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カーテンの隙間から明るい光が射し込んできて目が覚める。
「・・・ふ、ぁ、」
こんなにも憂鬱な気分だというのに、朝を知らせてまわるように鳥たちが元気にチュンチュンと鳴いている。
そうだ、また朝がきた。
「・・・」
”もういっそのこと休んでしまおう”
そんな考えが脳裏を過ぎる。
だって、どうしても今日は行きたくないんだ。
どうせ行ける気もしてない。
それに、
・・・それに、奏斗だってこない。
「しんどい、な、」
唯一無二の相棒だって思ってた。逆に言えばそれ以上でも以下でもないって。
でも違った。
”奏斗の一番は俺”って、”奏斗の隣は俺のじゃないの?”って、そう思ってしまった。
それにちょっとスマホ見てて視線合わないからって、”俺を見てほしい”だなんて。
・・・俺が女々しすぎるんかな。
でも思ってしまった。
”そんなん恋じゃん”
「はぁ・・・」
起きようともしない体で寝返りをうち、日差しに背を向けた時、思わずため息が溢れてしまった。
目を瞑りよくよく考えてみると、 俺のこれは初恋じゃないのだろうか。
幼稚園の頃、同じ組の女の子にしていたと聞いたけれども。
でも、幼稚園児にしていた頃の”恋”は「大きくなったら結婚しようね」なんて言うようなものばかりで、実際に大きくなった時に付き合ったり、なんていう話は一般的に少ない方だろう。
俺だってその内の一人だったらしい。
その子は幼稚園を卒業するタイミングで、引っ越してしまったので既に疎遠になってるけど、次会ったら初めて会うような感覚になるんだと思う。
そしてそんな、物心がついていたかもあやふやな時期のものを、果たして”恋”と呼べるのかがわからない。
だってその頃の恋愛が今活かせる訳もないし。
実際に俺は今初恋のような感覚に陥っているのだから。
”何をすればいい”
”どうすればいい”
考えても考えても、まともに恋愛をしたことのない俺の、寝起きのよく回らない頭で考えたところで何もわからない。
これ以上考えようとしたところで無駄なんだろうな、と察してしまう。
それに、いっそのこと今日ぐらいは休んでもいいんじゃないかと思う。
・・・今まで恋愛をしてこなかった分、今にツケが回ってるんだろうな。
しばらくぼーっとしていると少しずつ人の出が多くなってきたのがわかる。
「・・・今何時だ、?」
7:57
「っあ”!?もうそんな時間!?」
驚いた勢いのまま、ガタガタとベッドから落ちる。
「痛ってぇ・・・って準備!、」
そこまで言ってふと我に返る。休むんだからこのままでいいじゃん、なんて。
「っはぁ〜・・・」
二回目のため息をつきながらベッドに腰をかけ、 休むにしても学校に電話しなきゃなぁなんて考えながら床を見つめる。
あ、泣きそ___
ピンポーン
インターホンの音がしてハッと顔を上げる。こんな朝から誰だ、なんて、奏斗がきたのかもしれない、なんて。
少しドキドキしながらインターホンのモニターの前まで行って、見てみる。
「・・・はい」
[宅急便でーす。渡会さんのお宅でお間違いありませんか?]
ガッカリしたような、安心したような、ぐちゃぐちゃな気持ちを振り払って玄関まで歩き出す。
ガチャッ
「すんません、お待たせしました〜」
[こちらお間違いありませんか?]
「大丈夫です!ありがとうございます!」
[ありがとうございます〜!]
バタン
ドアを閉めるとまた静かな、俺一人だけの空間に戻る。
「・・・電話、せんと、な」
電話をかけにリビングへ行く途中、ふと声が聞こえてきた。
『そ?僕は好きだけどなぁ』
───奏斗だ。
でも、誰かと会話している。
・・・それも”好き”って、
・・・あぁ、そっか、またあの子と居るんやね。
俺じゃない、あの子と、また、一緒に___
あぁダメだ、視界が歪む。
色が滲んで、ぐちゃぐちゃに混ざり合って、手が震える。
止まれ止まれと思っても止まってくれないうえに、喉からは出したくもない嗚咽が出る。
「っぅ、な、っで、なん、で、だよッ・・・」
段々と苦しくなってくる。
落ち着かないと、電話すらもかけられないというのに。
こんなことで、こんなんになってどうすんだって話だけど。
それでも今の俺には、この涙を止める方法が分からなかった。