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明晰夢 ~夢に恋した16のハル~

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明晰夢 ~夢に恋した16のハル~

2 - 第2話 明晰夢って言うんだろう。【本編】

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2025年09月14日

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……


「あれから2年が経ちましたね。

優燈くんは今でもちゃんと生きています。

つまり自分を|棄《す》てなかったのです。

何となく生きている、それだけで人生は勝ち組なんですよ。

私は優燈くんの幸せを担保します。

でもきっとあなたなら、自分自身で気付けるでしょう。

とにかく希望を、絶対に離さないで。」



…ゆ、夢だ。自我がある、言葉を発せる



「ま、待って!君は誰なんだ!」




………………




…今回は言葉こそ発せたけど、結局目覚めてしまって、彼女が何者かは分からず終いだったな。

…分かっても意味ないんだろうけど。

前回とは異なって、夢の記憶に彼女の存在が鮮明に浮かぶ。

彼女の日本語は非常に丁寧で美しい。

中3の僕には、あの文字の羅列は不可能だ。

そして、


…綺麗だ。


彼女は非常に美人だった。

僕が編み出した少女なのであれば、当たり前といったら当たり前だ。

白髪少女は、僕の幸せを保証すると言っていた。


…彼女に何が、どうやってできるんだ?


…僕が僕を救うために造り出した、空想の人物なんだろうし、彼女の言葉は僕の真意でもあるのだろう。

僕自身が幸せのステップを踏むための、鍵を握っている。

またしても、彼女の存在は生きる糧へと成り代わっていった。



高校受験の勉強に勤しんだ僕は、人から後ろ指を指されない程度の学校に合格した。

晴れて僕の高校生活は幕を開けた。

心の|蟠《わだかま》りも快方に向かっていて、何より漫画で読んだ世界に飛び込む事実に、興奮が抑えられなかった。


明るい雰囲気を感じる教室で、高偏差値の高校に合格した、自分自身を褒め|称《たた》えた。

そして友達と馴染めたことには、本当に心から歓喜した。

僕はフツメンだから、同性に恨まれることはないので、友好関係樹立には都合がよかった。


でも根本は解消されていなかった。

彼ら彼女らも別に僕を愛しているわけではない。

僕の存在が消えても、即座に僕の周囲の社会活動は復活する。

家族は悲しむだろうけど、これも一番ではない。

今ここで死ぬことは逃げだ、という信念を貫き通した僕は、千日をどうにか乗り越えられた。

…でも逃げても損失は少ない、影響も同様だ。

思春期真っ只中の僕は、希望を喪いかけて魔が差しかけていた。

それは若くして愛のエネルギー容量の全貌を、知ってしまっていたから。

つまり、愛情の重要さに気付いてしまっていたから。

入学式から3週間の僕は、既に自我を見失っていた。



そしてまたその夜だった。




………………




「私は優燈くんに言ったはずです。

希望を離すなって。


あぁあ…。よっぽと私って信用されて無いんですね…。」



…また例の夢だ。自我もある。


彼女は落胆して、溜め息をつき下を向く。

目が覚めるうちに言っておきたいことがある…、



「―――あ、あなたは誰なんだ…、ですか?

僕はこの苦しみを共有するアテも、解消する方法も何も知らないんですよ!

あなたに何が分かるっていうんですか!―――」


「全く分からないなら、私だって大言壮語は吐きません。

優燈くんの夢にも訪れてはいない…、ねっ?

そして私のことは、今は知らないで下さい。

…あなたが知るべき、その日まで。

大丈夫。

自分を弱いと思っているかも知れないけど、優燈くんは案外強いです。

それじゃ、またね。きっと会えるよ。」


「お、おい!」




………………




…これは悪夢なのかもしれない。

…最近は夢で、よくあの白髪少女と出会う。

…【|明晰夢《めいせきむ》】という奴だろう。

つまり僕の意思が介入できる夢。

初めて会話を交わした。

…まるで…、夢で本当に生きているかのようだ。


彼女が創作されるような出来事は僕にはなかったけど、彼女は確かにそこにいた。



…彼女は…一体誰なんだろう…。



何が彼女を作ったんだろう。

僕には分からない。分かれない。

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