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キュルノ
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#学園
キュルノ
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蒼月
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「キャンパス内の人間、全員一時足止めだ! 警察の指示に従え!」佐藤の怒号と警察警察の制服組(パンダ)たちの誘導で、キャンパスの門が次々と閉鎖されていく。新歓で沸き立っていたはずの広場は、一転して騒然とした混乱と不満の声に包まれていた。
「なんなんだよ急に!」
「犯人って、まだ大学の中にいるの!?」
「さっきの変な女子高生(?)みたいな奴のせいで閉じ込められたんじゃね?」
学生どもの不躾な私語が耳に障る。俺はポケットの火をつけていない煙草をガリッと噛み砕き、目の前の状況に集中した。
ホシ(犯人)の特徴は割れている。
**黒のパーカー、甘いバニラと煙草の混ざった匂い、そして右耳に二つ並んだシルバーのスカルピアス。**
被害者の記憶を直接「受け取った」渚の証言だ。一文字の狂いもねぇ。
「峯岸先輩!」
佐藤が走って戻ってきた。手に持ったタブレットの画面を俺に突きつける。
「防犯カメラの映像、抽出できました! 発生時刻の直前、5階テラスへ向かう階段のカメラに、黒いフードを被った人物が映っています!」
画面の中で、そいつはポケットに両手を突っ込み、悠々と階段を上がっていた。顔はフードで隠れていたが、カメラの角度が変わった瞬間、右耳のシルバーがキラリと光った。
「間違いねぇ……。で、こいつはどこへ消えた?」
「それが……テラスから飛び降りがあった直後、混雑する中央エスカレーターを使って1階の講義棟ホールに降りています。そこからは新歓の混雑に紛れて……」
「遠くへは行けてねぇな」
俺は液晶画面を指で叩いた。
「門は速攻で閉めた。警察の目を盗んで着替える時間もねぇ。もし着替えたとしても、あんな鼻をつくような甘いバニラと煙草の匂い、そう簡単に消せるわけがねぇんだよ」
俺は階段の手すりに寄りかかり、荒い息を吐き出している渚に視線を向けた。
「渚。行けるか?」
渚はブレザーの胸元を強く握りしめたまま、静かに、だが迷いのない目で俺を見返した。
「……うん。あの人の叫びが、まだ耳から離れない。……私が行く」
◇
学食、サークル棟のロビー、図書館の前。
警備員と私服警察官が目を光らせる中、俺たちは人混みの中を歩いた。
すれ違う学生たちが、渚を見てヒソヒソと囁き合う。
「あの子だよ、さっきパパ活(?)のおじさんと騒いでた子」
「まだ事件ごっこやってるわけ?」
「関わらんとこ、関わらんとこ」
不愉快極まりない無知な雑音。佐藤が「お前ら、いい加減にしろ!」と怒鳴り散らしそうになるのを、俺は手で制した。
「ほっとけ、佐藤。本物の悪魔の顔を見たら、あいつら吐いて泣き出すだけだ」
渚はそんな雑音すら耳に入っていないようだった。
青ざめた顔のまま、全神経を「匂い」と「空気の澱み」に集中させている。一度覚醒したあの能力が、あの子の五感を極限まで研ぎ澄ましていた。
そして——サークル棟の2階、薄暗い部室街の廊下に足を踏み入れた時だった。
渚の足が、ぴたりと止まった。
「……峯岸さん」
「気づいたか」
俺の鼻腔にも届いていた。
古びた部室の湿気た匂いに混ざって漂う、むせ返るようなバニラの香水の匂い。そして、安っぽいメンソール煙草の残香。
渚が指差したのは、廊下の突き当たりにある『音楽サークル』の部室のドアだった。ドアの隙間から、かすかに軽快な音楽が漏れている。
「……中にいる。あの人が落ちていく時、背中に触れたあの冷たい嫌な感じが……ドアの向こうから溢れてる」
渚の肩がガタガタと震え出す。またあの激しいフラッシュバックが襲ってきているのだ。
「よくやった、渚。あとは大人に任せろ」
俺は渚を自分の背中に引きずり込むと、佐藤に目配せをした。佐藤がごくりと唾を呑み、拳銃のホルスターに手を添える。
俺はドアの前に立ち、容赦なく靴の底でドアを叩き割らんばかりに蹴り飛ばした。
**バァンッ!!**
「警察だ! 動くな!!」
室内の音楽が止まり、中にいた数人の学生が「うわっ!?」と悲鳴をあげて跳び上がった。
アコースティックギターを抱えた学生たちの中に、一人だけ、パイプ椅子に深々と腰掛け、スマホをいじっていた男がいた。
黒いパーカー。
首元から漂う、鼻を突くバニラの匂い。
そして、ゆっくりとこちらを振り返った男の右耳には——ふたつのシルバーのスカルピアスが、怪しく光っていた。
男は警察の乱入に一瞬目を見開いたが、すぐにヘラヘラとした不快な笑みを浮かべた。
「な、なんすか急に? 警察が何の用すか?」
「お前が……あの人を押し落としたの……?」
俺の背後から、渚が静かに歩み出た。
その瞳は怒りと悲しみで冷たく澄み渡り、まっすぐに男を射抜いていた。
「……ハァ? 何言ってんのこの子。飛び降りた子なら知ってるけどさ、勝手に落ちただけでしょ? 俺、ずっとここに居たし」
男は白々しく肩をすくめて見せた。
だが、俺は見逃さなかった。
男のパーカーの右袖——そこに、講義棟の5階テラスの手すりと同じ、わずかな『赤錆』が擦り切れて付着しているのを。
「そうか。ずっとここに居たか」
俺はゆっくりと男に近づき、逃げ場を塞ぐようにその胸ぐらを掴み上げた。
「じゃあ教えてやるよ、クソ野郎。お前が突き落としたあの子はな……お前に背中を押された感覚も、落ちていく時にお前の右耳で揺れてたそのスカルピアスの形も……全部、あの子に教えてから逝ったんだよ」
「は……? 何言って……オカルトかよ、意味わかんねぇ!! 離せよ!!」
暴れる男の腕を、俺は力任せに捻り上げた。
**バキッ**と嫌な音が響き、男が「ぎゃあぁぁっ!?」と痛みに悲鳴をあげる。
「佐藤! 手錠だ!!」
「はいっ!! 〇〇大学内における殺人容疑で緊急逮捕する!!」
金属の冷たい音が室内響き渡り、男の両手首に手錠がかけられた。
騒ぎを聞きつけて廊下に集まってきた学生たちが、顔を蒼白にしてその光景を見つめていた。さっきまで渚を「パパ活」「不思議ちゃん」と嘲笑っていた連中も、本物の殺人犯の醜悪な叫び声に凍りついている。
「離せ! 証拠もないくせに! 妄想で捕まえる気か!?」
「証拠なら、お前のパーカーの袖についた手すりのペンキと、防犯カメラの映像、そして鑑識の指紋採取で一発だ」
俺は吐き捨てると、手錠をかけられた男を佐藤に押し付けた。
そして、部屋の隅で過呼吸に耐えながら立っていた渚のもとへ歩み寄り、その小さな肩をしっかりと抱きかかえた。
「……終わったぞ、渚」
渚はガタガタと震えながら、廊下の野次馬たちを……そして警察に連行されていく男を静かに見つめた。
「……うん。あの人の声……ちゃんと届いたね」
渚の目から、ぽろぽろと涙が溢れ落ちた。
覚醒してしまった最悪の力。奪われたはずの平穏。
だけど、この子は逃げなかった。自分の痛みを押し殺して、見知らぬ誰かの最後の声を受け止めたのだ。
俺は渚の頭を乱暴に撫で回し、集まった学生どもに向かって低い声で言い放った。
「見せ物は終わりだ。散れ!!」
重苦しい沈黙の中、俺たちは再び動き出した「惨劇」と「真実」の残香を背に、警察車両へと向かって歩き出した。
コメント
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第6話、読んだわ! 渚の能力がしっかり活きて犯人を追い詰める流れが気持ちよかった。峯岸の「本物の悪魔の顔を見たら吐いて泣き出す」って台詞、めっちゃ痺れた。震えながらも自分の痛みを押し♡♡♡て声を受け止めた渚の強さにグッときたし、袖の赤錆とか細かい伏線の回収が丁寧でミステリとしても満足度高い! 2人のコンビ感がどんどん好きになってる🔥