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ゆり組のからみが、出て来そうかなー😍😍
目黒くんを見送ったあと、一度家に戻り、洗い物や洗濯物を全て片付けて、部屋の掃除をしたあと、もう一度家を出た。
お礼を伝えるためのなにかを買いに行きたい。
目黒くんとのことが無事に身を結んだことを、オーナーたちに報告したかった。
家の最寄駅にはコンビニしかないので、四駅ほど電車に揺られ、百貨店へと向かった。
通勤や外出をするには少し不便だが、都会の喧騒から離れた小さなアパートで静かに暮らせるのは、結構気に入っている。
百貨店に着き、色々なお店を見て回るが、迷ってしまう。
人に贈り物をすることがあまりなく、どんなものにしたら良いのか、皆目見当もつかない。プレゼント選びというものは、なかなかに難しいようだ。
店員さんの助けもお借りしながら、オーナーにはお店でもお家でも使えそうなペッパーミルが2本セットになったものを選んだ。
ふっかはいつも不健康そうなので、繰り返し使えるホットアイマスクと少し高めの雑炊セットを。
それから、ラウールくんには、就活で使えそうでいて、かつラウールくんの個性も出せるようネクタイとタイピンを買った。
少し買い過ぎただろうか?どんなものがいいのかも、いくらくらいものがいいのかも分からなかったが、自分の気持ちとしてはまだ足りないくらいだった。
渡し過ぎるのもあまりよくないかと、ほどほどにして、駅へ向かった。
夕方頃、お客さんの入りも落ち着くであろう時間を見計らって、オーナーのお店のドアを開けた。
お客さんはどうやらいなかったようで、少し安心する。
いきなり来て、プレゼントなんて渡したら、迷惑になってしまうんじゃないかと、ドアを開けた瞬間に不安になったのだ。プレゼントを買えたことで嬉しくなってしまって、そこまで頭が回っていなかったと反省した。
いつも通りドアベルが鳴って、ラウールくんが出迎えてくれる。
「あ!阿部ちゃん!久しぶり!元気だった?」
「こんにちは、ラウールくん。元気だったよ。ラウールくんは就活うまく行ってる?」
「手応えはあるよ!今二次面接の結果待ちなんだー!」
「そっかそっか、ラウールくんなら大丈夫だよ。」
「ありがとう!そういう阿部ちゃんは、あの好かれてる人と何か進展あった!?」
「ぁ…そう、そのことでね、今日はラウールくんとオーナーに会いに来たの」
「オーナー今仕込み中だから呼んでくるよ!おかけになって、おまちくださいませ!!」
「ふふっ、ありがとう」
オーナーの言葉遣いを真似するように、少しぎこちなく敬語を使うラウールくんはとても可愛らしかった。
「阿部?来てくれてありがとう。でも急にどうしたの?連絡してくれたら、何か作っておいたのに。」
「あっ!!?」
…そうだった……。この間連絡先を交換してもらったことを忘れていた…。
早く渡したくて、そんなことすら頭から抜けていた…。
「…すみません…………。忘れてました…………。」
「ふふ、気にしないで?阿部はお得意様だから、サービスできたらなって、それだけだから。…それよりどうしたの?ラウールから、何か用があって来てくれたって聞いたけど。」
「なんかね、例の好かれてる人とのことで話があるんだって!」
「そうなの?」
「はい、、えっと、その…昨日、その人とお付き合いさせていただくことになりまして……。」
気恥ずかしくて、言葉が尻すぼみになる。ちらっと二人の様子を見ると、とてもにっこりしていた。
「えーーー!!!阿部ちゃんよかったね!おめでとう!!」
「おめでとう、答えが出たみたいでよかったよ。」
「本当にありがとうございました。皆さんにアドバイスをいただいたおかげです。」
「俺たちは何もしてないよ、阿部が頑張って自分の気持ちを見つけたおかげだよ。」
「うんうん!ほんとにおめでたいね!」
「いえいえ、、俺一人ではきっと迷ってばかりだったと思うので、、本当に感謝してます。それで、今日はそのお礼をしに来ました。これ、つまらないものですが、よかったら…。」
「えぇ、いいのに…。わざわざご丁寧にありがとね。開けてもいいかな?」
「はい!どうぞ!」
「え!俺にもくれるの!?」
「うん、ラウールくんにも教えてもらったから。ありがとう!」
「やったー!!なんだろー…?」
「わぁ、、おしゃれなペッパーミル…!ありがとう。お店で使わせてもらうね」
「えー!!このタイピンかっこいい!ネクタイも就活で使えそう!ありがとう!!」
「喜んでもらえてよかった…!!本当にお世話になりました。」
「どういたしまして。あ、そうだ。もうそろそろ夜ご飯の時間だけど、阿部ご飯食べてく?今日は素敵な贈り物頂いちゃったし、お礼にお代は大丈夫だけど、どうかな?」
「あ、、えっと、今日は…」
「もしかして早速デート!?」
「えっ、あ、デート…になるのかな、、ご飯を食べに行く約束をしてて、、」
「えー!楽しそう!!せっかくならここでデートしたらいいんじゃない!?阿部ちゃんの彼氏に会ってみたいし!」
「、、うーんと…その人、ちょっと人目を気にしちゃう人だから、個室がいいかなって思ってて……。」
「そっかぁ……じゃあ仕方ないね…。会ってみたかったなぁ…。」
「あんまり無理言わないの。とはいえ、それは俺も同感かな。阿部をちゃんと大切にしてくれるのかどうか、見極めないとだしね。」
「えぇ、、オーナーまで…。」
「ふふ、阿部は弟みたいなものだからね。今度、時間が合うようなら、閉店時間くらいに二人でおいで?少し早めにクローズして、阿部とその人だけの場所にするから」
「そんな、、悪いです、、!」
「いいのいいの、閉めた後もなんだかんだでやることあるし、その仕事しながらでもよければだけど。」
「お気遣いありがとうございます、今度聞いてみます!」
「やったー!嬉しい!閉店作業退屈だから、阿部ちゃんがイチャイチャしてるの見ながら仕事できるの楽しみ!」
「…ラウ?今月のお給料減らすよ?」
「…ゃっべ、、オーナー冗談だってば!このお仕事全部楽しいよ!」
「ふふ、頼りにしてるよ。いつもありがとうね。」
「えへへっ、オーナー大好き!♡」
「ふふっ」
やっぱりオーナーとラウールくんは親子みたいだ。
そうだ、今日のご飯屋さんを探さなくては…。
個室とは考えていたが、いいお店が全く分からない……。ネット検索は苦手だが、頑張ろう…。
二人にお礼を言い、カフェを後にした。
別れ際、「ちゃんとおしゃれしていくんだよ?」とオーナーに揶揄われてしまった。
自宅に戻り、オーナーに言われたことももっともだと、クローゼットの中からありったけ、洋服を全部引っ張り出して、片っ端から組み合わせていった。
今の時期、夜は肌寒いので、ゆったりとした柿色のふわふわなニットと、幅の広くて濃い青のデニムを選んだ。寒いのは苦手なので、もこもこのマフラーも着けていくことにした。まだ本格的な冬ではないがニットだけでは心許なくて、コートも忘れずに玄関に置いておいた。
だいぶモフモフな格好になってしまったが、大丈夫だろうか…。
でも、ここまで来たらなんだか楽しくなってきて、普段はあまりしないヘアセットまでしてしまった。
アイロンで熱を入れ、少し髪を波立たせる。左側の髪は耳にかけて、その状態でワックスをつけて固める。
「うん、ちょっとだけ、いいかんじ」
目黒くんの隣を歩く、今まではスーツを着ているか部屋着を着ているかのどちらかだったので、私服姿で会うのは少し緊張する。
不釣り合いな感じは少し悲しい。目黒くんはとっても格好いいから、隣に立った時に浮いてしまうようなことはなるべく避けたい。
自分にできる精一杯だけど、おしゃれするのってこんなに楽しかったのかと思うとなんだか感慨深い。
誰かを想ってすることは、全て楽しくてわくわくするみたい。
誰かに贈り物をすることも、誰かと出かけるためにおしゃれをすることも、全部。
目黒くんが、たくさんの初めてをくれるたびに、俺に色がついて、染まっていく。
身なりも大切だが、お店選びも重要だ。
頑張って調べてみようとスマホを開くと、目黒くんからメッセージが来ていたことに気付く。
「今日いくお店、こことかどうかな?」
一緒にお店のリンクが貼られていた。
タップしてお店の情報を見てみる。
個室のお店で、雰囲気も良く、ご飯もとても美味しそうだった。
さすが芸能人なだけある。いろんなお店を知ってるんだろうな…すごい。
「うん、大丈夫!ありがとう!」
と返信すると、すぐに
「19時頃、迎えにいくね」と返ってきた。
「ねぇ、しょっぴー?」
「んぁ?」
「いい雰囲気の個室のご飯屋さん知りませんか?」
「いきなりどうした?てか、お前今日ずっとニヤニヤしてて気持ち悪ぃんだけど。」
今日の仕事が終わったら、阿部ちゃんとデート…。嬉しい。
昨日の夜から、ずっと幸せが止まらない。
いい感じのお店を選びたい…!阿部ちゃんの前ではかっこ良くいたい…!!
しょっぴーに聞いてみようと思って話しかけたら、気持ち悪いって…。
「ひどくないすか?」
「事実だろ。」
「いや、これには深いワケがあるんすけど聞いてくれますか、ありがとうございます。」
「まだ聞くって言ってねぇんだけど…」
「阿部ちゃんがね?」
「おい、聞けよ」
「俺のこと好きになってくれたんすよ‼︎‼︎」
「へー、よかったじゃん…………ってハァ⁉︎マジで⁉︎」
「マジっす。昨日!」
「んで⁈」
「付き合ってくれました!!」
「お、おぉ…おめでとう」
こんなにおめでたいことなのに、なぜか引き気味のしょっぴーの背後から佐久間くんと岩本くんが現れた。
「なになにー!!」
「目黒、なんかいいことあったの?」
「はい!めでたく阿部ちゃんとお付き合いしました!!」
「おぉー!!あの阿部ちゃんね!よかったねん!おめでと!!…んにゃ?俺とその阿部ちゃんが電話した時にはもう付き合ってたの?」
「うす」
「えぇー、よかったじゃん!おめでとう!」
「岩本くん、ありがとうございます!」
こうなったらいろんな人の意見が聞きたくなって、佐久間くんと岩本くんにも聞いてみた。
「それで、みんなに相談なんすけど、今日デート行くお店どこがいいと思いますか?」
「あそこは?照明の感じが結構いい雰囲気だったよ?」
「ここも良くない!?こないだ行ったんだけど、ご飯めっちゃ美味しかったよ!」
「あー…ここどう?あんまり人来ないとこだったから落ち着いて食えた。」
「全部いいっすね、全部行こうかな」
「バカか。腹いくつあっても足んねぇだろ。一個に絞れ。」
「悩む…。おしゃれな岩本くんのセンスも捨て難いし、舌肥えてる佐久間くんの情報も魅力的だし、静かなとこっていうしょっぴーの考え方も大事だし…えええぇ…。」
「こことかどう?」
背後から聞こえたその声に振り向くと、そこにはふっかさんがいて、呑気に「みんなお疲れー」と続けた。
「いつからそこいたの!?」
「んー?めめがデート行くお店どこがいいと思いますか?って言ってたあたりかな?みんな大騒ぎしてて誰も気付いてくんないんだもん、俺泣いちゃうよ?」
「ふっかさん、そのお店どこすか!!!」
「え、無視?絶好調だね目黒くん。まぁいっか。このお店。雰囲気もいいし、ご飯も美味しいし、お客さんそこまで多くないし個室だからゆっくりできるよー。」
「うぉおぉ!すげぇ!ふっかさん、ありがとうございます!!」
「いえいえー」
俺は早速阿部ちゃんに、ふっかさんから教えてもらったお店のリンクと目一杯カッコつけたメッセージを送った。
楽しみで仕方なくて、足をぶらつかせながら、いつまでも阿部ちゃんとのトーク画面を眺めていた。
なぜか、さっきまでニコニコしていた岩本くんは、いつの間にかむすっとしていて、ふっかさんに小声で何かを聞いていたが、今の俺には何も耳に入って来なかった。
おまけ
「ねぇ、ふっか。」
「ん?」
「あのお店、まだ俺と行ったことないよね?誰と行ったの?」
「ぇ、、ぁ、後で話すから…」
「やだ。今教えて。なに、俺に言えない人と行ったの?いつ行ったの?」
「ここみんないるから!聞かれたらまずいから!ね!?全然そんなんじゃないから!!」
「…わかった。」
「そんな不機嫌そうな顔しないでよ…。照が心配するような経緯でそのお店知ったわけじゃないから、ね? チョコ食べる?」
「…っ、たべる……ありがと…。」
「ふはっ、かぁいぃね。」
「ふっかの方がかわいい」
「ばッ…⁉︎ お前ホントさぁ……。」
「ん?んふふ〜、チョコおいし〜。」
To be Continued…………………………