あれから、蓮の親が帰ってきた
蓮は母親と2人暮らしだそうだ
蓮の母親に蓮にした説明をする
「ん〜、じゃあ、家で一緒に暮らす?」
「は?」
あまりにもノリが軽いので間抜けな声が出た
「だってぇ、蓮にも話し相手がいた方がいいでしょ?」
なんか……なんというか……
ほわほわしている
存在感ありまくりの蓮に比べると、のほほんとしていて、ふんわりとしている
「あ、そうだ。あなたの名前は?」
「えっと……」
言葉に詰まると、蓮が助けてくれた
「名前、分かんないんだって」
「あらまぁ。記憶喪失みたいな?でも、自分の名前だけ忘れてるのよね?」
「そう……です」
自分の名前以外は思い出せる
ただ、親やルカの自分の名前を呼ぶ声だけは、思い出せない
「じゃあ……いちいちあなたとか言うのも面倒だから……」
「亮平ね!」
近くにあった紙とペンで亮平と書いてくれた
「分かりました……」
「で、亮平くんの部屋は蓮の隣でいいよね?」
「うん。全然大丈夫」
「じゃあ、明日ベッドとか手配するから必要なものがあったら言ってね」
「はい……」
今日から、ここで暮らすんだ……
改めて周りを見渡すと、とても広い
床は……石?
「ねぇ、蓮。この床って……」
「これ?これは大理石っていう石だよ」
「へぇ……家と違う……」
「亮平の家の床は?」
「俺ん家は土だよ」
「土?」
「うん。だから、靴も脱がない。脱ぐ時はお風呂とか寝る時ぐらい」
「いいね。それも」
その後、ご飯ができるまで家の話をしていた
蓮はにこにこしていて、その顔を見る度に心臓が激しく暴れる
だから、顔をあまり見ないようにした
目も合わせないように
きっと、嫌な奴だって思われたかもしれない
「はい、出来たよ〜」
蓮のお母さんが料理を運んでくれた
けれど、俺の知っているものでは無かった
「どうしたの?」
「これ……なに?」
茶色い液体
これはなんだ?
それに、この銀色のやつ
これは金属か?
こんなもの、見たことない
「亮平はどんなもの食べてた?」
「木の実とか…あと魚とか肉を焼いてた」
「へぇ……」
「これはね、カレーって言って、野菜とか、お肉を煮込んでカレールーを混ぜてご飯の上に乗せる料理だよ」
俺はこんな説明を聞いても分からないので一つ一つ尋ねることにした
「このオレンジ色のやつは?」
「それは人参っていって栄養満点のお野菜よ」
「じゃあ…この塊は?」
「食べたらわかるわよぉ」
そう言って蓮のお母さんは銀色のもので食べた
「ん〜!美味しい!」
「ほら、食べてみなきゃわかんないわよ」
「何事もチャレンジ!」
そう言われて、銀色のものを握る
これは……スプーン?
俺が使っていたスプーンは木だったけど……
こんなスプーンもあるんだなぁ……
掬って恐る恐る口に運ぶと、
「ッッ!!!」
「美味しい?」
「すっごく!!」
美味しい
こんなに美味しいもの食べたことがない
にんじんというものを食べてみる
「美味しい……」
「気に入ったみたいで良かったわねぇ」
「うん」
謎の塊も口に運ぶと、
「鶏肉……?」
「ピンポーン!!」
「さすが亮平」
「いつもの鶏肉とは違って、でも美味しい!」
「良かった」
あっという間に平らげてしまった
「ご馳走様でした」
「あら、それは同じなのね」
「え?」
「そのご馳走様っていう挨拶よ」
「へぇ……」
「じゃあ、いただきますは?」
「同じ」
「なんか不思議だね」
「ね」
料理は違うのに挨拶は一緒
なんだか、似てるようで、似てない、不思議な感覚
『はいおっけー!』
「阿部ちゃん、あのカレー美味しかった?」
「めちゃくちゃ」
本当に、あのカレーはめちゃくちゃ美味しかった
台本に、ガツガツと食べる的なことが書いてあったけど意識せずともそう食べてしまった
『あのカレー美味しかったですか?』
と、若い男のスタッフさんに聞かれる
「はい!」
『良かった〜あれ、俺が作ったんですよ』
「そうなんですか!?凄いですね!!」
『いやいや、そんな事ないですよ』
いや、本当に美味しい料理を作れる人って本当にすごいと思う
素直に尊敬する
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