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ヒロインになりたくて

7 - 怪しい誘い文句

♥

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2025年03月28日

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星崎視点

裏方業務がひと段落つくと、

僕はすぐに自分の楽屋に戻って、

ギターを抱えて飛び出す。

「TASUKUさん!」

「分かってる!」

休む間もなく動画撮影のスタンバイするスタッフらと共に、

僕も一緒に備品庫から撮影機材を運び込む。

セッティングも当然のように自分達でして、

そのまま撮影に入った。

持ち歌を弾き語りするシーン、

歌のリズムに合わせてダンスするシーン、

MV撮影のようにドローンを追いかけるシーンなど、

複数の撮影をして切り抜き動画へと加工する。

途中でドローンが飛ばないといった、

小さな機材トラブルはあったが、

撮影自体は順調に進んだ。

「うん⋯いい感じじゃないかな?」

「よかった。

ありがとうございます」

どうにか無事に撮影が終わり、

ほっと一息つく。

だが僕にはまだ撤収作業が残っている。

中にはそこまでしなくていいと、

言ってくれる人もいるが、

何もかも放り任せるのは流石に気が引けた。

元はと言えば社長に問題があるせいだが、

巻き込まれた方はたまったものではない。

そのためリゼラル社のスタッフを守るためには、

僕が防波堤になる覚悟くらいはしていた。

「よし!

これで全部だね」

「TASUKUさん⋯あまり無理しないでくださいね」

「何言ってんの?

今は君たちの方が大変でしょ。

僕なんて全然だからさ」

本当は休みたい。

でも休んでも意味がなかった。

仕事がないオフだともう地獄だ。

休日に特にこれと言って予定がないと、

まるで自分だけがズル休みしているような気分になってしまうのだ。

そのため新曲を作ったり、

人手が足りていない現場がないかスタッフに電話したり、

結局は仕事モードになる。

明らかに体は、

休んでも休んだ気がしない。

気持ちは仕事を休むと、

何もしていない罪悪感に苛まれて、

息苦しかった。

そんなに身も心も追い込まれてしまうくらいなら、

この忙しさが僕にはちょうどよかった。

だって余計な他ごととなんて考える余裕がないから。

「いたいた⋯確かTASUKU君だっけ。

ちょっと話せるかな?」

彼は確かカメラマンだったはず。

僕に話しかけるだなんて一体なんの用だろう。

正直なところ彼の目にどこか必死さが伺えて怖かった。

(嫌な予感がする。

でも仕事関係者だからな)

波風が立ってしまうような話ではないことを祈りながら、

一旦スタッフと別れて彼についていく。

何故かスタジオの奥の方へと連れて行かれそうになり、

僕は身の危険を感じた。

そちらはあまり人気のない場所だからだ。

僕はピタリと立ち止まる。

彼が振り返った。

何も言わない。

「ご用件は?」

少し声が震えるが、

あくまでも冷静に話す。

「僕の被写体になって欲しい」

「は?」

そんなこと?

というよりもそれだけのために声をかけたのか?

どうにも僕にはそれだけではないように感じてならなかった。

そもそも僕はミュージシャンだ。

会場でのライブやライブハウスへの出演、

音楽番組、

ゲストがミュージシャンしか出ない音楽に強いラジオ番組、

などに出ることはあったが、

モデルやファッション雑誌の経験など一切ない。

それなのに被写体にしたいとはどういう意味だろうか。

全く話がよめなかった。

「はは⋯やだな〜冗談キツすぎ!

僕は身長157cmですよ?

モデルなんて身長がものを言う世界でしょ?

僕には向きませんよ」

そう。

僕はあまりにも小さすぎる。

これがもし藤澤さんに来た話なら納得が出来た。

彼は高身長なので、

何を着ても完璧に着こなしてしまえそうだ。

しかし、

僕に同じことは求められても出来ない。

「それでも君を被写体にしたいんだ。

頼むよ」

特に理由を明かさずにさらに食い下がろうとする彼に、

やはり異質さや違和感を覚えた。

どうしてここまで固執するのか。

もしかして誰かの差し金なのか?

「仮に厚底ブーツを履いて身長を誤魔化したところで、

精々160cm前後にしかなりません。

そんな小さなモデルなんて聞いたことないですよ」

僕のトドメの一言が効いたのか彼は何も言わない。

言い返せるだけの言葉など用意していなかったのだろう。

仕事を餌にすれば僕が、

食いついてくると考えたのかどうかわからないが、

そんなことでは釣られたりしない。

(最悪に気分が悪いな。

なんか癒されたい)

その後スタッフのいるところに戻って、

僕が談笑しているとオズオズと声をかけてきた人がいた。

「さっきは大丈夫でしたか?

あの人よくない噂があるから⋯⋯」

それは彼に絡まれる直前まで一緒にいたスタッフだった。

どうやら僕が「何か」されたのではないかと、

彼女は心配していた。

やっぱりそうか。

あの人の目には敵意に近いものがあった。

それにしてもよくない噂か。

警戒した方が良さそうだな。

「平気だよ。

心配してくれてありがとね!」

明るく弾んだ声でそう誤魔化すが、

心は不安の渦中にあった。

つくづく作り笑いが上手くなったななんて、

僕は呑気にそんなことを考えていた。

















雫騎の雑談コーナー

はい!

いかかですか?

カメラマンのことをうまく交わした星崎ですが、

まだまだ不穏な気配が続いていますね。

サクッと本編に行きますね。

現場が被っている他の人の裏方業務だけではなく、

自分の仕事でも星崎は率先してスタッフの仕事を手伝う。

そんな中でカメラマンにどうやら目をつけられた様子。

しかし星崎自身は明らかにモデル体型ではないため、

何か裏があることに勘づくんですね。

いよいよ波乱の幕開けか?

次回もお楽しみに!

ではでは〜

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