snowman
涼太「……起きちゃった…」
時刻は5時半
昨日、翔太くんは“涙”を流した
“涙”なんて物を忘れていた自分に心底呆れたのを覚えている
翔太くんは横で寝息を立てているこれは、“幸せそう”とでも言うのか…わからない
自分にここまでの“感情”の無さに驚いていた
…いや、無いと言うより“忘れた”が合っているだろう思い出してみれば、昔襲われた時からだったか…俺はよく“廃人”と言われることがあった
この時、俺は身ごもっておりそれに絶望していた父からは「めでたい事なのに」と罵倒される毎日母からは「こんな子に育てた覚えは」と叩かれる俺はあの人達の操り人形なのだったのだろうか…今でも、答えは見つからない
涼太「…勝手に洗濯していいかな」
「ま、いいや…怒られたら怒られただ…」
カダン…ゴトンッ…
涼太「…朝ごはん翔太くん食べるかな…」
6時半 俺が起きてもお1時間が経ったようだ
翔太くん、今日仕事じゃないのかな…起こすとしても早すぎか…そんな事を考えソファへと座る
昨日話を聞いてくれたこのソファに……
俺を抱きしめて涙を流してくれたこの場所に
一ファンになぜここまでするのだろうか、俺には到底理解できない
でも、人から大切にされたことなんてなかったからうまく言葉にできないが…“嬉しい”のだろう
ガチャ…
涼太「?」
翔太「…おはょ…りょーた…っ」
涼太「おはようございます…今日、お仕事ですか?」
翔太「うーん…多分……」
涼太「…スケジュールくらいしっかり管理しといてくださいよ…」
翔太「まって…確認…するから」
翔太「俺今日仕事だわ」
涼太「わかりました」
「朝ごはん、いります?」
翔太「え、作れんの?」
涼太「作れますが…」
翔太「お願いしますっ」
威勢のいい返事にちょっと戸惑いつつ、コクリと頷き台所に立つ
冷蔵庫を見れば驚愕、ファンだから知っては居たが冷蔵庫に何も入っていない
ましてやお米もない
涼太「翔太くん…なんもないじゃないですか」
翔太「…まぁ俺自炊しないし、ね」
涼太「はぁ…俺なんか買ってくるんで待っててください、時間大丈夫ならですけど…」
翔太「家出んの10時くらいだから全然平気」
「買い物行くなら俺もついてく」
涼太「結構です」
翔太「だめ!今通期時間だから会社のやつ会うかもでしょ?俺が守るから」
涼太「…襲われてた人が何いってんですか…」
「一人で十分です」
翔太「やだ!意地でも付いてく!!」
涼太「……本当に5歳児ですね…?」
その後10分くらい言い争った結果、俺が根負けして結局翔太くんはついてくることに
その代わりしっかり帽子やらメガネやらをつけさせたけど
翔太「何買うの?」
涼太「一応、冷蔵庫に入ってれば何とかなる食材買います」
「卵とか、ベーコンとか、味噌とか…後お米も」
翔太「ふ~ん…俺まじスーパーとか行かないからどこに何売ってるかとかも知らないんだよな」
涼太「たまには…買い物一緒行きます……?」
翔太「っ!うん、絶対いく!」
子供のように無邪気に笑う翔太くんだから5歳児なんだよ…でもそこがファンが、俺が落ちる理由自覚なんてしてないんだろうな
涼太「俺が持ちますよ?」
翔太「大丈夫、俺鍛えてるからこんくらいへーきですー」
涼太「そんな意地はんなくても…」
翔太くんはお米と大きい方の買い物袋を持っていて、俺は小さな買い物袋を持っている
「持ちます」と言っても聞かず、1人でスタスタと行ってしまう
頼もしい…のか???
翔太「あ、涼太みてここ俺のお気に入りの場所」
涼太「?」
「…わぁ……すごいですね」
そこに広がっていた光景はアートのようなものだった
川に人影が映り込み、ゆらゆらと動く絵のような場所
夏の終わり、青葉は色を落とし茶色へと染まり始めている、その葉はゆっくりと川の水面に落ちるこれは“綺麗”とでも言うのだろうか
涼太「…翔太くん、これは“綺麗”って言うの…?」
翔太「!…そーだよ」
「感じることは人それぞれだけど、これは“綺麗”って言ってもいいんじゃないかなっ笑」
涼太「…!……翔太くん笑った…ボソッッ」
翔太「?どーしたの、涼太?」
涼太「…なんでもないです、帰りましょう」
「ご飯の時間なくなります」
翔太「ほーい」
俺達はまた歩き出す
ノコリノテストガンバリマス…
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