テラーノベル
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エリオットの頭はもうまともに働いていなかった。
耳元で囁かれた低い声。
近すぎる距離。
さっきの深いキス。
全部がまだ体に残っている。
心臓が速い。
ドクン。ドクン。
落ち着かない。
背中から腕まで。
細かい震えみたいな感覚。
まるで全身に弱い電気が流れているみたいだった。
チャンスはまだ近くにいる。
すぐ上。
逃げ場なんてない距離。
エリオットは息を吐く。
でも。
落ち着かない。
全然。
頭がうまく回らない。
何を言えばいいのかも。
何をすればいいのかも。
分からない。
だから。
思わず聞いてしまった。
「……チャンス」
「なんだ」
低い声。
それだけでまた胸が跳ねる。
エリオットは少し困った顔で笑う。
「俺さ」
少し間。
「どうしたらいい?」
チャンスが一瞬黙る。
エリオットは自分でも不思議だった。
何言ってるんだろう。
ほんとに分からない。
頭がぼんやりしている。
チャンスは少し眉を動かす。
「……何がだ」
エリオットはゆっくり瞬きをする。
言葉がうまく出ない。
ただ。
なんとなく。
口のあたりが妙に落ち着かない。
さっきまで触れていた感覚が消えて。
少し物足りない。
無意識に。
エリオットは自分の唇を軽く舐めた。
ほんの一瞬。
それから。
指先で口元を押さえる。
ぼんやりしたまま。
何も考えず。
ただそうしていた。
静かな空気。
チャンスはその様子を見ていた。
完全に。
固まっている。
エリオットは気づいていない。
ただぼんやりしているだけ。
でも。
チャンスから見ると。
それは——
完全に誘っている仕草。
唇を軽く舐めて。
指で押さえて。
困った顔。
エリオットはまだ考え込んでいる。
「……わかんない」
小さく呟く。
「なんか」
少し笑う。
「頭おかしい」
チャンスはまだ動かない。
ただ。
その顔を見ている。
さっきまで余裕で煽っていた男が。
今は完全に混乱している。
しかも。
本人は無意識。
エリオットはまだぼんやりしている。
「チャンス」
「……なんだ」
「ほんとに」
少し目を細める。
「どうしたらいい?」
チャンスは数秒黙った。
そして。
小さく息を吐いた。
「……エリオット」
「ん?」
低く言う。
「それ」
少し間。
「自覚ないのか」
エリオットは首を傾ける。
「なにが?」
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ゆゆゆゆ
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