テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
コメント
2件
これからは同じ部署💕ワクワクしかない🤗 凱人さんの脳内が忙しい😁 2人とも可愛い😍
るりちゃん、可愛い🩷
「だから、戻ってもらおうと思って」
一度や二度様子を見ただけの俺でも、彼はあの席に座っているべきではないとわかるほどのやる気のなさだ。
店舗に戻っても腑抜けているようなら、相応の処分が必要だろう。
「あ、じゃあ、主任は――」
「――俺」
「へっ!?」
俺は自分の人差し指を自分に向けた。
「言ったでしょ? 専務補佐なんて半端な肩書だったのは、身の置き場が決まってなかったからって」
「はぁ……」
「不束者ですが、よろしく」と、俺は深々と頭を下げた。
「えっ!? あ、はい。いえ、こちらこそよろしくお願いします」と、つられてるりちゃんも頭を下げた。
『お客様が満足してくださったかを直接確認するために、自分はフロアに立っている』
佐藤さんから聞いた店長の言葉に、辞めさせるには惜しいと思った。
きっと、接客が好きなんだろうし、店長に悪気があるわけではなさそうだった。
ただ、一度店長になってしまうと、余程の不祥事でもない限り降格はさせられない。他店に行っても店長のまま。
で、誉に提案した。
彼に接客の指導を任せられないかと。
新しい役職になるし、すぐには決められないと誉は言ったが、その表情から後ろ向きな回答には思えなかった。
だから、もう一つ提案した。
それが、権田主任の異動と、俺の主任着任案。
『あの子のそばにいたいから、じゃないだろうなぁ』と呆れ気味に言われたが、俺は肯定も否定もしなかった。
まだ数日だが、るりちゃんは通常業務ありきで店舗調査もしていて、対する俺は黎琳の手伝いなんかをして終業時間を待つ状態。
今後は、人事二課を巻き込んで店舗調査に本腰を入れていくつもりだった。
「るりちゃん?」
頭を下げたままの彼女を呼んだ。
肩までの髪が宙に揺れる。
「すみません、なんか――」と言いながら顔を上げた彼女が両手で口元を押さえた。
「――すごく嬉しいです」
そう言って目を細めた。
その表情が本当に嬉しそうで、なんだか照れる。
「そう?」
「はい! 凱人さんが主任だなんて、すごく嬉しいです」
俺も嬉しい。
専務補佐なんていてもいなくてもいいような役職ではなく、店舗調査以外で給料に見合った働きが出来る。
それが、相棒であるるりちゃんの近くなら、なおのこと。
だが、るりちゃんの嬉しいはどういう意味だろう。
『いつでも極上イケメンさんを眺められるなんて!』という喜びだろうか。
それとも、『働かない上司が交代して嬉しい』だろうか。
立候補しておいてなんだが、俺も人事二課の仕事においてはド素人だ。なのに、主任だなんて役職に就く。
早々に幻滅される可能性も高い。
気を引き締めないとな……。
「ご指導ご鞭撻のほどをよろしくお願い致します」と言いながら、頭を下げた。
「ふふっ。こちらこそよろしくお願いします。鴻上主任」
ヤバい!
主任呼び、クる!!
オフィスラブなるものに縁がなかったからか、好きな子に上司扱いされて、ちょっと良からぬことを想像してしまう。
「あ、でも、会社以外では名前で呼んでね? るりちゃん」
「え……、あ、はい……」と、るりちゃんが頬を赤らめて肩を竦めた。
「ね。夕食は俺に任せてもらっていいかな」
「え? あ、でも、パンケーキもご馳走になりましたし――」
「――可愛い相棒の誕生日だからね、格好つけさせてよ」
言った!
さり気に『可愛い』って言えた!
心の中でよしっとガッツポーズをして、同時にはたと気が付いた。
おめでとうを言ってない――!
今日の服装が可愛いことも言ってない――――!!
何たる不覚。
真っ先に言うべきことを言っていないではないか。
俺は、拳を口元に当て、「んんっ」と喉を鳴らした。
「るりちゃん」
意を決して顔を上げると、当のるりちゃんは両手で頬を挟むようにして俯いている。
「るりちゃん?」
「え? あ、すみませ――」
「――どうかした?」
「いえ。あの、社交辞令でも、可愛いなんて言われ慣れてないもので……」
言って良かった……。
耳や首まで真っ赤にする彼女の反応は、俺の知る女性たちとは本当にまるで違って、こっちまで照れてしまう。
だが、落ち着け。
ここが男の見せ所だ。
ここで、極上イケメンっぷりを発揮しなければ!
俺が張り切ると、大抵失敗する。あまり、張り切ったことはないが。
そして、「イケメンなのにざんねーん」と言ったお決まりの言葉を聞く羽目になる。
今日は、避けたい。
「社交辞令なんかじゃないよ? 本当に可愛いと思ってる。今日の服もいつもと雰囲気が違うから、俺も緊張しちゃったよ」
「ありがとうございます。この服、兄からの誕生日プレゼントなんです。今日、何を着たらいいか困ってたからすごく助かったし、兄のセンスは確かなので、嬉しいです」
るりちゃんが、ワンピースの胸元を押さえていった。