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「車……なんですね」
思わず口をついた言葉に、
「何か、問題でも?」
彼が眉をひそめ、どこかムッとしたようにも感じられる顔つきを見せた。
「い、いえ、そんなわけでは……」
機嫌を損ねたようにも窺えて、身をすくませる。
「なら、早く乗ればいい」
と、彼が横目にちらりとだけ、私の顔を一瞥する。
これではいくら場を取りつくろってもしょうがないような気がして、この顔合わせを早々に終わらせてしまった方がいいように思えた。
助手席に乗り込むと、運転席の彼は前髪が目にかかるラフなヘアスタイルで、ネクタイこそしていなかったがスーツを着ていた。
「あの……今日の午前中は、お仕事だったんですか?」
身体にぴったりとマッチした揃いのダークブルーのスーツを、仕事帰りだからなのかなと思いつつ見つめた。
「いや、今日は休みだが」
「休み……」と、一瞬面食らう。
「どうして休日にスーツに車で……?」
湧き上がった疑問がつい口からこぼれると、
「休日にスーツは、おかしいのか?」
こちらをバッサリと切り捨てるかのように、そう訊き返されてしまった。
重たい空気が流れる中で、会ってまだ間もなくではあったけれど、出足からぶっきらぼうにも思える振る舞いも手伝って、この人とは残念だけれど価値感も含めちょっと合わないかもと感じた……。