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深夜の0時頃だろうか、なぜか急に目が覚めてしまった。 隣でねている卓也を起こさないよう、そっとベッドから出て、冷蔵庫からミネラルウォーターを取り、グラスに注いでベランダに出た。外は凍えるように寒く、スウェット姿だけでは流石に寒かったが、今夜の三日月は青白く、一段と美しく儚い感じだ。
カーテンを少し開けてるだけでも、部屋の奥まで青白い光が差し込み、卓也の寝顔まで青白く染めてしまうぐらいだ。自分は明日仕事が休みだからいつもよりハメを外し、深酒しすぎて少し頭が痛い…。
けど、そんな事もどうでもよくなるくらい、今夜は卓也の寝顔が愛おしい…。
俺たちの関係は何も進歩しないまま、今の関係相変わらず、ずるずると続いているのだ。
俺はいつのまにか、苦しくなるほど卓也の事が好きになってしまった…。人を好きになるのがこんなにも苦しいものなんて思いもしなかった。今までも何人かと付き合ってきたが、こんな感情は卓也と出会って、初めてだ。
正直、今のままの関係は、俺には無理だ…。このままだと本当に心が壊れてしまうんじゃないかと、考えてしまう。いっその事、卓也と関係を切ってしまった方がいいのでは?と、考えるほどだ。だが、今の関係を終わらせるほど、難しく、そうたやすい事ではない。
まだ想いを伝え、フラれたほうが諦めがつく…。だが想いを伝えたい気持もあるが、もし伝えてこの関係が壊れて、二度と卓也に会えなくなってしまう…と思うと、一歩踏み出せなくなる。
そうなのだ。そういう危ない男ほど、人は恋に落ち、抜け出せなくなり、今の関係を現状維持しようと人は死守するのだ。
卓也には俺意外にも関係を持っている人が沢山いる 所詮遊ばれてるだけだと何度も言い聞かすが、わずがな可能性を期待してします自分もいるのだ。苦しいが、今一緒にいる事だけでも幸せだと思ってしまう、愚かな自分がいる…。
アラームが鳴り響き、朝日が昇って、目が痛くなるほど眩しい。いつのまにか二度寝していたのだ。
「おはよー」
と、卓也が言う。
卓也はスーツに着替え、ツーブロックに刈り上げられたヘアスタイルをトップの部分を七三分けにして、ジェルでかき上げ身支度をしていた。
「おはよー、卓也は今日仕事だったね」
と、寝ぼけながら呟いた。
卓也は俺にキスをし、抱きしめて
「寝ぼけた間抜け面も可愛なぁ」
と、言う。
「朝からからかわないでよ」
と、俺は言う。
卓也は満面な笑みを浮かべ、
「じゃあ行ってくるね、可愛子ちゃん」
と、言い、職場先にむかっていいった。
一人残された俺はベッドの卓也の温もりを感じながら、また眠りについた。
再び目が覚めて、スマホを見たら午前十一時頃だった。
寝ぼけながらベッドを出て洗面台にむかい、歯を磨いていたら、電話が鳴った。
由明香からだった。
「おっはー!一樹!」
と、相変わらずテンションの高い声で、さっきまで眠気が覚めた。
「どしたん?急に電話なんかかけてきて?」
と、俺は聞いた。
「久しぶりに平日休めたから、これから会わない?」
と、由明香が言った。
突然の事だったが、社会人になってから由明香と会えてなかったから俺は二つ返事でオッケーした。
由明香とは専門学校時代の友人で良くいつもの仲良しメンバーの一人だった。
十二時半に新宿駅の近くにあるバーガーキングで由明香と待ち合わせした。
「おー!!ひさしぶりー、元気してた?」
と、大きな甲高い声でこちらに向かってきた。
由明香は相変わらずのギャルだったが、学生時代よりも、髪は暗めになり、服装もどこか大人びていた。
「相変わらずギャルだねぇ」
と、笑いながら俺は言った。
由明香は明るく、誰にでも隔てなく接するので学校でもムードメーカー的な存在だった、それに由明香は俺のことをゲイだと知ってる友人の一人で気を許せる友人だ。
「一樹も相変わらず色々な男喰いまくってるんじゃないのー!笑」
冗談でからかってきた。
「そんなんできたら、男で困らないだろ」
と、答えた。
「まっ、とりま何か頼みなよ」
と、由明香が言い、俺はカウンターに向かった。
俺たちは、ドリンクとハンバーガーを頼み久しぶりの他愛のない会話を楽しんだ。
その後、明るい時間から居酒屋に行き、軽く飲んだ。
由明香が突然、
「いま付き合っている彼氏なんだけどさー、最近恋愛感情持てないんだよねー」
と、言う。
「どうしたの?あんなに仲良かったのに…」
と俺は由明香に聞いた。
「別に嫌いではないんだけどさー、なんかそういう目では見れなくなってマジやばいんよー」
と、言うのだ。
「ふーん、そういうもんなのかね」
と俺は少し軽蔑したように言ってしまたが、由明香は気づいてないようだ。
「まぁ、長く付き合っていると、そうなるんだろけどさ」
と、由明香は他人事のように言う。
けど、由明香みたいに少し、楽観的にものごとを見たほうが、楽なのかもしれない…と思った。
由明香と解散した後、色々考えてしまった。
「恋とはなんだろう…」
最近、このことばかり考えてしまう。けどいくら考えても分からないし、SNSで流れてくる恋愛相談系の投稿を見てもさっぱり分からない…。
恋とは難しい物だ…と自宅で紅茶を飲みながら壁に飾ってあるゴッホの絵を見ながらぼんやりと考えたのだった。
外は真っ暗で、暗闇に大きな黄金色をした三日月が昇っている。
今夜の月もなんだか淋しい、と思っていると、突然電話がかかってきたのだ。
卓也からだった。
俺は急いで電話に出た。
「もしもし」
「あっ、でたでた」
と、卓也は言った。
「どうしたの?」
「外、見て」
と、卓也が言い、言われるがままベランダに出た。
「出たけど、どうしたの?」
「月、今夜もきれいだよ」
と、卓也が低い声で言うのだ」
「そうだね」
と、俺が言うと、卓也が、
「今夜は一緒に見たい気分なんだよね」
と、冷静な口調で言うから、少し驚いた。
「どうしたの?急に?」
「いや、ただそういう気分なんよ」
と卓也が言うのだ。
「でも、もう遅いし、今から来るとなると終電無くなっちゃうよ?」
「下、みてみなよ」
と卓也が笑いながら言った。
ふとマンションの下をみると、卓也がいたのだ。
「えっ、何で早く言わないに?外寒いじゃん」
「だって一樹を驚かせたかったんだもん」
と、言う。
「早く上がってきなよ」
と、言うと、卓也はマンションのエントランスに入った。俺は慌てて、洗面所に向かい、身だしなみチェックをしたのだ。なんで、急に…と考えていたら、インターホンが部屋になり響いた。
ドアを開けたたら、そこに卓也が寒そうに立っていた。
「寒っ寒っ」
と、卓也が震えながら言う。
「早く上がって」
と、言うと、卓也は玄関に置いてあるスリッパを履き、
「おじゃましまーす」
と、言って、部屋の奥に遠慮もなく上がりこんだ。
「どうしたの?急に会いにきて」
俺が驚いたように言うと、
「会いたくなかったの?」
と、からかうように言うから、
「そんなことないけど、急にだから少し驚いてる」
俺は少し動揺しながら、卓也に言った。
「ごめんごめん、でも会いたくなっちゃたからつい」
と、卓也は笑いながら言い、突然ハグをし、俺の首元に軽くキスをした。俺は少し固まってしまったが、卓也とこうして、今日も会えるのが嬉しかった。
「とりあえずシャワーでも浴びる?」
「そうさせてもらうよ」
と卓也は言い、リビングでスーツを脱いだ。
「あっそうだ」
と、卓也はオレンジ色をした、無地ボクサーパンツだけの姿で、俺に紙袋を渡した。
「なに?これ」
と、言い、中身を取り出すと、シャンパンが入っていたのだ。
「お土産だよ」
と、低い声で卓也は言う。
「えっ、こんな高い物どうしたの?俺、今日誕生日とかじゃないよ?」
俺は少し驚くような声で言った。
「知ってる、今日、取引先の人から貰ったから、一樹とどうかなって」
と、卓也は少し、少年のように照れながら言うのだ。
「そう、ありがとう、じゃあシャワー浴びたら一緒に飲もうか」
と、言い、俺はシャンパンを冷蔵庫に冷やした。
「そうだ、お腹空いてる?」
と聞くと、
「そういえばまだ何も食ってない」
と、卓也が言う。
「そう、なら簡単な物作っておくね」
と、言い、
「ありがとう、一樹は優しいねー」
と、卓也は言い、ハミングしながらバスルームに入っていった。
俺は思わずニヤけてしまった。理由はどうあれ、卓也がこやって自分に会いにきてくれるのは、嬉しいことだし、先ほどの卓也は少し可愛く、どこか愛おしく思えた。
さっそく、キッチンに向かい、冷蔵庫を開け、トマト缶の使いかけ、トマト、玉ねぎ、ベーコン、ニンニクを取り出し、戸棚から深めな鍋を取り出し、水を入れ、火をかけ、キッチンで、フランク・シナトラの「Strangers in The Nignt」をハミングで歌いながら、鍋の沸騰を待つことにした。
バスルームから扉が開く音が聞こえ、卓也が、
「服ある?」と叫ぶように言う。
俺は脱衣所に向かい、
「はい」とスウェットの上下を渡した。
「サンキュー」
と、卓也は言い、
「あっ、下着って貸してもらえないよな?」
と、困ったように言うのだ。
「えー、さすがに人の下着を履くのは嫌でしょ?」
「なんだよ、さんざんやる事やった仲で、そこ気にするか?」
と、卓也は言い、俺は仕方なく、使い古した、ゴムの幅が広がった、トランクスを貸した。
「おっ、ちょうどいいサイズ」
と、卓也は満足気に言うのだ。
「でもスウェットはぴちぴちでキツいな」
と卓也が可笑しそうに笑った。
「文句言わない、そもそもサイズが違うんだから」
俺は呆れたように言い放ち、卓也のランニング、下着や靴下を洗濯機に放り込んだ。
「さてと、ご飯もできた事だし、早く席について」
と言い、俺は卓也をダイニングテーブルに誘った。
「お、美味そうなパスタ、ナポリタンか?」
「違うよ、これはアマトリチャーナっていう、イタリアのポピュラーな家庭料理だよ」
「ふーん、一樹って相変わらず珍しい食べ物を作ってくれるんだね」
と、卓也が不思議そうに言う。
「まぁね」
と、言い、俺はグラスに冷水を注ぐ。
卓也はフォークでパスタを巻き、口に含むなり、
「これは想像以上に美味しいな」
と、言う。
「口に合ったなら良かった」
「これ、レストランとかに出せるレベルじゃない?」
と、卓也は美味しそうに食べながら言うのだ。
「それは大袈裟な、でも、そう言ってくれると作った甲斐があるし、嬉しい」
と俺は、少し照れるように言った。
「なのに、なんで彼氏ができないんだろうな」
と、卓也が小馬鹿にしたように言うのだ。
「卓也って、急にサラっと失礼なことを言う人だよね」
俺はため息を吐き、パスタを多めに巻き、頬張った。
「まぁ、出来たら、一樹にも会えなくなっちゃし、出来ないなら出来ないで嬉しいけどさ」
と、卓也は言い、グラスの水を口に含んだ。
そう、卓也はこういう言葉を平気で言えるから恐ろしいのだ。
「そろそろシャンパン冷えたかな?」
と、俺は話題を背け、キッチンの方向かい、冷蔵庫を開けた。
シャンパンはすっかり、ボトルに表面に水滴をつけ、キンキンに冷えていた。
食器棚からシャンパーニュグラスを二脚取り出し、テーブルに並べた。俺はラベルをはがし、コルクをスッと上に引き上げるように抜栓し、グラスに注いだ。
「いい色してるな、部屋の明かりも間接照明だから、泡もきれいに見えるよな」
と卓也はグラスを持ち上げながら言うのだ。
「うん、きれいなトパーズ色をしていて、なんだか飲むのが勿体無いくらいに思える」
「トパーズ色か…」
と、卓也が呟くように、グラスを見つめながら言うのだ。
「知ってた?、トパーズの石言葉」
腕を組みながら唐突に卓也が言う。
「知らない、どんな言葉なの?」
「友愛、希望だって」
と、卓也は言う。
「友愛ねぇ…」
と、俺が呟く。
「そう友愛…、まるで俺たちのようだ」
と、卓也が真面目な顔した表情で言うのだ。
俺は思わず、沈黙してしまった。
「まぁ、お互いこれからも仲良くやっていこうな」
と、卓也は言い、俺たちはお互いのグラスを合わせ、乾杯した。俺は複雑な気持ちで、グラスに口をつけ、妙な感じな感覚が襲い、胸をざわめかせたが、平然を保ち、シャンパンをひたすら口に流し、ただ感情を抑え、冷静さを意識するのに集中させた。
食後、俺たちは窓際に置かれているソファーに腰を掛け、今日の三日月を眺めた。
本当に、ひたすら月を眺め、静かで、沈黙な夜を、ただ過ごしただけだった。