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………リィ………リィ………シャーリィ!
「……はっ!?」
微睡みの中呼び掛けの声が聞こえて意識を覚醒させたシャーリィ=アーキハクトです。ううっ、頭が痛い……一体何が……確か、私は落ちて……ぼやける視界で周囲を見渡すと、ルイの姿が映りました。
「……ルイ……?」
「シャーリィ!目が覚めたんだな!大丈夫か!?」
「頭が痛いくらいで、他には何も……ちょっと寒いかな」
「そうか……良かった。目が覚めないんじゃないかって心配だったんだ」
「……何があったのか、良く分かりませんが……何故裸?」
ルイは私の隣で全裸で手を後ろに縛られて座っています。
周りは松明があるだけの岩肌が剥き出しの牢屋みたいですね。柵も木製だ。
「ここの奴らに捕まったんだよ。あいつら、最初からシャーリィが狙いだったみたいだ」
「私が狙い……ああ、だから落とし穴があったんですね……ん」
あっ、寒いわけだ。私も全裸です。サービスシーンですよ。貧相だから価値がない?ファック。
「何で冷静なんだよ。普通女ってのは叫ぶもんだろ?」
「生憎普通の感性は持ち合わせていませんし、自慢できるような身体でもありません。今はルイしか居ませんからね」
ハッキリ言って見慣れてますからね。お互いに。
「いや、充分自慢できる身体してるからな?他の女が異常なだけで」
「それはルイだからですよ」
シスター達はもちろん、レイミの身体を見たら自分のチンチクリンな身体を恨めしく思いますよ。もう少し成長しないかな。
「それで、状況は?」
「見ての通りだよ。身ぐるみを剥がされて縛られて転がされてるだけさ」
「むぅ、返して貰いたいものですね」
探索用に厚手の服ではありますが、魔法剣だけは取り戻さないと。
「心配するのは魔法剣かよ」
それはそうですよ。
「それより、少しは隠せよ」
ふむ。私は今地面にペタンと座っています。レイミ曰く女の子座りですね。手は後ろで縛られているので自由に出来ませんが。もちろん全裸です。
「別に、ルイしか居ませんし。それにこんなチンチクリンな身体で欲情するような殿方は居ないでしょう」
「いや、ここに居るんだけどな?」
「お猿さんですね」
「そうじゃなくて、少しは恥じらえよ」
「善処します」
さて本題です。
「素っ裸で放置されている現状を見るに、今後起きるであろう事態を予測しましょう。簡単なのは全裸にした女性に対する扱いですが」
それは容易に予測が出来ます。
「お前に乱暴なんかさせねぇよ」
「今の状態のルイに何かが出来るとは思えませんが」
「っ!」
あっ、悔しそうな顔になった。違う違う。
「責めているわけではありません。気持ちは嬉しいです、ルイ。ありがとう」
笑顔を浮かべて答えると、少しだけルイの表情が和らぎました。
「シャーリィ……」
「ただ、現実問題としてルイが下手に抵抗して殺されては困ります。最悪犯されることも覚悟しますので」
「そんな覚悟させたくねぇよ」
「分かっています。けれど、自決なんかするつもりもないので安心してください」
犯されるくらいならば自ら命を絶つ。良く耳にする話ですし、その覚悟や高潔な精神には敬意を表します。
ですが私にそのつもりは一切ありません。ルイと夜を共にする度に確認していますが、殿方は致している間視野が極端に狭くなるのです。それはもちろん集中するからであり、種の保存と言う本能による尊いものです。
が、逆に言えば隙だらけなんですよね。もちろん私はルイしか知らないのでそれとなくシスターに確認しましたが、同じ意見をいただきました。例外はあるのでしょうけど、それを利用しない理由はありません。
自ら命を絶つくらいならば最後まで抗います。精神的苦痛は……うん、多分私にはあまり効果的ではないと思うので。
「下手なことをしないでくれよ?お前が殺されちゃ意味がないからな」
「ちゃんと分かっていますよ。それで、私達を連行したのはどんな人ですか?」
「言葉は公用語だ。腰巻きして、身体中に入れ墨を彫ってたな。後は体格が良い。話してる内容は分からなかったけどさ」
ふむ。つまり、無人と思われていた『カロリン諸島』には原住民が居たと言うことですね。理由は分かりませんが、私達に対して攻撃してきた。そして私とルイを捕まえた。
今の状況を見ても、友好的な対応とは思えない。最初から敵として認識した方が良さそうです。
ただ、もしかしたら私達は彼等を刺激するようなことをしてしまったのかもしれません。その場合非は此方にあります。
対話が可能ならば、それで穏便に済ませることも可能。無用な争いが避けられるならそれに越したことはありませんからね。
「いや、友好的な奴らには見えなかったけどな?」
「まあそうでしょうね」
素っ裸にひん剥いて放置ですよ?仮に文化だとすれば非常に興味深いものはありますが、流石に無理があるかな。
「他に捕まった人は?」
「見てないな。俺はお前が落ちた時に一緒に飛び込んだから捕まったんだ。ベルさんが居るから、捕まるなんてヘマはしないと思う」
となると、今ベルは人員を整理して救出のために動き始めていると考えるべきでしょうか。捕まってからの時間が分からないので、希望的観測に過ぎませんが。
「では、ベルが助けに来るまでゆっくり待つとしましょうか」
「待ってくれるならな」
ルイの視線の先には、腰巻きだけを身に付けて全身に入れ墨を彫った男性が数人立っていました。
「喜べ、外界の民よ。貴様達は神聖な儀式の生け贄に選ばれた。大変名誉なことだ。感謝すると良い」
あっ、これダメな奴ですね。異文化だろうと、流石に生け贄になるのを黙って許容するつもりはありません。
「慎んでお断りしたいのですが」
「何故だ?大変名誉なことなのだぞ?」
心底分からないって顔してますね。
「でしたらその名誉は貴方にお譲りますよ。私達は邪魔をしないように島を出ますから」
「はははっ!面白いことを言うな。外界の民よ。これは、我々なりの歓迎なのだ。遠慮しないで受け取ってくれ。客人達を連れていくぞ!」
近寄ってきた!
「おい待てよ!シャーリィは逃がしてやれ!俺だけで良いだろう!?」
「ルイ!?」
「駄目だ駄目だ、この儀式には女が必要でな。若い処女が必要なんだ!」
……ん?
「あの……私、処女じゃないですよ……?」
「えっ……」
うん、なんと言うか……空気が凍り付きました。なにこれ。
「かっ、構わん!連れていけ!」
なんとも微妙な空気のまま私達は連行されるのでした。