テラーノベル
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Thawの制作秘話も。
ひと通り話し終わった頃。
テーブルの上には。
次回作の案を書き留めるための紙が広がっていた。
その前に。
佐久間と康二が並んで座っている。
二人ともさっきから妙に真剣だった。
佐久間がペンを持つ。
「とりあえず」
康二が頷く。
「うん」
「主人公じゃなくてもいい」
「せやな」
「でも」
佐久間は大きく書く。
『いっぱい出たい』
康二もその下へ書き足す。
『魔法使いたい』
「あとアクション」
「絶対いる!」
『魔法アクション』
三つ。
大きな文字が並んだ。
佐久間は満足そうに紙を見る。
「これ!」
康二も。
「ええやん!」
渡辺が向かいから紙を覗き込む。
しばらく、黙って読んだ。
「……それさ」
「何?」
「映画じゃなくてもよくね?」
二人が見る。
渡辺は呆れたように続ける。
「夢行って」
「二人で冒険してこいよ」
「魔法覚えて」
「モンスター倒して」
「好きなだけ戦えばいいじゃん」
佐久間と康二が同時に黙った。
そして、顔を見合わせる。
「……でも」
佐久間が言う。
「映画にしないと」
康二が続ける。
「わんちゃん達、ご飯食べられへんやん」
渡辺が止まる。
ココが静かに胸を張った。
モカも。
「生活」
クッキーは。
「おいも」
渡辺が三匹を見る。
「やっぱ俺らが犬の生活費稼いでるじゃん」
ココ。
「共同事業」
モカ。
「ビジネスパートナー」
クッキー。
「おいもパートナー」
「最後だけ何」
深澤が声を上げて笑った。
佐久間は気にせず紙へ向き直る。
「じゃあ冒険したやつを映画にすればいいんじゃない?」
康二の目がぱっと明るくなる。
「それや!」
「実際に冒険して」
「魔法いっぱい使って」
「それ撮る!」
「めっちゃええやん!」
ココがすぐに反応する。
「低予算」
モカも。
「実録」
阿部が。
「また異世界ほぼ無料で使う気だ」
と笑った。
そんな中。
目黒がふと、二人を見る。
「でも」
佐久間が振り返る。
「何?」
「康二と佐久間くんって」
少し間。
「魔法使えるの?」
「……」
佐久間が止まる。
康二も止まる。
二人はもう一度、顔を見合わせた。
「あれ?」
佐久間が小さく言う。
康二も。
「あれ?」
渡辺が嫌な予感のする顔になる。
「考えてなかったの?」
「いや」
佐久間は必死に思い出す。
「あの世界で俺……」
目黒が。
「勇者だったよね」
「うん」
「魔法は?」
佐久間は少し考える。
「……まずまず?」
「まずまずって何」
「ちょっとは使えた!」
ラウールが横から言う。
「でも佐久間くん、ほとんど毒針投げてたよ」
「だって強かったんだもん!」
目黒も思い出して笑う。
「俺も投げてた」
「蓮の毒針、一発で倒れるんだもん」
渡辺が。
「じゃあ魔法アクション全然できねぇじゃん」
と言う。
佐久間が。
「今から覚える!」
と即答した。
全員の視線が今度は康二へ移る。
康二が自分を指差す。
「俺?」
「康二は?」
深澤が聞く。
「前の冒険で何だった?」
康二はしばらく考える。
そして。
「あ」
と言った。
「俺、あべちゃんが魔王やった時」
少し間。
「旅してへんわ」
一瞬、静かになる。
阿部が。
「あ、そうだ」
と頷く。
目黒も。
「いなかったね」
佐久間が。
「じゃあ康二」
康二を見る。
「職業すらない?」
「……ないな」
「レベルは?」
「知らん」
「魔法は?」
「使ったことない」
渡辺が紙を見る。
そこには大きく。
『魔法使いたい』
『魔法アクション』
と書かれている。
「計画破綻してんじゃん」
「まだや!」
康二が勢いよく立ち上がる。
「聞けばええ!」
「誰に?」
「魔王!」
全員が康二を見る。
「魔王に?」
阿部が聞く。
「うん」
康二は当たり前のようにスマホを取り出した。
目黒が。
「電話できるの?」
「できるで」
「魔王に?」
「うん」
渡辺が。
「何でそんな普通に連絡先持ってんの」
と呟く。
康二はもう電話をかけていた。
数回。
呼び出し音。
そして。
『もしもしー?』
聞き覚えのある。
のんびりした声。
康二の顔がすぐに明るくなる。
「魔王ー!」
『康二!』
「今大丈夫?」
『大丈夫だよ』
少し間。
『次のお供え?』
「ちゃうちゃう」
『旅行?』
「また行こな」
『行く!』
渡辺が。
「仲良すぎだろ」
と小さく言う。
康二は電話をスピーカーにした。
「聞きたいことあんねんけど」
『なぁに?』
「俺、あの世界で魔法使いたいねん」
『うん』
「どうしたらええ?」
魔王は少しだけ考えた。
『神殿行って』
「うん」
『魔法使いに転職』
康二が。
「転職?」
『そう』
佐久間が横から身を乗り出す。
「俺もできる!?」
『佐久間くんも?』
「俺も魔法いっぱい使いたい!」
『じゃあ二人とも転職すればいいよぅ』
康二と佐久間が顔を見合わせる。
「簡単なん?」
康二が聞く。
『簡単だよ』
『神殿でお願いしたら変えてくれる』
「おお!」
佐久間がもう嬉しそうだった。
「じゃあすぐ行こう!」
ところが。
魔王は続ける。
『でも』
二人が止まる。
「でも?」
『今、魔物いないよ』
「……え?」
康二が聞き返す。
『あべちゃんが平和にしたから』
目黒が少し嬉しそうになる。
「あべちゃん」
渡辺が。
「今そこ喜ぶとこじゃない」
と突っ込む。
魔王はのんびり続ける。
『モンスターほとんど人化したし』
『普通に町で働いてるし』
『野生の強い魔物もかなり減ったから』
佐久間の顔が少しずつ曇る。
「じゃあ」
「レベル上げどうするの?」
『修行』
「誰と?」
『誰か強い人』
「誰?」
魔王が少し考える。
『目黒くんとか』
目黒が。
「俺?」
と反応する。
『闇落ち勇者だったし、強いよ』
「まあ」
阿部が横から。
「めめ、ちょっと嬉しそう」
と言う。
「嬉しくないよ」
「顔」
目黒が少しだけ口元を隠す。
魔王はさらに言う。
『舘さんとしょっぴーでもいいんじゃない?』
渡辺が。
「俺?」
『二人とも前に勝手に強い魔法使ってレベル上げてたでしょ』
宮舘が。
「あれ覚えてるんだ」
と笑う。
佐久間が。
「それ初心者に教える人じゃない!」
と慌てる。
「最初から強い魔法使う人たちじゃん!」
渡辺が。
「効率いいよ」
「死ぬわ!」
そのやり取りを。
電話の向こうで聞いていた魔王が。
楽しそうに笑った。
『じゃあ』
少し間。
『俺が手伝ってあげる』
康二が。
「え?」
『修行』
「魔王が?」
『うん』
魔王は当然のように答える。
『康二、友達だから』
康二が一瞬、黙った。
そしてぱっと笑う。
「魔王ー!」
『何?』
「ええやつやなぁ!」
『知ってる』
渡辺が。
「自分で言うんだ」
と呆れる。
魔王はさらに。
『佐久間くんも一緒でいいよ』
佐久間が。
すぐに電話へ寄る。
「本当!?」
『うん』
「俺も友達!?」
『康二の友達』
「間接的!」
深澤が吹き出す。
魔王は楽しそうに続けた。
『二人とも神殿で魔法使いになって』
『そのあと俺のところ来て』
『基礎から教えてあげるよぅ』
佐久間の目が輝く。
「攻撃魔法!」
『いいよ』
「炎!」
『いいよ』
「雷!」
『いいよ』
「氷!」
『いいよ』
康二も。
「俺もいっぱい覚えたい!」
『覚えればいいよ』
ココが横から。
「撮影」
モカも。
「全部撮る」
渡辺がすぐに二匹を見る。
「もう映画にする気じゃん」
ココが当然のように。
「修行編」
モカ。
「成長物語」
クッキー。
「おいも休憩」
「休憩まで入れるの?」
康二は電話の向こうの魔王へ。
「いつ行けばええ?」
と聞く。
『いつでも』
「じゃあ今度行く!」
『待ってるよ、康二』
「お土産持ってくな!」
『マカロン』
「指定するん?」
『この前おいしかった』
「分かった」
電話が切れる。
しばらく。
みんな康二を見る。
康二がスマホを置く。
「よし」
佐久間も拳を握る。
「決まった!」
二人で顔を見合わせる。
「魔法使いになる!」
「修行する!」
「いっぱい魔法覚える!」
「アクション撮る!」
ココ。
「映画化」
モカ。
「興行収入」
クッキー。
「おいも」
渡辺が深くため息をついた。
「結局映画になるんじゃん」
阿部は笑いながら二人を見る。
「でも」
「何?」
佐久間が聞く。
「魔王に修行つけてもらうって」
少し間。
「かなり嫌な予感するよ」
目黒がすぐに頷く。
「俺も思う」
康二が不思議そうに首を傾げる。
「なんで?」
目黒と阿部が顔を見合わせた。
あの魔王。
親切ではある。
悪い存在でもない。
ただ。
かなり自由。
「……まあ」
阿部が笑う。
「行けば分かるんじゃない?」
佐久間はもう楽しそうだった。
「楽しみ!」
康二も。
「俺、何魔法得意なんやろ!」
テーブルの紙。
『次の映画』
その下に。
佐久間が新しく書き足す。
『魔法修行』
康二も横へ。
『魔王先生』
渡辺がそれを見る。
「その時点でもう普通の修行じゃないじゃん」
誰も否定できなかった。
コメント
3件
おいも休憩(わらっ)クッキー最高かよ😆干し芋なんてどうだろう!!
朝からクッキーに爆笑させてもらいました(≧∀≦) ブレない発言、クッキー❨おいも❩もしもクッキーのファンクラブがあったら入会したい、会費はやっぱり、おいもかな?(≧∀≦)
みらさん、読ませていただきました〜! もう、康二くんと佐久間くんのテンションが可愛すぎます(笑)「魔法使いたい!」→「使える?」→「あれ?」の流れが完璧で、思わず声出して笑いました。それにしても魔王との電話…「友達だから」って言える関係、尊すぎませんか?「間接的!」って佐久間くんにまで優しい魔王、好きです。 わんちゃんズの「おいもパートナー」と「低予算」「実録」の絶妙な合いの手も、完全に良い味出してますね。三人ともちゃんと物語に組み込まれていて、ただのマスコットじゃないのがまた良い。 修行編、めちゃくちゃ楽しみにしてます!次話も絶対読みに行きますね🌷
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kaede🍁
8,909
#💛💜
みら

7,129