テラーノベル
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第80話
俺は、ライナーさんの治療を始めた。先ずは、止血。
傷を治すのは得意だけど、これは、圧迫による内臓出血。ミリ単位での作業だ。
取り敢えず止血が終わって吐血も治まったので次は、毒抜き。
間違って違う細胞を殺してしまわないように慎重に行わなければならない……けど、慣れてくれば勘が働いてくれる。
毒抜きが終わったら、細胞内の魔力回路の調整と、骨折、靭帯損傷の手当て。
いつもより、魔獣が少ない。他の人が倒しているのだろうか……?
大分、呼吸も安定してきた。脈も正常範囲内。魔力の使い過ぎによる軽度の魔力欠乏症。
俺は、その大男の身柄を拘束した。
「……ん……っ、ニルス?」
「ライナーさん。大丈夫ですか?」
「少しぼんやりするが、貧血か魔力欠乏だろうな。傷は治してくれたんだな。ありがとう」
俺が大男を放って、ライナーさんの元へ寄っていたら「おい! 私からの質問を『はい』か『いいえ』で真実だけを答えろ。さもなくば、胴体と首がバラバラになるぞ」という、女の子の声――否、リナの声が聞こえた。
二人で肩をビクつかせて後ろを振り向くと、完全に回復した大男が、リナの下敷きとなっていた。大男の首元には、リナが握っている剣がある。
俺たちは顔を見合わせた。こればかりは、見なかった事には出来ない。
「ひぇっ!」
「ゴツい図体してて、こんな女の子にビビってるんじゃ生きてけねぇぞ! 異世界から来たんだよな?」
ブルブルと震えながら、また泡を吹きそうだ。ものすごく気圧されている。
無論、本気を出しているリナなのだから……って、リナが本気?!
「はい……」
「昔、私をストーキングしてたよな」
「はいっ……」
「私やノアを呪ったのはお前か?」
「はい……」
「共犯の女は! どこにいるか話せ!」
「血だらけの街に……」
そこまで言うと、リナは金属バットで、そいつの後頭部を打った。
リナの本気、恐るべし……
「二人とも大丈夫ですか?」
「あぁ」「見ての通りだ」
「良かった」
#魔法
こはる
121
植まどか
136
こはる
1,676
601
さっきのオーラとは一変して、ふんわりと微笑んだ。でも、魔力の動きは……怒ってる? 万年温厚なリナが?
「大丈夫って事は、動けるって事ですね」
「何を考えている?」
「直球に言ってしまいますが……周辺にいる騎士たちを街の方へ避難させてください。相手の女は……手加減無しでは勝てませんから」
は? 避難……?
「街までは、届かないように頑張りますから……お願いします」
そう言ってリナが頭を深々と下げた。この言葉は、心の底から思っていることをそのまま言っただけだ。
大丈夫だろう。何とかするのが、セリーナという女の子なのだから。
ライナーさんと顔をもう一度見合わせたけど、頷いてくれた。
そうだよな。リナだもん。
「あぁ。ちゃんとやるから、任せろ」「俺たちも、精一杯働くから安心しとけ」
「ありがとうございます!」
リナはそう言って、俺たちにこっそりと回復魔法をかけながら嵐のように走り去っていった。
ここには、俺たちと、痙攣している大男と、リナの優しい余韻が残っていた。
❂
私は、エリカさんの傷を治した。何とかって感じで、お兄様や、お父様や、お祖母様のように素早くは出来ない。武道に優れた治癒魔法の家系の長女なのに……
でも、確実ではあるはず。毒抜きも、傷口の手当ても、回復も私に出来るすべてをやった。
「グレーテ。ありがとう。動けるわ」
「良かった。でも、無理はしないでください」
「分かってるわ。それは、リナにもっと言い聞かせてほしいわ」
「リナは、私が気づく前に軽くやってのけるんです。言い聞かせる前に守られてばかりで……」
いつの間にか、話が逸れちゃってた。
「あ、ごめんなさい。こんな話……不謹慎ですよね……」
「いいえ。私が配慮できてなかったのが悪いわ。気にしないで」
私は無言で頷いた。これ以上、口を開けるような勇気が無かった。
少しすると、屋敷の外に出ていた。第二部隊と第五部隊の訓練場が見えた。
そこには、沢山の聖騎士が立っていた。
でも、全員第二部隊。お兄様は、第五部隊だから、名を名乗っても分からないだろう。
「取り敢えず、人目のある場所にいた方が良さそうわね」
「はい。そうですね」
「でも、武器の準備はおこたらわないで。聖騎士がいくらいると言っても、相手は、聖騎士より上の可能性も否めない」
そう言ってエリカさんは、警戒心マックスで私の側に立っていた。
コメント
1件
第80話、読み終わりました…! リナが本気出したシーン、めちゃくちゃかっこよかったです…🥀 あの温厚なリナが「手加減無しでは勝てない」って覚悟決めてるの、胸にグッときました。ニルスが治療中に隣でリナが大男を圧倒してるギャップ、面白かったです(笑) でも最後のグレーテとエリカさんの会話、静かな緊張感があって…続きが気になります🌙