レトルトの涙はまたこぼれ落ちていった。


どれだけ遠ざけても、どれだけ傷ついても、

この手に触れた瞬間、心が揺さぶられる。

「あほ……あほ……っ、キヨくんのあほ……!死んじゃったかと思ったじゃん。俺の事置いていくなんて…許さないから!」

「1人にしないでよ。キヨくんがいなきゃ、俺無理だよ」

子供のように泣きじゃくるレトルトの頭をそっと撫でるキヨ。


レトルトの涙とキヨの微笑みだけが、静かな病室に満ちていた。




レトルトがようやく泣き止み、キヨの手の上で目を伏せて肩で息をしているのを見て、キヨはそっと口を開いた。


『……レトさん』


その声に、レトルトは顔を上げる。

目の縁はまだ赤く、涙の跡が頬に残っている。


キヨは一度だけ深く息を吸ってから、静かに言葉を紡ぎ始めた。


『まずは、……ごめんなさい』


レトルトが涙を拭いながら目を合わせる。


『社長室で、あんなの見せて……本当にごめん。あの時のこと、ちゃんと説明したい』


言葉を選ぶように、慎重に続ける。


『……あの日、突然P-Pから告白されたんだ。突然の事で頭が真っ白になっちゃってさ….それで気づいたら、あいつに抱きしめられてた』


キヨは唇を噛んだ。


『抵抗しなかったんじゃない。呆然としてただけ。アイツが同期で、同じ夢を追ってきたからこそ、そんな行動を取ってくるなんて想像もしてなかった』


『でも……すぐに振りほどいた。P-Pに対しての気持ちなんか、一ミリもなかった。……だって俺が好きなのは──』


キヨは視線をレトルトに向ける。

その目は真っ直ぐで、揺らぎがなかった。


『俺が好きなのは、レトさんだけだ』


一瞬、レトルトの目が大きくなる。


『……レトさんがあの場でどんな気持ちだったか、想像したら、胸が潰れそうになる。あんなの見せられて、信じられなくなって当然だよ。でも……それでも、もう一度だけ信じて欲しいんだ』


キヨの声は震えていた。けれど、どこまでもまっすぐだった。


キヨはベッドの上で、ゆっくりとレトルトの手を握り直す。


『……俺はレトさんが居てくれれば他に何もいらない。レトさんは俺の全てだ。今までも、これからも。──この先、何があっても、ずっと一緒に生きていきたい』


『レトさん、愛してます』


その言葉は、まるで祈りのようだった。


静かな病室に響いたキヨの告白は、誰よりも真剣で、痛いほどに優しかった。



レトルトの目にはまた涙が溢れていた。


ただ、ぎゅっと握られたキヨの手のぬくもりを感じながら、溢れ出す涙を止めることができなかった。


傷つけ合って、すれ違って、それでも――

心の奥底にあるこの気持ちだけは、どうしても消えなかった。


好きだった。


ずっと、ずっと。


傷つけられても、泣かされても、それでもキヨを好きな気持ちは、変わらなかった。



「俺を1人にしたら…殺すからな」


レトルトは、ぽつりとそう言って、震える手でキヨの胸に顔を埋めた。


『こわぁ、うっしーみたいな事言わないでよ笑』


キヨの鼓動が、すぐそばで生きている音が、確かに聞こえた。


もう一度顔を上げてキヨの目をしっかり見据えたレトルト。


「キヨくん、ずっとずっとこれから先も、キヨくんだけを愛してます。俺と出逢ってくれてありがとう。」


2人は静かな病室で抱き合い、お互いの熱を感じ合った。

これから先、どんな未来が待っていようとも

2人は決して離れる事はないだろう。




病室の外で、ガッチマンが呟く。


「やれやれ本当、不器用なふたりだよなぁ。

俺がレトさんに電話してなかったら、どうなってたんだよ笑

俺って救世主じゃん!笑」


このガッチマンも実は恋の真っ最中。

なのですが….この話はまたいつか。



つづく


俺の彼氏は世界一

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コメント

3

ユーザー

もしかしてガッチさんパートも、、めっちゃ面白かったです!!

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