テラーノベル
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「お試し」という名目で付き合い始めてからの三ヶ月は、阿部にとって夢のように甘く、同時にいつ壊れるか分からないガラス細工のように、ひどく張り詰めた時間だった。
楽屋での二人の距離感は、これまで以上に近くなっていた。
桃「あべちゃぁん、あーん!」
と、佐久間が自分のお弁当から大好物の唐揚げを箸でつまみ、阿部の口元に突き出す。
緑「……ちょ、ちょっと佐久間、楽屋にみんな、いるから……」
桃「いいじゃんいいじゃん! ほら、あーん!」
顔を真っ赤にしながらも、阿部がそれを受け入れると、佐久間はこれ以上ないほど嬉そうに顔をくしゃくしゃにして笑った。
ソファーの向こう側では、目黒がハハッと低く笑いながら、隣に座る向井の頭を、あくまで「いつものスキンシップ」という体を装って優しく撫でていた。
撫でられた向井は一瞬で耳まで真っ赤になり、
橙「な、何やねん目黒ぉ!」
と大慌てでバタバタと離れる。目黒はクールな顔で
黒(よし、ただのメンバーとしての距離感だな。俺の片思いは完璧に隠せてる)
と本気で信じ込んでいるらしいが、阿部は心の中で密かに突っ込んでいた。
(めめ……隠せてると思ってるの、めめだけだからね!? 俺とひーくんと舘さんには、その目の優しさで全部バレてるから!)
実はお互いに大好きな両片思い。
離れた向井の側はというと、目黒に触れられた嬉しさと緊張で、顔を真っ赤にしたまま挙動不審になっていた。
(それにしても、康二は本当に分かりやすいなぁ。めめ以外のみんなには、康二の片思い、完全にバレバレなのに)
そんな二人を遠くから生温かい目で見守ってニヤニヤしている岩本と宮舘の視線にも、阿部は気づいていた。
橙「わあぁぁ! ずるい! オレもさっくんに唐揚げあーんしてほしい!」
向井が照れ隠しにわざとらしく大騒ぎすると、楽屋の特等席で深澤を膝の上に乗せていた岩本が
黄「康二、うるさい」と苦笑した。
紫「お前ら、楽屋は家じゃねぇんだぞ。……なぁ、照?」
黄色 「ん、ふっかがそう言うならそうだな」
すでにグループ公認で付き合っているいわふかの二人は、今日も安定の距離感でラブラブだ。それを見つめるラウールは
白「もう、この楽屋カップルだらけで狭い!」
と笑っている。メンバー全員が、二人の様子をニヤニヤしながら、だけどこの上なく温かく見守っている。
それは、阿部にとって本当に幸せな日常だった。
だけど、二人きりで行ったデートの帰り道、繋いだ手の温もりを感じるたびに、阿部の胸の奥にはどうしても冷たい影が差してしまうのだった。
(こんなの、やっぱり良くないよな……)
佐久間はいつも通り、全力で優しくて、全力で楽しそうだ。
でもそれは、佐久間が「お試し」というルールを完璧にこなしてくれているからに過ぎない。
自分だけが本気で、自分だけが毎晩、彼のことを考えて胸を締め付けられている。
もし、この三ヶ月の期限が切れても執着し続けたら、佐久間にとって重荷になってしまうかもしれない。
これ以上この偽物の関係を続けたら、本当に佐久間なしでは生きていけなくなってしまう。
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ーーーーーーーー
三ヶ月が経った、ある日の日の暮れた仕事終わり。
誰もいなくなった静かな楽屋で、阿部は意を決して、カバンを片付けていた佐久間の背中に声をかけた。
緑「佐久間。……もう、終わりにしよ? 別れよ。お試し期間、終了でしょ?」
阿部は胸を引き裂かれそうな痛みを隠すために、わざと冷たく笑ってみせた。
その瞬間、佐久間の瞳から完全に光が消えた。
桃「……俺、冗談じゃないよ?」
いつもと違う、低くて、怒りを孕んだ声。
佐久間が一歩詰め寄り、阿部の両肩を強く掴んだ。
その指先が、確かに震えていた。
桃「本気で阿部ちゃんのこと好きなんだよ。お試しなんて思ってなかった……!」
緑「嘘つかないでよ! 佐久間は俺の気持ちなんて、何も知らないくせに……っ!」
阿部は叫ぶと、佐久間の手を強く振り払った。
驚愕に目を見開く佐久間をその場に残し、阿部は逃げるように楽屋を飛び出した。
それからというもの、二人の空気は最悪になった。
コメント
3件
みぅです🤍🥀 第2話、読み終わりました……。 「お試し期間」って言葉が、阿部ちゃんにとってどれだけ苦しいか、ひしひし伝わってきました。楽屋の温かい空気と、二人きりになった時の冷たい影のギャップが切なすぎる。 佐久間くんの「本気で好き」って告白、あの震える指先が忘れられない……。阿部ちゃんが逃げちゃうのも分かるけど、でも、もう一度話し合ってほしいなって思いました。 続き、すごく気になります。
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