テラーノベル
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つかであきひろ
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【登場人物】エルザ:真の救世聖女。ガルディニア帝国で過保護に扱われ戸惑い中。ギルベルト:ガルディニア帝国の若き皇帝。エルザに対してだけ超甘い。ノヴァ:神竜。普段は黒いミニ竜。エルザの淹れるお茶とクッキーが大好き。ジュリアス:レムリア王国のクズ王子。畑が枯れてパニック中。「……あの、ギルベルト陛下。さすがにこれは、やりすぎではないでしょうか?」ガルディニア帝国の皇宮、その一室で私は頬を赤く染めながら声を漏らした。目の前にあるのは、私がこれまで見たこともないほど巨大で豪華な天蓋付きのベッド。最高級のシルクで作られたシーツは、触れるだけで指が滑りそうなほど柔らかい。「何がだ? 我が国を救う至高の聖女を、このような薄汚い部屋に泊めるわけにはいかないだろう」「薄汚いって……ここ、皇宮の中でも一番豪華な賓客用の大公室ですよね!?」私のツッコミに、ギルベルト陛下は眉ひとつ動かさずに、私の手を取ってその甲にそっと唇を寄せた。銀色の瞳が、妖しく、そして熱く私を見つめる。「足りないくらいだ。エルザ、お前がレムリア王国でどれほど不当な扱いを受けていたか、我が国の隠密から報告が届いた。……あのような狭く冷たい地下室で毎日夜通し結界の魔力を絞り取られていたなど、万死に値する」陛下の声が、一瞬だけ地を這うような冷徹なものに変わる。けれど、私を見る時はすぐに蕩けるような優しい笑顔に戻るのだ。そのギャップに、私の心臓はさっきからバックバクと大きな音を立てていた。『そうだぞ、主(あるじ)。あんな有象無象の人間ども、我が一息で焼き尽くしてやっても良かったのだ。まあ、この男が用意したクッキーは美味いから許すがな』私の肩の上で、手のひらサイズのミニ竜――神竜ノヴァが、サクサクと特製の魔力クッキーを齧りながら偉そうに鼻を鳴らした。世界を滅ぼしかけた伝説の暗黒神竜が、完全に餌付けされている。【暗黒神竜・ノヴァ】状態:超絶リラックス・お腹いっぱい本心:『主のそばは最高だ。この皇帝も主を大切にするから、少しだけ認めてやる』【ギルベルト・ガルディニア】状態:独占欲全開・エルザに夢中本心:『可愛い。今すぐ抱きしめて私の妻にしたいが、怖がらせないように少しずつ外堀を埋めよう。まずは世界一の贅沢を覚えさせる』(……陛下、本心がダダ漏れです……!)私の最高位鑑定スキル『万物看破』は、今日も絶好調だった。レムリア王国では「ステータスを見るだけの地味な無能」と言われたけれど、ここでは私の能力の真の価値を誰もが理解し、敬ってくれる。それだけで、胸の奥がじんわりと温かくなった。「まずはゆっくり休むといい。明日からは、我が国の乾いた大地を少しずつ癒やしてほしい。もちろん、ノヴァの魔力と、お前のその美しい……バグ修正の力でな」「はい! 頑張ります!」こうして私は、信じられないほどの過保護な溺愛生活の第一歩を踏み出したのだった。◇一方その頃。私をゴミのように追い出したレムリア王国は大混乱に陥っていた。「おい! どういうことだマリア! なぜ東の穀倉地帯の作物が、すべて一夜にして腐り果てているのだ!?」レムリア王国の王宮。第一王子ジュリアスは、髪を振り乱して男爵令嬢マリアの肩を激しく揺さぶっていた。かつて美しかった大聖堂の周囲の畑は、今やドス黒く変色し、異臭を放つ泥の海と化している。「キャッ!? 痛いですわ、ジュリアス様! わ、私に聞かれても困りますわよ! 私はちゃんと『豊穣の奇跡』のスキルを使いましたわ!」マリアは涙を浮かべて弁明するが、その顔は恐怖で引きつっていた。彼女の頭上には、無情なステータスが表示されている。【マリア・ローゼン】状態:魔力枯渇・パニック・魅了の魔道具にヒビ本心:『嘘でしょ!? 大地の魔力を吸い尽くしちゃったの!? エルザがあの後始末(バグ修正)をずっと裏でやってたなんて知らなかったのよぉ!』そう、マリアのスキルは、大地の栄養を限界を超えて強制的に引き出すだけの「呪い」に近いもの。これまでは私が『鑑定』で土地の崩壊を先回りして察知し、その傷を魔力で『上書き修正』していたからこそ、国は豊作を保てていたのだ。それを「ただ見ているだけの無能」と笑って私を追い出した結果が、この有様だった。「お前が『真の聖女』だと言ったから、私はエルザを捨てたのだぞ! 結界も消え、国境からは魔獣が押し寄せてきている! これでは我が国は数ヶ月で滅びるではないか!」「そ、そんな……! 嫌ですわ、私は王妃になって贅沢がしたかっただけなのに!」「ふざけるな、この泥棒猫め!!」ジュリアスはマリアを激しく床に突き飛ばした。すでにマリアの「魅了の魔道具」は完全に壊れ、ジュリアスの洗脳も解けている。後に残ったのは、お互いへの激しい憎悪と、取り返しのつかない現実への絶望だけだった。「ああ……エルザ……。お前さえ、お前さえいればこんなことには……!」ジュリアスは頭を抱え、血がにじむほど床に爪を立てて泣き叫んだ。しかし、その声が私に届くことは、二度とない。◇翌日、ガルディニア帝国の広大な荒野。私はギルベルト陛下とノヴァと共に、ひび割れた大地に立っていた。「よし、いくよ、ノヴァ!」『応! 我が力を使いこなしてみせよ、主よ!』ノヴァが本来の漆黒の巨大な姿へと戻り、天に向かって咆哮する。その圧倒的な神魔力が私の体へと流れ込んでくる。私は精神を集中させ、目の前の荒野全体を『鑑定』した。【ガルディニア帝国の荒野】状態:古代の邪神の血による『呪毒の汚染』「見えた……! 呪いの核心は、地下三百メートルにある歪みだね」私は右手を大地に突き出し、ノヴァの魔力を借りて、そのバグを正常な『大自然の生命力』へと一気に上書き修正した。ドォォォォン……!!地響きと共に、荒野のあちこちから透き通った聖水が噴き出す。ひび割れていた大地は一瞬で瑞々しい緑の絨毯へと変わり、色鮮やかな花々が次々と咲き乱れていった。「……信じられん。一瞬で、帝国の最悪の死地が豊穣の土地に変わった……」後ろで見守っていたギルベルト陛下が、驚愕に目を見開いている。そして、彼はたまらずといった様子で私に駆け寄ると、泥で汚れるのも構わずに私を後ろから強く抱きしめた。「ひゃっ!? へ、陛下!?」「エルザ……お前は本当に、私の、そしてこの帝国の女神だ。もう絶対に手放さない。お前を傷つけるものは、世界の果てまで追い詰めて滅ぼしてやる」耳元で囁かれる甘く独占欲に満ちた声に、私の顔は真っ赤に染まる。遠く離れた元婚約者たちの破滅の足音を聞きながら、私はこの優しく過保護な皇帝陛下と共に、新しい幸せな未来へ歩み出すことを心に誓うのだった。
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