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「フイー、どうした?何を考えてる?」「リアム、手を洗ってきたの?じゃあ食べようか」

「ああ」


リアムが僕の頬にキスをして椅子に座る。

僕もリアムと向かいあうように座って、パンを手に取った。


「で?何を考えていた?」

「気になるの?」

「気になる…」

「ふふっ、リアムは心配性だねぇ。ラズールと別れた日のことを思い出してたんだよ」

「なるほど。でも懐かしくもなんともないだろうが。アイツ…ひと月に一度は必ず来るからなっ」


リアムがパンを勢いよく噛みちぎって、苦々しげに言う。

そうなんだ。感動の別れをしたのに、この二ヶ月の間にラズールは二度、家に来た。ゼノも二度来たけど、ラシェットさんからの荷物を届けに来てくれてるし距離も近いからいいんだ。でもラズールは、国境を越えるし往復の日にちも考えると大変だと思うんだ。そんなことをしていて職務をこなせてるのか心配になるんだ…。

僕はスープを飲み、スプーンを皿に戻してリアムをチラリと見る。


「ん?大丈夫だぞ。フィーには怒ってないからな?」

「うん…あのね、さっき手紙が届いて…」

「うん?」

「今日も来るんだって」

「…誰が」

「ラズールが…」

「はあ?」


ガタン!と椅子を鳴らしてリアムが立ち上がった。衝撃でスープがこぼれそうになる。


「リアム、落ち着いて」

「アイツ…アイツ!素直に国に戻ったと思ったが、とことん俺とフィーの生活を邪魔するつもりだなっ?」

「リアム」


僕は立ち上がり、机を回ってリアムの傍へ行く。そしてギュッと抱きついた。


「僕だって、いつもリアムと二人きりでいたいよ…。そのうちラズールも、だんだんと来る回数が減ってくると思うんだ。だから…もう少しだけ我慢して…お願い」

「フィー」


リアムを見上げると、ふっ…と笑って僕にキスをする。


「そうだな。ラズールはおまえの大切な人だ。俺の心が狭かった」

「ありがとう。それにね、今回はここには少しだけ寄って、すぐにラシェットさんの所に行くみたいだよ」

「伯父上の所に?ふむ…何用だろうか」

「詳しくはわからないけど。何日か滞在するみたいだし、僕達もラシェットさんに会いに行かない?」

「そうだな。伯父上に顔を見せに行くか」

「うん。でも…明日にね」

「ん?ラズールと一緒に行かなくていいのか?」

「ん…だって、今夜は…あの日…でしょ」

「あ…ああ!」


リアムがパッと目を輝かせた。

僕は熱くなった顔をリアムの胸に埋める。

僕とリアムは、身体を繋げる日を決めている。毎日は僕が辛いだろうからと、三日おきにすると決めている。もちろん三日待てなくて、したくなったらするんだけど…今日は前にしてから三日目の日なんだ。

リアムに耳を触られて、思わず肩をすくめる。


「くすぐったい…」

「フィーはかわいいなぁ。どうする?最近は暑くなってきたし庭で…」

「しないよっ、なに言ってるの!」

「ええ?昼でもノア以外は誰も来ないから夜はなおさら大丈夫だろ?」

「それでもっ…ダメだか…んっ」


リアムに顎をすくわれ、注意をしようと開いた唇を塞がれた。口内で舌がからまるクチュクチュという音が耳に響く。

こんな激しいキスをされたら、頭と身体がとろけて変になる。もうすぐラズールが来るのに、何をしてたかバレてしまう。


「んぅ…んんっ」

「あっま、おまえはいつも甘いな」

「うう…果物のせいだよ…」

「違う」


リアムが僕の頬をするりと撫でて、華やかに笑う。

眩しい笑顔に目の前がクラクラとする。そんな顔を見せられたら、何でも言うことを聞いてあげたくなるじゃないか…。

僕は慌ててリアムから離れると、残りの料理を平らげて後片付けをした。



僕とリアムの小さな家には、二階に小さなバルコニーがある。そこにシーツを干していると、馬のひづめの音が聞こえてきた。

僕はバルコニーの手すりから身を乗り出して「ラズール!」と叫ぶ。

軍服ではなくシャツにベストとズボン、ブーツ姿のラズールが、僕に気づいて笑った。


「危ないですよ」

「大丈夫!いま降りるねっ」

「ゆっくりでいいですよ。階段から落ちないように」

「そんなヘマしないからっ」


僕は身をひるがえすと、急いで中へ入り階段をかけ降りた。

頻繁に来るラズールに困ってはいるけど、やはり会えることは嬉しい。ラズールの顔を見ると安心する。

あまりにも気が急きすぎて、階段を降り切る直前で足を踏み外した。


「あっ」

「おっと」


落ちると思い固まった僕の身体を、リアムが力強く受け止めてくれた。

僕は激しく鼓動を打つ胸を押さえてリアムを見上げる。


「…ありがとう」

「ん、無事でよかった。気をつけろよ」

「うん」


リアムが笑って僕を立たせ、頭をポンポンと撫でる。

リアムは優しい。すごく優しい。かっこよくてキレイで優しくて、本当にどうして僕と結婚したの?って今でも不思議に思う時がある。

僕がリアムを見つめていると、リアムが小さく首を傾けた。


「どうした?早く行かなくていいのか?ラズールが到着したのだろう」

「うん。リアムも一緒に」

「ええ…。会わなきゃダメか?」

「うん、ダメ。ラズールはあんな態度だけど、リアムのこと結構好きだと思うんだ」

「…いやいや、それはないだろ」

「だってリアムもラズールのこと、気に入ってるでしょ?」

「まさかっ」


リアムが全力で首を振る。

僕は笑ってリアムの手を引き玄関へ向かう。

ほんと、二人とも素直じゃないんだから。僕を間に挟むから、いがみ合ってばかりいるけど、二人きりで話すと、きっと気が合うと思うんだ。リアムは僕の伴侶だし、ラズールは僕の家族だから、リアムとラズールも家族だよね?

でもそれを言うと二人は怒りだしそうだから、今はまだ言わないけど。




銀の王子は金の王子の隣で輝く

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