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あれから、目黒くんは母親のお金を盗み取っているという。ダメだと分かっているが、母親の遊びに消えるよりも、自分の生活費に費やした方がいいと思ったらしい。
でも、バレるのは時間の問題。お金、貸そうかな…
いや、ダメ!ダメに決まってるだろ!教師と生徒、個人的な関わりを持ってしまったらいけない。それは、例え同性であったとしても。
ピロリロリン
自宅のソファに寝転んで考え事をしていると、スマホの通知音が鳴った。
mg「明日の放課後、家に来れますか?少し相談したいことがあって。メールじゃなくて直接話したいです」
何の相談だろうか。メール上では面倒なことになるからだろう。内容を確認したいところではあるが、せっかく心を開いてくれたのに、断る訳にはいかない。
ab「分かった。着いたら連絡するね」
明日は授業が15時に終わる日課であるため早く切り上げることが出来る。また、週末でもないため会議や資料の整理などもないので急げば17時には終われる。
了解の連絡をして、明日に備えて早めに寝ることにした。
翌日
ガチャ
mg「ありがとうございます。来てくださって」
ab「ううん。大丈夫」
mg「上がってください」
ab「お邪魔します」
バイトを辞めたからか、時間に余裕ができて家の中も以前より片付いている。
だが、反対に、電気は付けいておらず、食材もほとんどなかった。おそらく、節約するために少しづつ消費量を減らしたのだろう。
安心と、申し訳ない気持ちが頭と心の中を交錯する。なんといえばいいのだろうか。
mg「それで、相談なんですけど」
ab「うん」
俺が気にしていることを知らずに、目黒くんは本題を切り出した。
mg「陽はまだ小学生で、俺は高校生。陽は義務教育だから学校に行かせたいんですけど、教科書が無償だったり、授業料がないと言えど、お金はかかるじゃないですか。そしたら俺が、高校辞めて働いて、少しでもお金を稼いで陽を学校に行かせるほうが良いんじゃないかって思うんです」
なるほど。自分の人生を犠牲にしてでも、弟の人生を豊かにするという選択を考えていると。家族思いで、根っからの優しい青年なんだろう。
ab「目黒くんは?どうしたいの?」
mg「えっ?」
ab「どうするべきかより、どうしたいのかが大事だと思う。目黒くんの人生は目黒くんだけのものなんだから」
mg「俺が、どうしたいか…」
目黒side
今を生きることに精一杯で、未来とか、夢とか考えたことなかった。
前に、先生に将来の夢を聞かれた時、すぐに答えられなかった。その時はホストの奴らから仕事に誘われてて、どうすればいいんだろうって思ってた。
でも、バイト辞めて、本当に自分の将来を考えなければならないときが来た。俺がどうしたいか…
俺は、先生と出会って………あっ、
mg「先生、俺…」
ガチャ
えっ?誰?俺も陽も先生も、今この家に帰って来る人なんていないのに……まさか。
母「蓮!最近、近私のお金勝手に取ってるでしょ!って、誰ですか?」
俺の母親、いつもはこの時間に帰ってくるはずないのに。俺がお金取ってるのを知って押しかけて来たんでしょう。
派手なメイクに派手なワンピース、明らかに夜遊んできましたっていう格好。色んな男に貢いで、俺のことは無視なのに。
ab「あっ、目黒くんの担任教師の阿部です」
母「教師?もしかして、蓮を学校に行かせようとでも?辞めてください。蓮は働かせますので」
その言葉を聞いて、心の中に靄がかかった。さっきまで陽のために働くことを考えていたのに、こんな母親から言われるとさせられる感が拭えなくて、「何でお前のために働かなきゃいけねーの?」「俺の人生勝手に決めてんじゃねーよ」って思う。
ab「説得じゃないです。目黒くんが元気かどうか見に来たんです」
母「それでも帰ってください。今から親子の話をするので」
ab「お金のことですか?」
母「はぁ!?蓮、この人に言ったの!?」
言ったのってなんだよ。聞かれちゃダメなやましいことがあるなら、そんなことにお金を使うなよ。
mg「悪かったかよ…先生に相談して!何が悪いんだよ!」
母「私はあなたの母親なのよ!!」
mg「そんな急に母親ヅラすんな!」
言いたいことちゃんと吐き出した。今まではごめんなさいって謝ることしか出来なかったのに、先生に出会ってから、俺の人生が明るくなって、こんな親に人生を踏みにじられたくないって思った。
母「あなたみたいな子、もういらない!」
母は、机に置いてあったペン立ての中からハサミを取り出して、俺に刃先を向けて襲いかかろうとした。咄嗟に目を閉じて、せめて腕にと、腕を自分の顔を覆い隠した。
が、どれだけ経っても痛みがない。恐る恐る目を開けると、俺の目の前には背中があって、その人の手は、ハサミを握っていた母の手を制止していた。
mg「先生…」
ab「自分の子に手を出すなんて、最低な親ですね」
母「…は?」
ab「目黒くんは、目黒くんの人生を生きてます。あなたのものじゃない!」
その言葉、俺が一番聞きたかった言葉だった。親にこき使われ、一体自分が誰なのか、誰の人生を生きているのか、分からなくなっていた。
それを、ちゃんと教えてくれたのは先生だった。嫌だった教師から、俺は救われた。
その後、母は殺人未遂で逮捕された。やっと、やっと解放される。地獄みたいな生活から逃れられる。
しかし、その一方で、困ったこともある。本当に収入がなくなるということだ。これからどうすれば良いんだよ。
ab「目黒くん、これからどうする?」
mg「まだ、よく分かんなくて…」
ab「学校には伝えておく」
mg「えっ?」
ab「今回は、目黒くんは被害者だから。しかも、親がいなくなったのなら、対応しなきゃいけないからね」
mg「分かりました」
ab「ごめんね、こんな現実じみた話して」
mg「いえ。なんか、俺も納得っていうか、驚きはないっていうか。こういう日が来るんじゃないかって思ってましたから」
ab「そっか」
mg「だから、今心配なのは陽なんです。これからどうやって生活していこうかなって」
ab「うーん…俺じゃ力になれないからなぁ」
mg「そうですよね…」
ab「お父さんは?」
mg「倒産して、離婚した後、事故で亡くなりました」
ab「そう、なんだ…なんか、ごめんね、辛いこと話させちゃって」
mg「全然、大丈夫です」
ab「ありがと。じゃあ御親戚は?」
mg「居ますけど、地方で。しかも、あんな両親の親戚に預かられたくないので」
ab「そうだね。うーん…なら、手立ては1個しかないかな」
mg「えっ?」
ab「施設」
mg「施設…」
ab「目黒くんが嫌なら全然良いんだよ!ただ目黒くんの将来を考えると、道が開けるのはこれが最終手段だと思う」
mg「施設か………いいかも」
ab「えっ?」
mg「だって、今より快適な暮らしが出来るでしょ?」
ab「ふふっ、そうだね笑」
阿部side
施設を提案するのは避けたかった。施設に対して少し抵抗を感じる人もいるから。それでも、一度言ってみた。いや、言うしかなかった。最初は、嫌がられると思っていた。
でも、目黒くんは案外すんなり提案を受け入れた。きっと、苦しい生活を経験したからこそ、施設のほうが安心だと判断したのだろう。俺も、これで目黒くんの生活が少しでも豊かになるのなら、それでいいと思った。
数日後
mg「すみません、うちに来てくれませんか?話したいことがあって」
目黒くんの連絡を受けて、目黒くんの家に向かう。おそらく、緊急の連絡だろう。
ガチャ
mg「どうぞ、中へ」
ab「お邪魔します。それで、話したいことって?」
mg「実は、施設のことなんですけど、支援を受けて陽は入居できることになったんですけど、制度上、高校生は施設と国の支援金で一人暮らしをするようになってるみたいで」
ab「なるほど」
mg「俺は入居出来なくて、でも陽と離れたくなくて」
ab「うーん…」
mg「だからといって、陽をここに留まらせることは、陽に不自由な思いをさせると思うんです」
ab「じゃあ、何かを妥協しないとだね」
mg「うぅ…」
ab「ベストは無理かもしれない。でも、ベタならいけるんじゃない?」
mg「ベタ?」
ab「うん」
『一人のベストより、皆のベタじゃない』
俺の大切な人の言葉だ。これが口癖と言っても過言ではない。俺は、その人の言葉に何度も救われてきた。
mg「先生、俺、一人暮らししようと思います。それで、陽は施設に入居させます」
ab「分かった」
確認もしない。多分、もう一度聞いたら、気持ちが揺らぐと思うから。一度決めたことは変えないほうがいい。
それから、陽くんは施設に入り、目黒くんは生活補助を受けて一人暮らしを始めた。しかし、まだ高校には来ていない。
このときの俺は気づいていなかった。目黒くんが学校に来ないのは、
来れないんじゃなくて、来たくない
ということも要因の一つだということを。
コメント
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苦しいね😫 ネグレスの親 自分が良ければ良い腹が立ちます。 入ってけれてよかった 一瞬💚刺されたと… まだ何か抱えて居るのですね…😢 少しづつ良い方向に
うわっ…第5話、めっちゃ重たい展開だったね…。でも、目黒くんが母親に「悪かったかよ!」って言い返せたシーン、マジでグッときたわ。あれは阿部先生と出会って、ちゃんと自分の人生を生きようって決めたからこそ出た言葉だと思う。ハサミのシーンもヒヤッとしたけど、先生が「自分の子に手を出すなんて最低な親ですね」って言い切ったのがカッコよすぎた。最後の「来れないんじゃなくて、来たくない」ってオチも、伏線として効いててゾクッとした。続きが気になる…これは良作の予感🔥