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#ファンタジー
うにい
114
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谷崎爽奈
282
#聖女
桜井正宗@オートスキル1巻発売
7,335
ほぼ同時期に子供が生まれる。
最初はエヴァ。
次に沼袋、半月遅れで遠藤の双子。
遠藤から1ヶ月半遅れでらぁら(本名)。
出産日には多少のズレがあるだろうが、地球で4人の赤子は同学年で産まれて来る。
…そう。
小中高大と全く同じタイミングで入学卒業をするのだ。
学費が気になった俺は何度も子育てサイトで一人当たりの養育費用を調べている。
いやカネは多分大丈夫。
問題は【どこで】【どうやって】【どれくらい】の手間を掛けて育てるかである。
…あまり厳しい言い方はしたくないが、府中の3人が仲良く協調する未来は見えない。
そもそも、この3人は社会性が欠落しているから風俗嬢になったタイプ。
なので、そんな連中同士が協調出来るとは思えない。
「ねえねえ、飛呂彦!
私は? 私は?」
『え?
チャコちゃんさんは…
そもそも関係が無いと言いましょうか…』
「アンパンマンッ!!!」
『うわっ、びっくりした。
急に大声出さないで下さいよ。』
「哺乳瓶買ったの私ッ!!!!」
『あ、なるほど。
その点は…
はい、その点に関しましては妻達に代わりまして感謝申し上げます。』
「その妻達に混じりたいのッ!!」
『いやいやいや!
流石にこれ以上増えると俺のキャパじゃ難しいんですよ。
俺まだ18ですし、障碍者ですし、チャコちゃんさんはアレだし!
流石に勘弁して下さいよ!』
「私が飛呂彦の右手代わりになるよ!!
あっ、コレ下ネタじゃないからね!」
『いやいやいやいや!!
本当に本当に忙しいんです!!
もう帰って貰えませんかね。』
「ギャオーーーンッ!!!」
どんな手を使ったのかチャコちゃんは、俺の貴重なワープポイントである府中自宅の階段下収納に住みついている。
子供の頃に読んだ妖怪図鑑にこんなのが居たなあ。
『えっと、メールチェックするから離れて貰えませんかね?』
「ヒグッ、ヒグッ、離れたよ。」
『えっと、首を変な角度に曲げて画面を覗き込むの止めて貰えます?』
「ヒグッ、ヒグッ、首を戻したよ。」
『えっと、靴下に鏡を貼り付けて画面を盗み見るの止めて貰えます?』
「ヒグッ、ヒグッ、鏡を捨てたよ。」
『えっと、捨てたと見せかけた鏡を貼り付けたドアの角度を風魔法で変えて探りを入れるの止めて貰えます?』
「びえーーーーーん!!!
アレも駄目コレも駄目!!!!
どうして私には何もしてくれないのーーーーー!!!」
『土魔石(極)をあげたじゃない。』
「くれたのはエヴァさんでしょー!!」
『うん、まあそうなんだけどさ。
彼女もチャコちゃんさんには相当気を遣ってるんだから。
その魔石は決して悪用しちゃ駄目だよ。』
「もう地震保険入っちゃったよぉ!!!
しかもフルオプ毎月27万円コース!!」
…ガチの保険金詐欺師じゃねーか。
『なーんでチャコちゃんさんは魔法を悪いことばっかりに使うかなー。』
「ひぐっ、ぐすっ。
だって令和だもん!!」
『時代の所為にするのは良くないよー。』
「岸田の奴が悪いんだよ。」
『で、でたー。
犯罪者特有の政治への責任転嫁。』
「飛呂彦がもっと優しくしてくれたら地震自演は自粛する!」
『いやいやいや。
ただでさえ日本は活断層国家なんだからさ。
地震は駄目だよー。』
「うん、それは飛呂彦の出方次第だよね?
回答次第では東金市民が死なずに済むよ?」
『いやいやいやいや。
テロには屈しないよ。』
「ひっぐひっぐ。
飛呂彦の所為で東金市民が200人くらい死ぬ。」
『いやいやいやいや。
数字が微妙に小さくて逆にリアリティあるんだけど。』
「ひぐっひぐっ。
災害の規模が大き過ぎたら保険会社は不払いモードに入るから。」
参ったなー。
エヴァは俺の表情から地球女の習性を推察した上で、わざと俺を帰省させてる気がするんだよな。
特にチャコちゃんのプロファイリングは絶対に済ませているよな。
「じゃあセックスして!」
『え?
いやいやいや。
女の子がそんな発言するのは禁止カードでしょ!
もっと慎ましく生きなきゃ!』
「それは男の都合でしょ!!
甲斐性のある人はもっと肉食系になってよ!
私も赤ちゃん欲しいの!!」
『いやあ、これ以上はキャパ的に育てる自信がないかなあ。』
「私シンママでもいいよ!!」
『チャコちゃんさんが良くても子供が可哀想。
ってかチャコちゃんさんって母親としてかなりアレなタイプだよね。』
「…。」
『…。』
たまの地球で俺はどうしてこんなに不毛な時間を過ごしているのだろう。
ただでさえ、5人ほぼ同時に産まれる状況にパニックになっているのに。
「分かった。」
『あ、はい。』
「私にも考えがあります。」
『あ、はい。』
「…。」
『…。』
「おぎゃああああああああ!!!」
『(ビクッ!!)』
「おぎゃああああああああ!!!!
おぎゃあああああああああ!!!!
ばぶうううううううううう!!!!」
『え? え? え?』
「あたしチャコちゃん!!!
あかちゃんでちゅばブウううううう!!!!!」
『え!? え!? え!?』
「おぎゃああああああああ!!!!
おぎゃああああああああ!!!
赤ちゃんくれるまで、赤ちゃんになるでちゅー!!
ばぶぅぅうーーー!!!」
俺、前世でよっぽど悪いことしたんだろうな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
さて、仕事仕事。
俺も忙しいからな。
地球で放置していた案件を消化しなくてはならない。
「おお、トビタさん!!!
すっかり変わり果てた姿になって!!」
『中本さん。
長らく放置してしまって申し訳ありません。』
「その顔、ヤクザに拷問でもされたとですか?」
『ちょっと犬に噛まれただけですよ。』
「あ、これはトビタさんが一番の狂犬やったってオチですね。
漫画で良く見たパターン!!」
『すみません。
俺は頑張っても2位止まりです。
さっきまで粘着されてたから分かるんですけど、|ホ《・》|ン《・》|モ《・》|ノ《・》には勝てませんわ。』
中本と再会を喜びながらブランド展開について語り合う。
「思い上がるわけじゃないんですけど。
賞は確実に取れます。
ただ絶対にグランプリは取れない。
業界が売りたがっている手法の真逆だから。」
『過度な装飾を嫌ってましたものね。』
「宝石はそれだけで価値があります。
だからジュエリーデザイン自体、そもそも不要なんですよ。
ボクは最小限主義。
デザイナーの仕事は宝石の邪魔をしない事だと考えてます。」
『ちなみに、この話のオチは?』
「じゃあ、女性にはそれだけで価値があるって事で。」
『あ、熊本チックな方向に話が進む気配。』
2人で肩を叩き合って笑う。
女にはそれだけで価値がある。
だから余計な知恵はそもそも不要。
さっきまで悪謀の権化と対峙していただけに殊更そう思う。
チャコちゃんって普通にしてたら最高のヒロインだと思うんだがな。
そもそも顔とか身体とか凄く好みだし。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
中本のアトリエで談笑しながらメールチェック。
宝石関連の情報に関しては積極的に共有する。
俺が宝石を託した御徒町のジェインとも懇意にするように仲介済みだ。
『4億!?』
「あくまで内々の見込みです。
何と言ってもあのサイズの
ピンクダイヤモンドですから。
次のアブダビオークションに出しますよ?」
『ええ、ジェインさんにお任せします。』
「トビタ社長の手元には
最低でも82%が残ります。
本当に私が5%貰って構わないのですね?」
『ええ、どのみち、この身体ですし。
代理人は必要です。
オークション会場に居るような富裕層の方は俺を嫌がるでしょう?』
ジェインはしばらく俺の顔を観察していた。
そして意を決したのか言う。
「…トビタ社長。
闘争からは何も生まれませんよ?」
『でも、必要な場面だってあります。
時として男は命を賭けて敵を討たなければ…』
「…アナタは生まれて来る子供にも
そう教えるのですか?」
『…いえ、我が子にはこういう生き方をして欲しくないです。』
「では、きっとそれが
貴方にとっての真理なのです。」
『肝に銘じます。』
年齢差の所為かジェインと話していると、いつも最後は説教になる。
まあ、こんな生き方してたら大人に叱られるのは当然か…
「飛田さん。
億の取引っすか?
ぱないですね。」
『ああ、忘れてたけど。
これ中本さんの取り分ね。』
俺はロキ爺さんから巻き上げた家賃を中本に託す。
「ヤバいヤバいヤバい!!
いやいやいやいや!!!
こんなん国宝ですたい!!!
絶対に地球の宝石ではないでしょ!
ロマノフ朝とか清朝の宝物庫に秘蔵されてるレベル!!!」
ほう、ロキ爺さんもたまには誠意を見せるんだな。
てっきり屑石で急場を凌いだのではないかと疑っていたのだが。
『まあまあ。
俺と中本さんの仲じゃないですか。』
「とんだ光バイトになったとですよ。」
『闇バイトよりマシでしょ。』
「光り過ぎたら何も見えないんで闇と一緒です。」
前から思ってたがコイツも気の利いたこと言うよなー。
それも含めて芸術家肌だったんだろうな。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
『ところで中本さん。』
「はい。」
『警察の人に呼び出されてる事に気付いた。』
「えー?
何をやらかしたんですか?」
『心当たりが多過ぎて…』
俺、異世界でも地球でも殺しまくってるからな。
罪状なんて一々想像が付かないよ。
「印西です。」
『もしもーし、印西刑事。
お疲れ様でーす。』
「飛田か!?」
『すみません。
今、メッセージに気付きました。
新宿署に出頭しましょうか?』
「…いや、人目があったら
オマエが困るだろ。」
『今は寮?』
「そうだけど…
あんまりオマエに玄関を
ウロチョロされると困るんだがな。」
『じゃあ風呂場からお邪魔します。』
「ちょ!!!
…いや、玄関から来られるよりマシかも。」
『じゃあ今から。』
「物理法則考えろ馬鹿!!」
『じゃあ90分後に伺います。』
「…俺は買い物に出ていた。
うっかり施錠を忘れてたら
オマエが勝手に上がり込んでた。
そうだな?」
『お気遣いスミマセン。』
「スミマセンで済んだら警察いらねーよ。」
お巡りさんは怖いなあ。
アイツらすぐ怒るからなあ。
しかもさっきのは俺の為に怒ってくれてるんだぜ。
やれやれだよ。
「飛田さーん。
警察を挑発したら駄目ですよー。」
『いやあ、俺なりに誠実に向き合ってるんですけど。』
「誠実に向き合ってそれだったら付ける薬なかとですねー。」
返す言葉もない。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
90分後。
印西の部屋。
『ちわーっす。』
「やっぱオマエ心臓に悪いわ。」
『ちゃんと定刻通りでしょ。』
「分かってても風呂場から
殺人鬼が出現するのは怖いぞ。」
『殺人鬼だなんて人聞きが悪いなあ。』
「ドバイ、木村家。
赤ん坊まで手を掛ける奴は社会の脅威だよ。」
『何?
人権派ですか?』
「日本は警官と自衛隊以外の
人権が尊重される国なんだよ。
その歳なんだから流石に知っとけ。」
言いながらも印西はコンビニで買った菓子を俺の前に広げてくれる。
「一応報告しとくぞ。
特殊詐欺のメインメンバーが芋蔓式に逮捕されてる。
フィリピンの刑務所に潜伏していた闇バイト幹部達も月内には強制送還されることが決まった。
後は日比政府間の事務処理だけだな。」
『へー。
じゃあ、闇バイトやら強盗やらはあらかた逮捕って事ですね。』
「うん。
オマエ以外の悪党は一網打尽だ。」
『そっすか。
で?
今日は俺を逮捕する話っすか?』
「オイオイオイ。
俺に殺意向けるなよ。
オマエ何人殺してんだよ。」
『スンマセン。』
「ピザポテト食わせてやってるだろ。
男なら信義を守れ。」
『そっすね。
流石にポテチ食わせて貰った人に不義理は出来ませんわ。』
「以上、報告終わり。」
『え?
俺は?』
「一応、上司に報告したから。
俺も警察官として不審者を野放しには出来んからな。」
『上司って水岡さんでしょ?』
「そうだよ。」
『…。』
「俺は下っ端だから何も分からねー。
後は上っ端の人が考えるんじゃねーの。
水岡さんが俺の報告を上に上げたかまでは知らんけど。」
『そっすか。』
「一昨日、管轄内に住んでる闇バイト幹部を逮捕した。
結構暴れるタイプの奴なんで鎮圧要員に俺が指名されたんだ。
俺はただ、それだけ。」
『お疲れ様です。』
「仕事だからな。
給料貰ってやってる事だ、労われる筋合いもねーよ。」
印西がYouTube上に流れてるニュースを検索して見せてくれる。
『うおっ!
印西さんが映ってます!』
「容疑者が配信しながら歌舞伎町を歩いていたからな。
俺達が映っちまったんだよ。」
『うおおっ!!
押さえつけた!』
「逮捕状見て逃げようとしたからな。
制圧しなけりゃ税金泥棒だろ。」
『印西さん凄いですね。
片手で押さえつけてるじゃないですか!』
「制服のチカラだ、俺のチカラじゃねーよ。」
『署で表彰とかされないんですか?』
「寿司屋が魚捌いて表彰されるか?
パン屋がパン焼いて褒められるか?
単なる日常業務だよ。」
『…本当にお疲れ様でした。』
「ありがと。
労ってくれるのオマエくらいのモンだわ。」
『…。』
「…じゃあ、本題に入るぞ。」
『はい。』
「オマエ、異世界転移しただろ。」
『は…
いえ。』
「…うん、今の反応で全部分かった。」
印西曰く、今時なろうを読んでない奴なんていないそうだ。
ましてや警察庁ほどストレスの多い職場で読まずに正気でいるのは難しいとのこと。
鬼刑事と恐れられている水岡ですら、ロッカールームで虚ろな目をしてなろう漫画を読んでいる日があるそうだ。
「神奈川県立新湊第二高校生徒行方不明事件。
オマエもあの日登校してたんだな。」
『…。』
「ああ、勘違いしないでくれよ。
現場の警官如きに管轄外の話をする権限は無いんだってさ。」
『捜査に必要なら管轄の外にだって行くべきなんじゃないですか?』
「それも1つの考え方だな。
でも俺達みたいなノンキャリは言われた作業だけ黙々とこなしてりゃいいんだってさ。
意見を言うのも烏滸がましいらしいぜ。」
『そっすか。』
「他の奴らは死んだのか?」
『さあ、どうでしょう?』
「オマエが殺したのか?」
『殺すほど一緒には居なかったので。』
「うん、資料を見る限り学校には馴染んでなさそうだもんなオマエ。」
『…自首しろって話ですか?』
「何の罪状で?」
『いや、事情聴取とか普通はするでしょ。
クラスの連中が全員消えて、俺だけ生活してるって怪しいじゃないっすか。』
「あ、うん。
そのセリフは神奈川県警さんに言ってやって。」
『…スミマセン。』
「言っとくが神奈川県警さんも大変なんだぜ、あの時期G8の開催地に選ばれたり、予算減らされたりしてるからな。
内情を知ってる俺からすれば、むしろ頑張ってる方だと思う。」
『…俺にどうしろと?』
「分からん。
その怪我が地球で負わされた物なら被害届を出せ。」
『あっちです。』
「あっそ。
じゃ、話は終わりだ。
余った菓子は全部やるから嫁さんにでも食わせてやれ。」
『これで終わりっておかしいでしょ。
だって事件になってるんですよね?』
「じゃあオマエがケリを付けろ。」
『印西さんって警官に向いてないんじゃないっすか。』
「さっき水岡さんにも同じこと言われた。」
『…。』
話はそれだけ。
もう2度と来るなだってさ。
◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇ ◇
チャコちゃんに部屋を奪われた村上翁は俺との共用倉庫に軽キャンピングカーを持ち込んで暮らしている。
相変わらず無駄に絵になるジジーだ。
『ちゅーっす。』
「さっきジェインさんから電話あったぞ。
しばらく地球で挨拶回りしてるんだって?」
『別に挨拶回りって程じゃ…
警察に顔出してただけですよ。』
「どっちの?」
『チャコちゃんさんじゃない方の警察です。』
「ホッ。」
『あの人、昔からあんな感じなんですか?』
「あんな感じにさせたのはオマエだぞー。」
『マジっすか?
スミマセン。』
「スミマセンで済んだら家裁いらねーよ。
これからどうするんだ?」
『正業には就かないと思いますが、税金もチョコっと払います。』
「チャコちゃんと同じこと言ってるなオマエ。」
『えー!!』
あの人、俺と社会観が近すぎるんだよな。
即ち、関わるべきではないってことだ。
「なあ、もう落ち着けよ。
子供も生まれるんだからさ。」
『最後に一仕事して隠居します。』
「…これ以上、怪我するのは無しな。」
『後は武運次第です。』
「そっか。」
さて俺の旅は終わった。
とっとと済ませるか。
コメント
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第134話、読み終えました……もうチャコちゃんの“赤ちゃんになる”作戦には笑いと呆れが同時に来ました(笑)。あの粘着っぷり、飛呂彦くんの困り顔が目に浮かぶようで。でもその一方で、印西刑事とのやりとりにある「スミマセンで済んだら警察いらねーよ」って台詞がすごく沁みました。日常の滑稽さと、しっかりした警察のリアルが混ざってて、この距離感が絶妙だなあと。子供が生まれる前の、最後のひと暴れ…どうなるのか気になります。