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他の隊員がタジタジになっているのはお構いなしに、平野はミズキに宿舎の案内をしていた。途中案内を代わろうとする隊員もいたが、平野は丁重に断った。
「私の部隊は玄武がモチーフになっているから、隊服も緑なんですよ。綺麗でしょう。」
「はい。」
「君達3人は学業もあるから3日間だけの研修なんて寂しいけど、なにか掴めるものがあればいいね。特にミズキちゃん。どうやら君は私と似ているようだし。」
平野は不敵な笑みを浮かべる。
「これ以上驚かすと叶に怒られてしまうね。さ、着いたよ。女の子の隊員は珍しいから、私の部屋の隣にしているから、安心して。」
「案内、ありがとうございました。」
「そしたら15分後に外に集合。研修開始だよ。」
「はい。」
そうして平野は次の隊員の案内へ向かう。
ミズキは用意された部屋に入る。
みんなと過ごす屋敷と内装が少し似ている。
(頑張らないと。強くなるんだ。)
そうして支給された隊服に着替え外へと向かう。
既に他の部隊の隊員が6名到着していた。
「え。」
「女、の子?」
視線がミズキに集まる。
「君、名前なんて言うの?」
赤毛の癖毛が特徴的な人が話しかけてくる。
「瓜生部隊から来ました。雨音 ミズキです。」
「君が噂のお姫様だね。俺は水谷部隊から来た栗原 リョウだよ。よろしくね。」
「お姫様?」
「そうそう。水谷大将がね、お姫様には優しくって。大将も女の子なのにね。しかも名前が水なのに、担当区域は山岳部なんだから、本当に不思議だよね。」
リョウは豪快に笑っているため、悪い人間ではないのだろう。
(多分、未熟者ってことだろうな。見返さないと。)
「あと、あっちの愛想がないのが」
「集合!」
大佐の号令に全員が整列する。
「1人来ていないな。」
「すみません、そいつ、途中で体調が」
「そんなものは理由にならない。全員、そいつが来るまで腕立て伏せ!連帯責任だ!」
不満の声が上がるなか、ミズキはすぐに腕立て伏せを開始した。
「俺もやろー!」
それを見て、リョウと次々に隊員達が続く。
ここでは瓜生部隊の隊員はミズキ1人だ。いくら孤立しようが淡々とこなすしかないのだ。
「すみません、遅れました!」
「遅い!」
大佐の怒号が響き渡る。
「意外と、やるね。お姫様。」
リョウが話しかけてくるがそんなのはお構いなしだ。
「栗原君、ナンパは感心しないなぁ。」
頭上から平野の声がした。
「さ、君達はもう終了して。本題の研修に入るよ。」
各々息を整えながら整列した。
「今からチーム戦だよ!みんな、水鉄砲持って!」
そうして3つのチームに分けられた。
振り分けられてすぐに、作戦会議となった。ミズキはリョウともう1人の隊員とチームだ。
「俺は水谷部隊の栗原だよ。よろしく。」
「瓜生部隊の雨音 ミズキです。」
「うるさい。」
2人の挨拶にそう一言で返された。
「俺1人で十分だ。お前らはひっこんでろ。」
「えー。酷くない?」
「馴れ合いはしねぇ。」
既にリョウとその隊員の間では火花が飛び散っている。そして視線はミズキへと向かうと、
「女なんか足手まといだろ。」
そう一言吐き捨てた。
「•••お言葉ですが、研修である以上やるしかないんです。幼稚なあなたこそ足手まといなのでは?」
「はぁ!?」
ミズキから反論が来るとは思ってなかったのか、胸ぐらを掴む。
「女の癖に!」
「やめなよ。」
リョウが胸ぐらを掴む腕を強く握る。
「お姫様なんだ。丁重に扱え。」
さっきの柔らかな雰囲気はなく、そこには殺気立った姿があった。
そっとミズキを掴む手を離す。
それを見届けるとリョウはいつもの雰囲気に戻った。
「名前くらいは教えてよ。じゃないと困る。太郎とか次郎って呼ぶよ?」
「•••周参見部隊の片瀬。」
「片瀬君だね。よろしく。」
「よろしくお願いいたします。」
「フンッ」
そう言って片瀬はそっぽを向く。
「とりあえず、頑張ろう!相手がどんな立ち回りをするか、観察からだね!」
リョウがそう言うと作戦会議は終了の時刻となっていた。
(色んな事情があるって聞いてたけど。)
みんなから事前に聞いていたが、ミズキは早速壁にぶつかった気がした。
開始のホイッスルが鳴る。
片瀬は単独でどこかに行った。
「あーらら。仕方ないね。ミズキちゃん、とりあえず無闇な戦闘は避けよう。」
「わかりました。」
「敬語はいいよ。同期だもん。」
「そうはいきません。」
少し肩を落とすリョウを尻目にミズキは周囲を確認しながら進む。
派手な声がする方では片瀬が暴れまわっていた。
(強いんだ。)
ミズキはその姿を観察する。
無駄のない動きで次々に相手チームに水を当てる。
そんな時、片瀬の死角に数人の隊員の姿が見える。
「援護します。」
「ミズキちゃん!」
ミズキはすかさず片瀬のフォローに入る。
「はぁ!?なにしてんだよ! 」
「敵が居たので。」
「お前らの力はいらねぇって!」
「どうして、そんな•••! 」
声を荒げそうになった時、背後に敵の気配がする。
気づいた時には遅く、2人とも背後をとられていた。
「•••だから女は足手まといなんだ。」
「幼稚なあなたに言われたくありません。」
そうして敗けを確信した時、リョウが敵を撃ち抜いた。
「2人とも!早く!こっち!」
応援が来る前に物陰に素早く隠れた。
日が暮れる頃に訓練は終了し、3人のチームは2位の成績を修めた。
そして、今は仲良く並んで平野の前で正座していた。
「個々のポテンシャルが高いのは素晴らしい事です。それでも、チームとしては、ちょっと評価できないですね。」
「俺は1人で十分です。1人でさせてください。」
「認められません。」
真っ先に却下される。
「片瀬君、周参見の所でも孤高みたいですね。それは何故です? 」
「俺が強いからです。弱い奴らは必要ない。特に女なんか足手まとい。」
「はぁ、どうしたものかなぁ。」
困っている声ではあるが、平野は終始ニコニコしている。
「明日は少し内容を変えてしようと思います。チームワーク、培って行きましょう。そろそろ夕食ですね。みんな同じものを食べると連帯感も育つみたいですから、一緒に食べましょう!」
「あ、いや•••。」
「ミズキちゃん、どうしました?」
「•••いや、あの•••食べます。」
「それはよかった。まさか花村君から吹き込まれてるなら、花村君にご挨拶しないといけなかったですよ。」
「はは•••。」
ミズキの表情がひきつった。
平野は嫌がる片瀬の腕を引っ張り食堂へと向かう。
不思議そうに聞いてくるリョウにミズキは本当の事が言えなかった。