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〜僕と君の2人で四季を見たい〜
登場人物
音乃李音(おんのりおん)
中2。クラスで浮いていて、不登校気味。趣味は花を集める事。
雪野零風(ゆきのおらふ)
中2。生まれつきの病気で、一度も外に出た事が無い。
四季を見たい。
…1人だけ、浮いていた。
趣味が“男子じゃない”だけで。
俺は男子。男子じゃないならなんなんだよ。
…そんな俺の趣味とは、“花を集める”事だった。
春も夏も秋も冬も好きで、それぞれの季節の花を集めるのが好きだった。集めた花の、花言葉を調べるのも好きだった。
ある時、鞄に付けていた花のミニリースで趣味がバレてしまって、今に至る。
今はあまり学校に行けていないが、趣味は一切変わらなかった。
「貴方は身体が弱いから、外に出ちゃ駄目よ。」
小学生の頃に、母に言われた言葉。
そのせいで、学校にも行かせてもらえなかった。
その縛られた生活が嫌で、家から逃げ出そうとした。
すると、発作で倒れる。
小学生の頃はこれの繰り返し。
余りにも僕が逃げ出すから、病院に入院する事になってしまった。
…それから何年経っただろう。
…逃げ出す事も諦めてしまった。
…でも、一度でいい。
いつかでいいから、写真でしか見た事の無い、“冬”が見たい。
「うわっ!?」
家の階段を降りていると、足を踏み出してそのまま転げ落ちてしまった。
痛みが酷く、病院に行くと、骨折していて抜糸するまでの2週間入院する事になった。
案内された病室に入ると、前のベッドには同じ年くらいの男が座っていた。
「…?あ、患者さん?」
男は少し優しい声で言う。
「…そう、ですけど?」
「そうか、、僕んとこの病室は此処数年誰も入ってないんやけどなぁ…なんで君だけ…」
リアル関西弁。初めて聞いた。
「他の病室が開いてなかったのでは?」
「せやなぁ…此処ん街も有名になってはるんや…」
「…じゃあ、1週間、宜しく…」
「その前にぃ?君の名前を聞いてないんやけど?」
「あ、俺?俺は音乃李音」
「…僕は雪野零風やで!」
お互いの名前を教えあった所で間が空いて、静かになった病室の空気を零風が一瞬で変えた。
「…僕はおんりーと呼ばせて貰うで!」
「おんりーわん?雪、見た事ある?」
「雪?」
突然の質問に戸惑ったが、我に返って「そりゃあ」と言うと、俯き、悲しそうに話し始める。
「…ええなぁ…僕なんて外に一回も出た事がないんやからなぁ…」
「…そっか、此処は…」
…そう。此処は市の中心部。更に温暖地域で雪は滅多に降らない。
「…外には、どうして?」
好奇心で聞いてしまう。
「…僕な、持病のせいで外に出られんのや、…此処ん病院は窓の外は壁、壁、壁やぁ!!」
「しかもな?周りの木も無いわ、雪は降らんわ…四季の風景を見た事が無いんや、せめて銀杏の落ち葉でも見たいわ…」
「…花、好き?」
突然の質問に驚いているようだが、直様答えてくれた。
「…見たい、!」
その答えを待っていた。
鞄の中からシロツメクサの冠を取り出して、零風の頭に乗せた。
「ほら、シロツメクサの冠、…シロツメクサは“幸運”の花言葉があるから、」
「おんりー…凄いなぁ!?これ、いつの花なん?」
「…4月から、10月まで、咲くから…」
「これ、持っとってええ?」
「…良いよ、沢山あるから」
「…いつか、4つの四季を見れる時が来たら、このシロツメクサを持ってくわ!」
「良いよ、…そん時は、他の花も持ってるかもしれないけどね?」
…病院が静かになった時。
僕は診察室に医者と2人で話していた。
「そんで、大事な話とはなんですか?」
「…おらふ君さ、持病があるじゃん?」
…それがどうしたんやろ、
「…その病が体を蝕んでいて、君はもう…」
「けれど、幸運な事がある、」
「今年の冬、そこまでは…」
「…そうですか、」
…そっか。
…四季を見れるのは、今年で最後だ。