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その日の午後だった。
時計は15時半をさしている。
(……チョコ食べたい)
この時間になると小腹が空くのと、眠気を紛らわす為とでデスクの引き出しをごそごそ。
お菓子を取り出し食べたくなる。
明日の朝一でおこなわれる会議の為の資料を人数分作成していた真衣香は手を止め引き出しを開けようと手を伸ばした。
その時だ。
「立花さん、今大丈夫?」
振り返ると、いつのまに総務に来ていたのか。
今朝話した営業部の事務、小野原の姿があった。
「大丈夫です、あの……小野原さん。今朝は邪魔をしてしまってすみませんでした」
立ち上がって軽く頭を下げて、もう一度小野原を見る。
切れ長の二重に控えめなアイライン。 けれど、程よい量とカールのまつ毛とバランスよくブラウンのシャドウで品のいいメイク。
(大人っぽくて、綺麗)
その上仕事もテキパキこなし信頼も厚いと言う。
こんなに素敵な人がいつも近くにいるのか、と。真衣香の心に少しだけ黒いものが落ちて瞬く間に広がってしまう。
「ああ、そんなの全然いいよ。 そっちも仕事でしょ」
「は、はい」
「森野さんが機嫌悪かったからね、って、違うの。 そんな話しに来たんじゃなくて」
小野原がA4の紙を1枚、真衣香へと差し出した。
(あれ、珍しい)