テラーノベル
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3話目もよろしくお願いします!
スタートヽ(*^ω^*)ノ
ある日の夜、ふと伝わってきた感情に、キヨの胸がざわめいた。
(……誰かに、会いたい……?)
レトルトの心に浮かんでいるのは“恋”。
しかも、それは自分じゃない“誰か”に向けられている。
恋焦がれる様な、熱く燻る感情。
胸の奥を焼くような嫉妬に、キヨの手が無意識に人形を強く握りしめていた。
次の瞬間――
「っ……!?」
レトルトの息が詰まるような感覚が、キヨにも伝わる。
胸を押さえて苦しげにうずくまる気配。
顔が赤く、呼吸も乱れて――。
「……あ、やば……」
思わず力を緩めると、レトルトの苦しみは収まっていった。
だがその胸には、強い怯えと混乱が滲んでいる。
(……っ、俺のせいで……? でも……)
罪悪感よりも先に、胸に広がったのは妙な高揚感だった。
自分の手ひとつで、レトルトを苦しめたり、震えさせたりできる。
人形を見つめながら、キヨは震える唇を舐めた。
(……レトさんを…俺の思いのままに…)
胸の奥にぞわりと甘い痺れが広がる。
怖がる顔も、戸惑う声も、全部自分だけのもの。
――ある晩。
キヨは愛おしそうに人形を握っていた。
小さな灯りの下で見ると、まるでレトルトの生き写しみたいに穏やかな顔をしている。
「……レトさん」
呼ぶように唇が動いた。
触れるだけでレトルトの感覚に伝わると知っているのに、それでも指先は止められない。頬を撫で、髪を梳く。
そして――
(もし、ここに触れたら……?)
抑えきれない好奇心に突き動かされるように、キヨは人形の唇にそっと口づけた。
(…..!?!?)
本来なら木や布で硬いはずの人形の唇は、柔らかく、ほんのり温かかった。
触れた瞬間に、まるで生身のレトルトに触れているような錯覚が全身を貫く。
「……っ、はぁ……」
息をのみ、目を見開いたキヨの胸は激しく上下する。
暗い部屋。
机の上の小さな灯りに照らされた人形を、キヨは胸に抱き寄せていた。
「……っ、あ……」
たった一度、唇を重ねただけで、胸が爆発しそうなほど高鳴っている。
人形のはずなのに、確かに柔らかくて、温かくて。
その衝撃に酔いしれるように、もう一度、いや、何度も唇を重ねてしまう。
「レトさん……」
囁きながら、今度は首筋へと口づけを落とす。
硬い感触ではなく、体温を帯びた滑らかな肌の感触が返ってきて――思わず息が詰まった。
(……これ、本当に……繋がってるんだ)
唇を寄せるたび、人形の中からじんわりと熱が伝わってくる。
それは単なる自分の妄想なんかじゃなく、確かに “レトルトの反応” としか思えないものだった。
(ドキドキしてる……? まさか、レトさん……俺と同じで、興奮して……)
指が震える。
自分の胸の鼓動と同時に、相手の心臓の音まで聞こえてくるようで。
首筋から鎖骨へ、頬へ――止まらない。
「はぁ……レトさん……もっと……」
禁断だと分かっていながら、キヨの唇は何度も人形に落ちていった。
つづく
コメント
2件
最高過ぎて倒れそうです、、、