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撮影が早く終わった日の帰り道。
久々に全員集合してて、現場もわちゃわちゃしてた日。
深澤はふと、後ろで並んで歩いていた宮舘と岩本を見て、何気なく、軽いノリで言った。
「お前ら、仲いいな〜。もしかして付き合ってんじゃね?」
いつものふざけトーン。
誰もが笑って流すはずだった。
けど——その瞬間、2人の足がほんの一瞬止まった。
(……ん?)
宮舘はすぐに笑い返してきた。
「なに言ってんの、ふっからしいね」って。
岩本も、「ねぇよ」って小さく笑った。
でも、その間。
たった数秒。
舘が岩本の目を見るのを避けたのを、深澤は見逃さなかった。
(ん……?)
⸻
それ以来、ちょっとしたシーンが気になるようになった。
・収録の合間に2人が並ぶとき、無意識に距離を取る
・楽屋で話していても、妙に間合いが自然すぎる
・目が合ったとき、そこに何もない“ふり”をする
(……まさか、マジで……?)
ある日。
スタッフが引いて、メンバーだけで控室に残っていたとき。
深澤は思い切って、岩本にこっそり聞いた。
「なぁ照。……お前、舘のこと、なんかある?」
「は?」
「いや……なんか、距離感、前と違くね?」
岩本はちょっと間を置いて、それから椅子の背にもたれて腕を組んだ。
「ふっか、それ以上聞かないでくれ。……頼む」
その言い方に、怒りでも拒絶でもなく、
“これ以上は俺から壊れるかもしれない”というぎりぎりの静けさがあった。
深澤はそれ以上何も言えなかった。
でも、もう確信してしまっていた。
あのときの冗談は、冗談じゃなかったんだ。
⸻
数日後、宮舘と2人きりになったとき。
深澤はぽつんと呟いた。
「……ごめんな、あんな冗談。知らなかったからさ」
宮舘は少しだけ微笑んで、深澤の方を見た。
でも、その目はどこか遠くを見ていた。
「知らない方がいいことって、あるんだよ。」
「でもさ、お前のこと、俺……」
言いかけて、やめた。
言ってしまったら、何かが壊れる気がして。
「……何でもない。今度、飯行こうな」
「うん。行こう」
だけど、その“うん”は、昔と同じ響きじゃなかった。
⸻
深澤は知ってしまった。
岩本と宮舘は、たぶん“してる”。
でも、それは甘い関係でも、幸せでもない。
ただ、火がついて、止められなくなって、
気づけば引き返せないところまで来てしまった、そんな感じ。
そして、深澤は今。
その火の周りを、じりじりと回ってる自分に気づいてしまっていた。
——どうしようもなく、切ない。