「ね、レトさんってさ」
「なに」
「目、ちっちゃいよね。」
「は?」
なんて失礼なことをコイツは言うんだ。
目も合わせてない癖に。
確かに俺は俺自身でも、まぁ、ちょーっとは?小さいかもとは思っていたんですけど。
「キヨさん、何故急に?」
「え?うーん…なんとなく?」
何故疑問形。
というか、まだ目を合わせない。
質問してもキヨくんは天井の方を見上げて、そしてテレビに目を戻していた。
……暇人二人が集まって目を合わせるのもどうかと思うけど。
当たり前のことが頭をよぎり、この話は終わらせようとした。
だが、そう上手くはいかないものだ。
外は車の音が聞こえるだけでいつも通り
二人でいるときの静けさだった。
なのに空気が以上に冷たくひんやりとした空気がどこからか頬を撫でているような気がした。
この話を終わらさないと、何も解決しない
意を決して、俺はキヨくんにまた一つ問いかけた
「目も合わせてないのによく分かるな」
問いかけのつもりで放った言葉はただの普通の会話の一言。
その言葉を聞き逃していない顔で彼はぴくりと動いてゆっくりとこっちを向いた。
「…目…あってるから分かるしょ」
低い声で猫がうなるかのように目を合わせてぽつりと言う。
けど…それって…今目が合っただけじゃない…?
「キヨくん」
「…?」
「いつ気づいたの」
純粋に思ったことを今日は沢山聞いてみる。
思うままに、ありのままで。
「えー……」
「………大分前」
バツが悪そうに目を逸らす。
「…何故今なんだよ。」
「ごめん、つい。」
キヨくんは親しくなっていくごとにぽろりと本音を零してしまうことが多々あった。
それが今回起こったということだ。
「シンプルに馬鹿にされてる気がする。」
笑いそうになった声を堪えると、向こうも少し声が震えながらしゃべりかけてくる。
「ごめんって…w」
あー…駄目だ。笑いが堪えられないかも。
「ふっw」
頑張ってその息だけに笑いをこめた。
そうするといつものようなだるい雰囲気へと変わっていった。
あぁ、よかった。
けれど、レトルトさんは仕返しがしたいんですよ。
あんな失礼なことを言ったやつに。
いいよね?
ね?
そう誰かに疑問を投げて、俺は彼の名前を呼ぶ。
呼ぶと、案外素直にこちらを向いた。
じっ…と下から覗き込んでやる感じで彼の目を見る。
「ん?え、がん飛ばしてる?」
「動くな」
「え、え」
うーん…やっぱり目はでかいな…。
こう…俺と違ってぱっちりしてる…。
…コイツが比べたら俺の目が小っちゃいっていうのも…否めん…。
腹立つな…。
「ええっと…レトルトさん?」
キヨくんが訳分かんねぇみたいな笑い声をするわけでもなく、よく分からないが薄く、引きつった笑みを浮かべていた。
「あ、ごめん」
「…いや…別にいいけどさ…」
今度は顔ごと向こうに向けてテレビをまた見だした。
「あ、好きな女優さん?出てたんならほんとにごめん」
「え、あ、あぁ、そう。だけど別にいいよ。のぞみーるや豊田議員じゃねーし。」
「そっか」
「……それよりも、なに?さっきの」
「あそれね。やっぱりキヨくんの方が目、でかいなって思って」
「腹立った。」
「何で俺逆ギレされてんの…。あ…逆ギレでもないか…」
呆れたようなじとーっとした目でみてくる。
「いやー……ね?」
「ね?じゃねーのよ。」
「てか、さっきのまだ気にしてたの?」
「…人並みには」
図星で包み隠すこともできない。
「…」
「………レトさんの場合は…つぶらな瞳ってことで…」
何かぶつくさ唱えていて急に「あー!!もう!!」と小さめの声を出した。
「大丈夫?」
俺がわざわざ気にかけて聞いてやると
「…まぁ、そこそこ」
と俺の目には赤く映った顔で応えた。
fin.
ーーー
猫さんのほのぼのな片思いでした。
コメント
8件
ホンワカ可愛いすぎるて!
うわもう可愛いいいいいいいいい!!!!! え、顔覗きこむところとか最後とかくっっそかわなんだが!?
前のあーるのやつが異様に伸びててビビってます。 そんなにお気に召したのかな…。