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「驚いた…赤谷蓮…どおりで計画通りに事が運ばない訳だ…」
黒いローブの謎の男は自分の椅子に座りこみ不敵に笑っている。
「奴の呪いは脅威だ…一刻も早く殺さなくてはいけませんねぇ…ふふふ」
そして…
赤谷蓮は夢から覚める。
「ん…うぅ…」
力を使い過ぎたせいでかとても気分が悪い。
なんとかベッドから起き上がり、洗面台へ向かう。
顔を洗い、リビングへ向かうと、蓮の父と母、そして、黒岩竜一の父と母が4人で話をしている。
「お、蓮よ、おまえもこっちにきなさい。大事な話がある。」
父が蓮を手招きし、蓮はリビングの椅子に座る。
「ついにやつが動きだしたか…」
黒岩竜一の父、黒岩正輝が話しだす。
奴らとは誰のことだろうか。
赤谷蓮はなんの話をしているのか問う。
「蓮くん。君達クラスメイトの死についてだ」
黒岩正輝は立ち上がり、窓の外を見て話しだした。
「あれは約30年前の話。俺達4人が高校生のころだ。」
黒岩正輝、そしてその妻、黒岩成美。
赤谷冬夜、そしてその妻、赤谷陽菜。
私達が高校生の頃、クラスメイトが毎日1人ずつ死んでいった。
我々は夢の謎を自分達で解き明かし元凶をやっとの思いで見つけた。
その元凶の正体は、同じクラスメイトのドイツからやってきた留学生だった。
名前は(キラード・エヴァンス)
ドイツでは大量虐殺をし、日本にきて俺達4人とあと2人のクラスメイト以外は全員そいつに殺された。
その2人は今は警察官をしている。
キラード・エヴァンスは夢の中で何人もの人を殺し、法には罰せられず誰も助けてはくれなかった。
自分達だけで立ち向かうしかなかったのだ。
赤谷蓮は驚き、席を立ち黒岩竜一の父に問いかける。
「じゃ、じゃあ、夢の中の怪物はなんなんだ!」
父と母、そして黒岩家族の2人は驚いた顔で赤谷蓮のことを見つめる。
「蓮、怪物ってなんのことだ…」
親達はなんのことかまったく理解できていない。
「私達が学生の頃に戦っていたのはその殺人犯だけだぞ。」
赤谷蓮達が今まで戦ってきた怪物はなんなのか。
わからないことが多すぎて頭が混乱しそうになる。
だがおそらく、あの黒いローブの謎の男は、その殺人犯なのだろうと確信に迫った。
「竜一は必ずあの屋敷の中にいる…」
黒岩正輝は拳を握り締める。
親達は館のことは、ある程度の事情は把握しているみたいだ。
「我々みんなで必ず竜一を助けよう!」
親達は覚悟を決め、ここから4時間も離れているあの館に向かう。
「蓮…お前は危ないから家にいるんだ」
父に言われ赤谷蓮は渋々と家で待つことになった。
だが何かすごく胸騒ぎがしている。
「みんな…」
赤谷蓮は皆んなが帰ってくるのを信じ、時が経つのを待った。
そして4時間が経過した…
屋敷へ着いた赤谷冬夜、赤谷陽菜、黒岩正輝、黒岩成美は正面玄関から入る。
「懐かしいな…何も変わっちゃいない…」
玄関ホールは入ると4人は高校生だった頃の嫌な記憶、そして死んだ13人の仲間達のことを思い出す。
するといきなり、2階の牢屋がある右の扉が開いた。
「いけませんねぇ。勝手に人の家に侵入しては…」
姿を現したのは黒いローブを被ったキラード・エヴァンスだった。
「俺の息子をどこへやった!!」
黒岩正輝がキラード・エヴァンスに問いかける。
「彼は素晴らしい。実に興味深い。なんの力もないのにここまで生きてこれた生命力…彼は今は牢屋の部屋の奥の実験室ですよ。」
黒岩正輝は怒りが限界まで達した。
拳を握り締め、キラード・エヴァンスに殴りかかろうとするが、あまりにも早すぎる抜刀術で黒岩正輝の左腕を切り落とした。
「ぐあっ」
他のみんなもキラード・エヴァンスを抑えようとするが、彼の動きはまるで獣のように素早く、捕らえることができない。
「成美!先に実験室へ行くんだ!!」
黒岩成美は隙を見て、階段を登り実験室へと向かう。
「ぐぁぁぁぁぁぁぁぁあ」
実験室へ入ると、実験台の上で黒岩竜一は拷問器具で眠らないように取り押さえられ叫んでいる。
「竜一!?」
竜一を取り押さえている器具を慎重に取り外す。
竜一は何日間も寝ていないのか、精神崩壊を起こしていた。
「あぁ、あぁあ」
黒岩成美は竜一の状態を確認し担いで、実験室をあとにする。
玄関ホールへ戻ると他2人はボロボロだが、なんとか赤谷冬夜がキラード・エヴァンスを取り押さえていた。
「竜一を担いで先に帰るんだ!!」
黒岩正輝は今度こそこの戦いに終止符を打つつもりだ。
「みんな待ってるから!」
黒岩成美は黒岩竜一は担ぎ、この屋敷を出る。
「さぁー、今度こそお前ら一族の野望もおしまいだ。これで俺達の息子達も最悪の夢を見ずに済む。」
黒岩正輝は左腕を失っているのにも関わらず、平常心を保っている。凄まじい精神力だ。
「相変わらずあなた方は化け物ですねぇ…何年たってもあなたたちには敵いませんよ…」
キラード・エヴァンスは負けを認めたのか全身の力を緩める。
「今度は何が目的なの!?なんで30年前のことを繰り返すの??」
赤谷陽菜がキラード・エヴァンスに質問する。
するといきなりキラード・エヴァンスは笑い出す。
「新時代がくるんですよ…新たなる神の誕生です」
すると次の瞬間、赤谷冬夜と黒岩正輝は力が抜け、倒れ込む。
「なっ…なんだ…力が抜け…」
よく見るとキラード・エヴァンスの刀には毒のようなものが塗られている。
「やっと効いてきたようですねぇ…ふふ、」
キラード・エヴァンスは大きく刀を振り上げる。
その頃…家でずっと両親の帰りを待っていた赤谷蓮の家に、橘美香がきていた…
橘美香は次は自分の番じゃないかと怖くなって、前回夢を生き延びた赤谷蓮にどのような感じか話をしにきたみたいだ。
赤谷蓮はノートを取り出し、夢の中の屋敷がどのような構造か簡単に地図にして書いてみる。
赤谷蓮はまだ2回しか夢を見ていないので、まだ完璧に覚えているわけではない。
LINEの方にも残りのみんなと情報共有し、
怪物の特徴や弱点など、細かいことを教えてくれた。
橘美香は一つ気になったことがあったので聞いてみる。
黒岩竜一と高橋れなと中野さきが遭遇した地下にいた20体ほどの合体する怪物、変身する怪物、煙の怪物、髪の怪物、腕がドリルの怪物、空間捻れの怪物、無音の怪物
そして赤谷蓮が図書室の奥の隠し通路で見た13体の怪物達の子供の絵…
怪物は全てで13体いるのではないだろうかと赤谷蓮に問いかける。
いや違う。怪物の能力が恐らく13の能力なのではないか…
まだわからないが、怪物達は全ての能力を共有して使うことができるのかもしれない。
そして、今わかっているのはまだ7の能力だけ。
あと6つも私達の知らない能力がある
赤谷蓮も自分の呪いの力はまだ完全に制御できないでいる。
赤谷蓮は窓の外を見て溜め息を吐く。
「なんで…こんなことになったんだろう…」
一体誰が何の為にこんなことを始めたのかまだわからないが、もうすぐそこまできている気がする。そう、真実が…
「美香、必ずみんなで脱出しよう」
少し怯えている橘美香を安心させる。
「誰も死なせはしない。みんなを守るんだ…」
赤谷蓮の眼の奥から熱い思いが伝わってくるのを感じ、橘美香は少し落ち着く。
いろんな情報を聞け、外も少し暗くなってきたので橘美香はそろそろ帰ることにした。
赤谷蓮の家を後にし、家に帰る。
帰る途中、反対方向から1人の女性が見えてきた。
「あれは…」
近づくと、なんと木下真里が道路の真ん中で自殺しようとしている。
「なにしてるの!!」
橘美香はすぐさま木下真里の手を引っ張り自殺を阻止する。
「なんでこんなことしてるの!?危ないでしょ!」
木下真里の顔を見てみると、彼女は涙を流していた。
「なんで泣いてるの?」
木下真里に質問すると、涙を拭ったあと話しだした。
警察署へ連れて行かれた後、警察から木下真里が黒岩竜一を襲ったと全く身に覚えのないことを長時間事情聴取されたらしい。
だが辻褄が合わないことが多々あり、証拠不十分で解放された。
「私は…竜一君を…」
木下真里が何か言いかけたところで、強い風が急に吹き、何を言ったのか聞こえなかった。
「ありがとう…必ず…生きて…」
木下真里は背を向け、自分の家へ帰っていった。
橘美香も彼女を見届けた後、自宅へ帰り就寝することにした。