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(ま、ま……マジ、ですか……割れないって言ったじゃん!)
辺り一面には白い煙が立ち込め、暫くしてようやくそれが晴れると、私の足下に粉々になった水晶玉の破片が落ちているのが見えた。
シーンっと静まり返った中、私はゆっくりと顔を上げ、慌てて駆け寄ってきた三人を見て安心したのか腰が抜けてしまった。
「聖女様大丈夫ですか!」
「エトワール様!」
リュシオルと、ルーメンさんは私を抱きしめるように支えてくれた。
「あ、ありえない」
私が驚いているのとおなじぐらい、神官もあり得ないと砕けてしまった水晶玉を見つめていた。
弁償してくれ何て言われたらどうしようかと、ビクビクしていた私だったが、流石にこれは想定外だったようで神官は何も言わず黙ってしまった。
取り敢えず、水晶玉を割っちゃいましたという罪悪感に駆られ、どうにか謝ろうと口を開こうとしたがそれよりも先に神官が目を輝かせ狂ったように手を叩きだした。
「さすがです、聖女様! 素晴らしい! これで、貴方様が本当に聖女であると証明されました!」
興奮気味の神官の言葉を聞きながら、私が聖女ではないと疑っていたのかと思うと複雑な気持ちになった。
まあ、聖女らしいかと言われればすぐにイエスと答えられないし、中身はオタクだし……
しかし、水晶玉が割れる前に見たあの光は確かに白だった。と言うことは、私は光魔法の適性があるということになる。エトワールは闇魔法を使っていたというのに。
とにもかくにも、ラスボスになるのが納得できる魔力を秘めていると言うことは分かった。
「……前例がありません。これほどの光魔法の魔力を秘めている魔道士……聖女は。きっと此の世界を隅々まで探してもいないでしょう」
んな、大げさな。
と、私は思いつつも感動している神官にこれ以上何も言えないな。と大人しくすることにした。
「さすが、エトワールね……」
「わ、私も吃驚だよ。え、こんなんだったの?エトワールストーリーの魔力測定って」
私の肩を支えながらリュシオルはそう私に耳打ちした。彼女も水晶玉が割れるとは思っていなかったようで、驚きの表情を私に向けている。
エトワールストーリーをやっていない私は、もう昨日召喚された時点で右も左も分からない状態だったのに。
「というか、エトワールって光魔法使うの……? 私、ヒロインルートしかやってないからてっきり、闇魔法の使い手だと」
「うーん、そこは私も分からないのよね。サラッと書かれていたような気もするし、書かれてなかったような気もするし……」
私は全力で使えねぇ。の意を込めてリュシオルを見た。
リュシオルは明後日の方向を見ていて目を合わせようともしない。
闇落ちする前の聖女だから光魔法だったっていうことか……私はそう結論づけリュシオルの肩を借りて立ち上がった。足下に散らばっている水晶玉の破片を見てやはり申し訳なくなる。
きっとこれは相当な年代物で、稀少なものだろうし。
「本当にすみません、水晶玉を…その、割ってしまって」
「いえ、いいのです。聖女様がこの世界にいらっしゃるだけで奇跡なのですから。これでいつ災厄が訪れても安心ですね」
神官は優しく微笑み、気にしていないと言ってくれた。私はホッと胸を撫で下ろした。
そこで落ち着いた私は、先ほどから気になっていた『災厄』について聞いてみることにした。
「そ、それで、その……『災厄』とは何なんですか……?」
私が聞くと、神官は目を丸くして驚いた顔をした。
あれ、聞いちゃいけないことだったかな……?
それとも、聖女ならば知っていて当然のことだったのだろうか……
でも、今更後には引けない。何せ、私は何も知らない聖女なのだから。
すると、神官はハッと我にかえった様子で咳払いを一つして説明してくれた。
「『災厄』とは予言者が予言した、世界の終焉のことです」
と、神官は真剣な表情で言った。