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今日も今日とて💚💙
第十四話 ❤️🔥火加減注意
翔太side
今日も今日とて亮平のために
玄関扉、施錠確認。
前回より規約追記事項。
規約第九八条:
「失敗から学べ。学びは愛を増幅させる」
※補足条文 九八条の一
「洗濯物への過度な接近は禁止」
(帰宅三分前の匂い確認は極めて危険。
目撃事案発生済み。)
――前回、帰宅時刻を誤算。
乾いたシャツを顔面に近づけた状態で玄関音。
視線、交差。
沈黙、四秒。
「……何してんの?」
あれは危なかった。
「りょ、りょへい!」
反射で掴んだ柔軟剤。
動揺、隠蔽失敗。
対象者、冷静。
〝そっちは翔太のだろ?〟
クスクス、と笑う。
あの余裕。
あの視線。
――完全に把握されていた可能性が、高い。
にもかかわらず。
追及、なし。
代わりに。
「ただいまくらい言えよな」
……あれは照れ隠しとして処理されたのか。
それとも。
泳がされたのか。
⸻
【反省点】
・帰宅予測誤差 ±七分
・匂い確認時間、規定超過
・柔軟剤の位置、自然でなかった
【改善策】
誤魔化し発言
《次回からの文言例》
・「取り込み忘れ、今気づいた」(無難)
・「静電気チェック」(やや、不自然)
・「今日ちょっと乾きすぎてない?」(意味不明)
・「繊維の状態確認」(専門家風)
・「柔軟剤、変えた?」(上級)
・「匂い……いや違う、えっと……柔軟剤」(動揺型)
※注意:
嗅覚系発言は事故率が高い。
※ただし前提条件:
顔面接触状態での発動は成功率低下。
⸻
結論。
問題は誤魔化しではない。
笑われたことでもない。
壊されなかったことだ。
秘密結社は、見逃されている。
再発防止策:
・帰宅予想時刻±五分は活動停止
・匂い確認は三秒以内
・深呼吸禁止
教訓:
嗅ぐな。生き延びろ。
「ただいま――」
室内静穏。
よし。
本日も活動開始。
パジャマの匂い確認、五秒。
(本来三秒規定。今日は特例。)
証拠隠滅完了。
よし。
ソファに置きっぱなしのブランケット。
肩にかけ、亮平の定位置へ移動。
膝を抱える。
ここから見える景色。
ここからの角度。
温度保存。
匂い回収。
痕跡保護。
触れたい衝動の自己管理。
胸の奥が、少しだけ騒がしい。
「好きは気安く言わない」
御誓文、再確認。
言ったら終わる。
言わなければ、続く。
この距離が。
この関係が。
ソファにごろんと横になる。
亮平のクッション側に、ほんの少しだけ近づく。
でも触れない。
触れたら、活動は崩壊する。
目を閉じる。
深呼吸。
残り香が、ほんのり混ざる。胸が静かに満たされる。
よし。
次の議題へ移る。
本結社には三つの部署が存在する。
一、匂い保存課
一、温度保護課
そして
三、健康管理課。
ここは最重要機密。
キッチンへ移動。
冷蔵庫、静かに開門。
現状確認。
亮平の好きなヨーグルト、残り一個。
……危険水域。明日の分がない。
即、買い物メモ作成。
議事録記入:
「カルシウム不足予防措置、要対応」
牛乳、三分の一。
軽度警戒。
ブロッコリー、やや疲労。
緊急案件。
亮平は多忙期に入ると栄養バランスを崩す傾向あり。
過去データ参照。
(去年・秋、風邪三日。)
同じ轍は踏ませない。
=栄養バランス崩壊。
=体調不良。
=俺が心配。
よって。
本日の夕食、緑多めに決定。
冷凍庫の確認。
!!!
緊急事態発生。アイスの在庫がゼロ。
これでは俺の活動に支障が出る。ご褒美あっての隠密活動。
あとで買いに走らねば……
しかし、まずは亮平の健康管理が先だ。
まな板を出す。
にんじんを切る。
「これは任務」
決して、ただの好きな人への配慮ではない。
まな板の上でブロッコリーを救済。
「安心しろ。今日中に消費する」
フライパン点火。
油は控えめ。
火加減、慎重に。
フライパンに油。じゅっ、と音。
「タンパク質補給も必要」
冷蔵庫から鶏肉を取り出す。
味付け、薄め。
塩分過多は避ける。
規約第十二条:
「好きだからといって甘やかしすぎない」
これは料理ではない。
国家事業である。
(国家:一名)
そのとき、スマホ振動。
《今日、少し遅くなる》
心拍数、上昇。
しかし表情は無。
《了解》
送信。
保温機能延長。
味の劣化タイム再計算。
帰宅予想21:42。
誤差三分以内で着地見込み。
完璧。
健康管理課、本日の任務順調。
だが油断は禁物。
亮平は帰宅後、
「なんか最近、体調いいわ」
と無自覚に言う可能性あり。
その場合。
危険度レベル3。
感謝発言が発生すると、
内部爆発の恐れ。
深呼吸。
これは保全活動。
恋ではない。
断じて。
フライパンから立つ湯気を見つめながら、翔太は小さくうなずいた。
健康管理課、活動継続。
――機密保持、最優先。
保全部門・温度保護課
健康管理課より通達を受け、即時出動。
担当領域――
室温、体温、体調の外的要因。
すなわち。
「亮平が寒くない世界」を守る部署。
現在時刻 18:12。
外気温 9度。
帰宅予想 21:42。
想定体感温度、低。
リビング潜入。
エアコン、事前起動は早すぎる。
電気代という名の外敵がいる。
よって――
ブランケット配置調整。
ソファ右側、掴みやすい角度。
折り返し三センチ。
これ重要。
三センチで幸福度が変わる。
さらに。
湯たんぽ待機。
まだ入れない。
早すぎると冷める。
タイミングが命。
温度保護課は繊細なのだ。
寝室確認。
枕位置、左寄り補正。
(本人は無意識に中央だと思っている)
掛け布団、端を折る。
指が自然に引っかかる設計。
完璧。
そのとき。
メッセージ再確認。
《遅くなる》
寒い中帰る可能性。
危険。
帰宅五分前、暖房起動作戦へ移行。
温度保護課、戦闘態勢。
なお。
「好きだから温めたい」わけではない。
あくまで環境保全。
規約第七条。
感情と任務を混同するな。
……。
混同してない。
してないはず。
⸻
三部署合同会議
開催時刻 19:30。
出席者 一名。
議長 翔太。
議題:亮平帰宅時の最適幸福動線について。
⸻
匂い保存課 報告
本日残香確認済。
パジャマ安全。
抱擁時間規定超過(+2秒)。
反省。
⸻
健康管理課 報告
夕食準備完了。
栄養バランス良好。
味付け最適化済。
褒められる可能性 62%。
危険。
⸻
温度保護課 報告
帰宅五分前暖房起動。
ブランケット配置済。
湯たんぽは状況判断。
⸻
議長総括。
「よし」
問題は一つ。
――感謝発言対策。
亮平は最近こう言う。
「なんかこの家、居心地がいい。」
これは重大インシデント。
匂い保存課:
「気づかれている可能性」
健康管理課:
「自白リスク上昇」
温度保護課:
「赤面による体温上昇予測」
全員一致で結論。
“知らぬ存ぜぬ作戦”継続。
そのとき。
ガチャ。
予測より二分早い。
「ただいまー」
緊急事態。
暖房、起動。
ブランケット自然配置。
夕食最終仕上げ。
翔太、平静モードへ移行。
亮平、部屋を見回す。
「……あれ?」
心停止。
「なんかさ」
来る。
「今日、外めっちゃ寒かったのにさ」
距離、近い。
「この部屋入った瞬間、ほっとした」
翔太、鍋に集中しろ。司令本部より緊急通達。
「そう」
返事は短く。
火が、ほんの少し強すぎる。
「……火、強くない?」
ぎく。
「問題ない」
強火のまま、内部は大炎上。
「……いつもさ」
亮平、笑う。
「ありがと」
……。
内部会議室、爆発。
匂い保存課:崩壊。
健康管理課:号泣。
温度保護課:昇天。
議長、職務放棄。
翔太、鍋をかき混ぜながら
無駄に忙しいふり。
耳が赤くなる現象は回避不可。
秘密結社――
継続不能寸前。
だが。
議長、再起。
「……任務、継続」
耳まで真っ赤のまま、
翔太は鍋の火を弱めた。
かき混ぜる手は止まらない。
味見もしていないのに、
なぜか甘くなる予感がした。
火加減は、まだ分からない。
コードネーム:S(翔太)。
構成員:一名。
活動目的:亮平の気配を保存、保護、場合によっては増幅。
いずれも、二人の幸福のための行動である。
持続可能な設計書【弐】
コメント
2件
マニアックすぎるけど、要は💙は💚が大好きってことね🤣🤣🤣