テラーノベル
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夜の九時。月呼と侑加は早々と部屋のベッドで横になった。侑加は月呼の髪を優しくなでる。
「あっ、そうだ」
月呼はベッドからおり、ドレッサーの引き出しを開けた。
「侑加くん、これ、おぼえている?」
月呼は赤い毛糸を見せる。
「うん。最初に俺と前沙さんを繋げておいたやつだよね」
「私、捨てずに取っておいたの。これは特別なもののような気がして」
「結んであげるよ」
侑加は月呼の薬指に結び目をつくった。それから自分の薬指にも糸を組んで繋げる。ふたりは初めて出会った時と状態になった。
「運命の赤い糸って、本当にあったみたいだね」
月呼は侑加の目を見て言う。
「うん」
侑加も黒目がちの目で月呼を見ていた。暗闇でも彼の目はきらきらしていることがわかる。
月呼は侑加の顔にうっとりと見入りながら、エジプトのことわざを思い出す。ナイルの水を飲んだ者は再びナイルに戻ってくる。その言葉をもじって自分の人生を言うと、侑加を知った者は再び侑加のもとに戻ってくる、だと。月呼にとって、侑加の魅力はナイルの水と同じだ。一度侑加と出会えば、もう二度と彼のいない場所へは戻れない。
しばらくの間、ふたりは赤い糸で繋がったままでいた。
コメント
1件
読了しました……。赤い毛糸、まさか取ってあったんですね。最初に出会った日の「結び目」が、今度はふたりの指をちゃんと繋いでいて、じんわりきました。「運命の赤い糸、本当にあったみたいだね」の台詞と、エジプトのことわざを自分たちに重ねる月呼さんの想いが優しくて……。暗闇でもわかる侑加くんのきらきらした目も、とても印象的でした。静かで、それでいて確かな時間が流れていて、あったかい気持ちになりました🥀
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