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いつから狂い始めたのかしら。母が亡くなった時?
両親を亡くした遠縁のイリナを養女として迎えた時?
レオナルド殿下と婚約した時?
イリナがレオナルド殿下に一目惚れした時?
二人が恋に落ちる瞬間を目の当たりにしたわ。目が合った瞬間に二人の瞳が熱を帯びていた。まるで二人だけの世界のように見つめあって。
それからレオナルド殿下が邸に来られても、なぜか私には知らされずイリナが応対する頻度が増えていった。
偶然二人の姿を見かけた時、唇が触れ合っていたから思わず逃げだしたのよね……。
イリナ、あなたわざと見せつけたのでしょう?
どうしてそんな酷いことができるの?
あなたにいじわるをしたことなんてないでしょう?
この婚約は政治的なもの。厳しい王妃教育も耐えてきたのは全て家のため。浮ついた気持ちではないの。覚悟を持って臨んでいたのよ。
それなのに……。
イリナが覚醒して更に事態が悪化。
光魔法に目覚めたイリナは聖女。
聖女は王族と婚姻する習わしがある。
婚約者の決まっていない第三王子との婚約話を嫌がったそうね。
少し年下だけれど、聡明な方よ。
あなたの性格から聖女教育と王妃教育を並行するのが無理と判断されたからなのよ。
不敬を承知で言わせてもらうと、レオナルド殿下とイリナが国王と王妃になったら、国が崩壊するわ。
私だって婚約解消できるのなら、解消してイリナに代わってほしいわ。
どんなに傷つけられても愛国心はあるわ。
なのに、予想を超えることをしてくるのだもの。
珍しくレオナルド殿下が来られたことを知らされて、改心したのかと思った。
私の好きな紅茶を一緒に飲んで、一週間意識不明になったのよね。いったい、何を飲まされたのかしら?
頻繁にレオナルド殿下が見舞いに訪れたと聞かされたけど、部屋には見舞いの花さえなかったわね。
いったい誰の部屋を訪れていたのかしら。
回復後にはピクニックに誘ってくれたわね。イリナと三人で出かけて、私だけが転落したわよね。
その時の記憶がないと言ったけれど、全部覚えているわ。
二人に突き落とされたことも……。
あの時ね、私、もう何もかもどうでもよくなったの。死んでもいいと思ったのよ。
でも、死ねなかった……。
レオナルド殿下に誘われた劇場では、ピンポイントでシャンデリアが落下してくるし、家では階段から転げ落ちるし、いつもいつもすぐにイリナも駆けつけてくれるわよね。まるで、姉の私が心配で仕方ないみたいに必死な様子で……。
そうそう、
たまにはお菓子作りをしようと厨房に入った時は包丁が飛んできたこもあったかしら。
ふふ、あの時はイリナもすごい顔をしていたわね。だって包丁が突き刺さっているのを目の当たりにしたものね。
でも、私は生きている。
そう、私、気づいたの。自分の能力に。
覚醒したのはイリナ、あなただけではないのよ。でも、私は聖女じゃない。
今から行うのは聖女の儀式。
古に行われていたもの。膨大な魔力を必要とするので、数人の魔術師が必要。それを一人で行えるカイルは、すごいのよね。
聖女は王族との婚姻ができるので、自称聖女と名乗る者がいた頃もあるらしい。
罰が軽いと名乗る者が後を絶たないので、正式な儀式を設けることにした。
古と、現在では考え方も違う。
まさに命を懸けた儀式であるので、現在では行われない。
国王夫妻が国外に行かれている不在の今だからこそ、レオナルド殿下が執り行うのだ。
国王陛下は私の努力を認めてくれているし、王妃殿下にも目をかけていただいている。
イリナが聖女だからといって、婚約解消は認めない方針だ。だから、今までのように稚拙な計画ではなく、確実に私を抹殺しようと企んでいる。
二人の会話が聞こえていないと思っているのかしらね。
「イリナ、万が一のために解毒剤を飲んでおくんだ。君は本物だから大丈夫だと思うけれど、ユリアが何を企んでいるか分からない。それに━━するから。」
「レオナルドさまぁ、私は正真正銘の聖女なんですぅ。でも、偽物のお姉様には分からせてあげないといけませんものね。心配性のレオナルド様のためにも解毒剤は飲んでおきますね。だから、お姉様のグラスに━━」
カイルに大丈夫、覚悟はできていると目で合図をして、彼の側を通り過ぎて祭壇へと向かう。
祭壇には聖水の入ったグラスが置かれている。
もう後戻りは出来ない。
聖女ではないものがこの聖水を口にすると、命を落とす。
せめてもの慈悲なのか、苦しみもなく即死できるらしい。
私とイリナは一気に聖水を飲み干した。
そしてぷつりと意識を失った。