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・「」= 会話
・「""」= ジェスチャー
・「()」= 思っていること
・『』= スマホに打った文字
俺の隣の席のやつは、ただ一言で言うなら"変なやつ"だった。
一年中マスクをつけて、友達も一人もいないようなやつ。
そしてなにより、そいつの声を一度も聞いたことがなかった。
同じクラスになるのは二回目なのにたった一度も..
だからなのか純粋に興味が湧いた
そいつの声を聞いてみたいと、
男らしい太く低い声なのか、はたまた可愛らしく高い声なのか…
ただ興味が湧いて、ただそいつのことが知りたかった。
勇「なー。なぁなぁ。おーい」
三度目にしてやっと振り向いた。
その時、初めてそいつと真っ向に目が合った気がした。
その目は今までに見たことがないほどに綺麗な目だった。
そいつは珍しそうな顔をして自分を指さし、「"俺?"」とでも問いかけるように顔を傾げた。
仁「"俺?"」
勇「そう。去年もクラス一緒だったよな、?確か。」
仁「"うん"」
勇「…ごめん、名前なんだっけ笑」
声が聞ける、そう思った矢先、そいつはスマホを取り出して文字を打った。
仁『吉田仁人』
勇「…。仁人ね、俺は…」
仁『佐野勇斗くん』
勇「よく知ってんね。あ、あと'くん'いらないから。」
そう言うとマスク越しに笑顔で頷いているのが見えた。
マスクをしているから、勝手に表情が下手くそなやつだと思っていた。
それこそ泣いている顔も怒った顔も、笑った顔ですら…俺の記憶にはなかった。
勇「お前笑うんだな」
仁『当たり前だろ。俺も人間だわ笑』
勇「てかさ、…なんで声出さねぇの?」
仁人が一瞬固まったように見えて、やってしまった、と思った。
勇「あぁ悪い、無神経だった…ごめん」
仁『別に大丈夫。気になる?俺がなんで声出せないのか』
勇「…まぁ、気にならないかって言ったら嘘になるけど、、」
仁『別に大したことじゃないけど笑じゃあ、今日の昼一緒に屋上で飯食おうぜ』
勇「昼?あぁ…わかった。屋上な…って屋上入れんの?」
仁『俺だけ特別』
勇「なにそれずるっ」
そう約束してから1時間、2時間、3時間…と時間が流れた。
仁人と初めて会話してからは、徐々に慣れてきて、授業中にノートに筆談したり、たまに仁人に向けて変顔したり…それを見た仁人が笑ってくれるのが嬉しかった。
こいつの笑った顔を知ってるのはきっと俺だけだと思ったから。
時間はあっという間に経ち、昼のチャイムがなった。
いつも一緒に昼食を食べている仲間に呼び出されるも、今日は断った。
勇「ごめん、今日先約があんだわ」
A「なに、彼女でもできた?笑」
勇「ちげーよ笑まぁでも今日は無理だから、すまん!」
A「はいはい」
何とか誘いを免れ隣を見ると、もう仁人はいなかった。
弁当を持って急いで廊下を渡って屋上に繋がる階段 を駆け上り、そしてドアを開けた。
to be continued…