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童話事件簿

5 - 第5話

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2025年01月27日

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〜冬磨〜 今はとあるカフェで粋雪さんと事件について話をしている。情報を整理してみよう。まず被害者は童話の登場人物と酷似した死に方をしている。必ず近くには元になったであろう童話の本がある。俺たちが立ち合った現場にあった本は梶ノ木図書館なる図書館のものだった。この梶ノ木図書館に秘密が隠されてることは間違いない! ……が。そこから情報が全く進まない。

「冬磨さん!」

 粋雪さん。ずっと黙っていたからビックリした。心臓を刺されたのかと。ずっとパソコンとスマホで事件のニュースを調べてくれていたらしい。

「調べると、色んな人たちが情報発信してるよ。やっぱり現場の近くには梶ノ木図書館の本が落ちてるみたい。しかもこれ見て」 

 スマホを見せてくる。これは……梶ノ木図書館のホームページ?

「盗難が相次いでるみたい。昔は検索でヒットしたはずの本がしない。借りられないからとりあえずで消してあるのか知らないけど……恐らく盗んでる奴が……」

 犯人かもしれない。ヘタレとは思っていたことはなかったがが、意外と有能? こちらも準備満タン。さあいざ行かん。では行こう。行き方はマップを見れば分かる。行こう。行けば何か新しいことが分かるかもしれない。多分。行こう。

 翌日。ここが梶ノ木図書館だ。まさか俺が通っていた高校の近くとは知らなかったが。やっとついた図書館。本人に聞くのが一番早い。図書館の中へ向かおう。

「珍しい。こんな小さい図書館に新しいお客様が」

「こんにちは」

「ここの司書です。ようこそ」

「ここの司書補です」

「雛乃冬磨です。えっとこっちは……」

 粋雪さん? 辺りを探すともう入ってすぐの童話のコーナーに見入っていた。静かだが、見えない尻尾が揺れているようだ。

「本借りにきたんじゃないんだよ!(小声)」

「図書館は本を借りるところっ!(小声)」

「本を借りにきたんじゃない?」

「ああ司書さん。俺たち、客じゃないんですよ。最近、妙な連続事件が流行っててこちらの本が現場から必ず発見されていましてですね」

 やはりこうなるのか。

「しかも本は全て盗まれたもの。話、聞かせてもらっていいですか?」

「いや……足取りは全くつかめてなくて……」

 駄目だ、全く要領を得ない。図書館の人たちの間でもかなり困っているらしい。俺たちがGメンにでもなってやろうか。そんなことをしている内に犠牲者がどんどん出てしまう。何かないか?

「そういえば元になった話が元になった話だからエグい事件あったよ」

 久々に粋雪さんが口を開いた。

 〜粋雪〜

 冬磨さんが話している内に起きてしまったものだ。

「桃太郎か」

「これはよく知られてる方じゃなくて芥川龍之介が書いたものみたい。そっちでは何故、桃太郎が桃から生まれたのかとか結構、答え合わせされてるよ」

 桃太郎という物語の出自は所謂『諸説あり』らしい。やっぱり芥川龍之介の桃太郎の一番の魅力は描写の細かさだろう。まず桃太郎が鬼退治に行くことになったのもあんまり仕事を嫌がるもんだからおじいさんとおばあさんが愛想尽かしたからだ。犬と猿は仲悪いし。

「これが本当の犬猿の仲ってか」

「随分、上手いことを」

 恐るべき、冬磨さんのツッコミ力。雉は本当に桃太郎の言うことをよく聞くし。鬼ヶ島もここでは南国みたいに描かれている。「鬼との戦い方にも性格出てるのよ。犬と雉は残虐すぎるし、猿なんてもう陵辱してるからね」 

「なんかもうどっちが悪者か分かんなくなっちゃうよね」

 悪に振り翳される悪は善……ということなのだろうか。

「ところでなんだけど」

 少し私が好きな考察の話をしてみよう。

「冬磨さんはここまで話を聞いて鬼退治って何かに似てるなーって思わなかった?」

「何かって?」

「……戦争」

「……は?」

 原作の原作は芥川龍之介のこれ以上に暴力とエロスにまみれていたので教科書に載せるとなった時に改編されたのだ。戦争について幼い内から思想を植え付けようとしてたことになる。そういうことに反対してた人もいたらしいけれど、戦時中に戦争批判はリスキーすぎるから。皆が皆、戦争に肯定的だったわけではないし、皆が皆、否定的だったわけでもない。でも芥川龍之介は戦争を批判していたらしい。それでも桃太郎が日本一有名な物語になっているのも事実。

 〜冬磨〜

「うーん。なんか戦争ってみんなでやっちまえーっ! うおーっ! みたいな感じだと思ってたけど、そうでもなかったんだね」

「さ、最初に言い出したの私だけどあくまで最初に言ったとおり『諸説あり』だからね」

「ちょっとは安心していいのかな」

「とにかく放っておいていい問題ではないことはご理解ください。そうだ。何が盗まれてるかだけ聞いていいですか? 何かのヒントになるかもしれないので」

「えっと……」

「ありがとうございました」

「私たちでもう少し調べてみますので」

「ありがとうございます。助かります」

 あちらにも色々と調べておいてもらうことを約束して、ノートにメモをして今回は帰った。白雪姫……シンデレラ……ピノッキオの冒険……ラプンツェル……ちゃんとネットに上がっている情報と一致している。本当に調べればなんでも出てくるんだな。恐るべき情報化社会。粋雪さんに情報収集力。まさか桃太郎まで事件に利用されるとはなー。童話に共通点のようなものはあるのだろうか。あるいは無差別か。あの図書館のためにも犯人は見つけなければならない。責任重大だ。しかも童話なんてほとんど知らないに等しい。そこは粋雪さんがいてくれているから心配はしていないが……そういえば本が盗まれまくっているのにここの館長は何してんだ!

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