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鮮花は医療棟で、検査をする為に検査用のボディスーツに着替える為に更衣室へ向かった。そこには髪をボブカットにしたファーストクラスのエージェントがいた。
鮮花との同期であるルイである。
「鮮花さん」
「いやいやいや、さん付けなんてやめてって言ってるじゃん。昔みたいに鮮花でいいし、口調も昔みたいにで良いよ。けど、しっかり者のルイさんがライセンス更新最終日なんて~。どうしちゃったの?」
「わかりまし……わかった。忙しかったんだよ。お前のズボラと一緒にすんな」
ルイとは同期で、同室だったが、鮮花のあまりにも人間離偉業を達成していた事で、距離を置くようになってしまっていた。
「先生はお元気か?」
「元気だよ~。たまには遊びにおいでよ」
「……悪いが」
「うん『任務外の勝手な外出はできない』から、仕方ないか」
「不満はねーよ」
「ルイはもう少し器用に生きたほうが良いよ。例えば任務後の帰宅中に、イレギュラーの様子監査と言って、うちの喫茶店に来れば良い」
「お前をそんな風に使いたくねえ。少なくとも私はお前のこと、友達だと思ってるし、仲間だ。だからその友達を化け物みたいに使ってまで自分の要求を通したいとは思わない」
バタン、とルイの着替えが終わる。そして恥ずかしい言葉を言ってしまった手前、顔見せないようにする背中に向けて、鮮花はダイビングハグをした。
「ルイ優しい!! ルイ大好き!! ルイはマイベンストフレンド!! 私の脳内メモリーに永久に保存されたよ!!」
「っ!ああうっせぇ! 終わり終わり! 忘れろ!!」
鮮花から解き放たれて、ルイは気まずそうに言う。
「アレクシアとはうまくやれてんのかよ」
「もっちろん! 私は殴ったりしませんからねぇ~、にっししし」
「あれは! あれは、しょうがないだろ。私がどういう人間が知ってるなら」
「任務は遂行する、仲間も守る、どっちもしなくちゃいけないのがファーストの辛いところだね」
「そういえば、ジョジョの新刊送ってくれ。まだジョジョリヨン見てないんだ。それで、なんでたきなを連れて来た?」
「ん~」
「どうせ戻りたがってるんだろ」
「そ~なの。なんでここがいいんだろうね?」
「お前が変なんだよ。私達孤児は組織に救われてここで育てられた。親への感謝と少しの規則はあるが、お前のお陰で高水準になった私生活。殺しも、殺されるのは嫌だが殺すのは嫌いじゃない。お前だってそうだろ?」
「だね。殺しは救世主が求めた私の使命。そして今は日本を守ってる。たきなも、そうなんだろうね」
「特に移転組にとって本店は特別だからな」
「てかそれがわかってるならルイも協力してよ」
「無理だ。仲間殺しは許さない。例え、それが仲間を助けるための賭けの行動に負けた結果だとしても、結果は結果だ。それに、私が具申しても何も起こらないだろう。上層部が決めることだ」
「そんなこと言わないでさ~」
着替えた二人は体力測定、柔軟性、判断力、反射神経、その他国家の安全に関わるエージェントとして必要な技能を所持しているかどうか、そして体に不調を抱えてないかのテストが行われる。
それが終わって、汗をかいて疲れているルイと、平然としている鮮花がいた。
「はぁ……はぁ……相変わらずタフだな……ごほっ」
「大丈夫? でも見てよこれ、私達でワンツートップだよ」
「当たり前だ。私は現在のエージェントのファーストトップだ。お前は公安局だからな」
「だねぇ。二人で、コンビ組んだの懐かしいね」
「……懐かしいな。死ぬかと思った」
「はっはっはっ、だねぇ。竜舞学園マイクロバス転落事故から始まる長期による飢餓状態と孤立無援の状態で精神を崩壊して『鬼』になった人達の殺害と安城朱音の救出、エースナンバー9029との共闘した事件の防止とテロリスト集団殲滅の任務、標本事件、VRアバター乗っ取り殺人事件、第二の標本事件、スーロン・オスロ殺害任務、衛星砲撃のハッキングから始まるセレ・エトワール破壊のサイレントライン事件、いっぱい倒したねぇ」
「よく生きてたと、自分でも驚きだよ」
そこで、横を白いロングコートとマッシュルームのヘアスタイルでクリーム色の髪をした長身の女性が通る。横には黒服の女性が付き添っている。
「久しぶりだな、鮮花」
「司令っ!」
「ど~も~、アレクシア……なんで追い出したんですか?」
「命令違反だ。聞いてるだろ。その結果千丁の銃の行方はいまだ不明だ。証人は殺してはいけなかった」
「でも、情報見たでしょ? 取引時間間違えてた司令部の責任、つまり作戦指揮司令さんにだって責任あるでしょ?」
「おい鮮花!」
流石に言いすぎだと思ったのか、ルイが止めに入る。しかし反対に司令は笑った。
「相変わらず仲間思いだな。正直、お前のそういうところ私は好ましく思うよ。公安局での活躍も耳に入ってる。人類種の天敵だそうだな。格好いいじゃないか」
「あーごまかしたー!」
「やめろ!」
「作戦指揮中に通信障害があった。ハッキングだ。だからこそ上層部はそれを隠匿するため、そしてハッカーを迅速に始末するためにたきなには犠牲になってもらった。それに仲間殺しを躊躇いなく実行した本人がいては、精神安定上の問題が生じる。本人も、同僚も。これで満足か?」
「……ぐぬぬぬ、司令! アレクシアが可哀想だよ!」
「やめろ鮮花! 命令も聞かず独断専行するエージェントなんか使い物にならねぇ! それだけだ」
「ルイ~」
悔しそうにする鮮花に、ルイは肩を叩く。
「諦めろ」
「では、我々は失礼する。アレクシアを始末するのではなく、お前のところに異動させた理由をよく考えるんだな」
「……? ああ、そういう。でも、達成できたらたきなを本部に戻してあげてくださいよ~!」
去っていく司令と秘書の背中に叫ぶ。そしてルイが呟く。
「諦めろって。それにもう……」
言い辛そうに言う。
「もう、後任が来てるんだよ。飛びっきり優秀な、それでクソ生意気なセカンドレベルのエージェントがな」