テラーノベル
アプリでサクサク楽しめる
「めぃめぃ!」
「っあー、もう…。」
楽屋の賑やかさから少し離れた場所で、康二がいつものようにめめに絡みついている。うざったそうに肩を竦めて見せるめめだったけれど、その口角がほんのりと上がっているのを俺は見逃さなかった。嫌がっているフリをしながら、めめも康二の甘えを受け入れている。
遠目からその光景を眺めながら、俺は優しく目を細める。後輩たちが仲良くしている姿は微笑ましい。そう自分に言い聞かせながらも、結局、俺の視線は吸い寄せられるように康二一人に集中してしまう。
「めめ、この後一緒にご飯行かへん?」
「ごめん康二、ちょっと今日はどうしても帰らなきゃいけなくて…また今度ね?」
「…そっかぁ…ほんならまた誘うわ!」
「うん、俺も声掛けるよ。じゃ、皆お先に。お疲れ。」
「「「お疲れー!」」」
皆が見送る中、申し訳なさそうに帰宅していくめめの背中を、康二が寂しそうに見送っている。肩を落としたその横顔が、捨てられた子犬みたいで放っておけない。
「康二、この後空いてる?」
声をかけると、康二は弾かれたように振り向いた。
「阿部ちゃん?おん、めちゃくちゃ空いてんで!」
「ふふっ、じゃあご飯行こうよ。奢ってあげる。」
さっきまでのしゅんとした空気はどこへやら、ぱぁあっ、と一気に花が咲いたような笑顔になる。
「ほんまに!?行く!」
「もう帰る準備はできてるから、俺はいつでも行けるよ?」
「えっ、ちょっと待っとって!すぐ準備するわ!」
「ゆっくりでいいよ。お店は前に行きたいって言ってた所でいい?」
その問いかけに、帰り支度の手を止めてきょとんと康二は目を丸くする。
「…え?…俺、そんなん言うてた?」
「ここなんだけど、…違った?」
スマホの画面を操作し、以前康二が会話の途中で《ここ美味そうやなぁ…》と呟いていた和食屋のページを見せる。
「あー、ここか!うん、行きたい!」
「じゃ、予約しちゃうね。」
康二の何気ない一言や好きな食べ物を、俺の頭は勝手に記憶してしまう。それがどれだけ一方通行の記憶力だったとしても、こうして康二を笑顔にできるならそれでいいと思ってしまっていた。
準備を終え、二人で事務所の駐車場へと向かう。
夕暮れの風は少し冷たい。康二と並んで歩きながら車を出す準備をしていると、駐車場を出ていく一台の車が目に入った。
運転席に座っていたのは、先に楽屋を後にしためめだった。
信号待ちで停車しためめの車内から、こちらを見つめる視線を感じる。俺は小さく微笑み、わざと康二の肩をぽんぽんと叩いて視線をそちらへ誘導した。
「康二。あそこ。めめ。」
「えっ?あ、ほんまや!めめーーーっ!!!」
「っわ、…!」
思わず身を仰け反るほどの康二の大声。耳を劈く声量で呼びかけながら康二が大きく手を振ると、車内のめめは一瞬目を見開き、どこか複雑そうな表情を浮かべた後、少しだけ手を上げて応えた。
用事があって断ったのは彼自身だ。なのに、俺と康二が楽しそうに二人で出かけようとしている様子に、明らかに嫉妬を孕んだ視線を投げかけている。
(…自覚、ないんだろうな。)
彼の無自覚な独占欲を目にして、俺はめめの車が走り去るのを視線だけで追いながら、胸の奥でそう思った。
その嫉妬の種を確かに植え付けたことに少しの優越感を覚えながらも、康二の隣で《行こっか?》と笑いかけて促すと、《おんっ!》とその倍ほどの眩しい笑顔で俺の車へと一緒に歩を進めていく。
俺が抱えている感情に、康二はまだ何も気付いてすらいなかった。
すのだて⛄️🍙
47
rn
843
コメント
6件
数行読んだとこからドキドキでしっぱなしです!最高すぎます꒰ˆ꜆⸝⸝⸝⸝꜀ˆ꒱めちゃめちゃキュンキュンですありがとうございます😭♡♡

めめこじとあべこじ大好物なので、最高すぎます…🖤🧡💚 楽しみすぎる😌
雫さん、こんばんは!新作、ありがとうございます。💚🧡ですか!?めちゃくちゃ楽しみです!!