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「私も好き、カイト……」
彼に応えて返すと、チュッ…と、軽くキスをされた。
「カイト……あのね、まだ本決まりではないんだけれど……あなたの移籍の話が、決まるかもしれないの」
まだ進行形でオフレコなことではあったけれど、少しだけでも彼に伝えてあげたかった。
「……本当に?」
カイトが文字通り目を丸くして、驚いた顔つきになる。
「うん、本当に……。約束、したでしょ? 居場所のないバンドから、きっとあなたを助けるって……」
「うん、だけど……信じられない……」
戸惑うように呟いて、キリトが言葉を切る。
「ああ…でも、だからか……それで、あいつらが、あんなことを……」
「そう……シュウたちに、話が漏れたみたいで……」
「そうだったんだ、ごめんな…ミク。俺のために、恐い目にあわせたりして……」
カイトの腕が伸びて、私の体をそっと抱き寄せ、
「ミクル……もう、二度と恐い思いなんか、させないから……。……俺が、ミクルのそばに、いるから……」
さらにギュッと抱きしめる。
「カイト……ありがとう……」
顎の下に手がかけられ、顔が上向かせられて、
「んっ……」
やさしいキスが落ちる。
……空が、やがて白んで明るくなってきて、
「あっ、俺……もう、帰らないと……」
見上げたカイがボソリと口にする。
「仕事なの…?」
「ああ…今日、生の歌番があるから、早めにスタジオ入らないとマズい…」
「生の歌番組って、大丈夫なの…?」と、とっさに不安がよぎる。
あんなことがあった後で、メンバーとじかに顔を合わすのは、問題ないんだろうかと思う。
「大丈夫だ。シュウは、もうわかったはずだから……心配はいらない」
私の不安を取り去るように、カイトがふっと笑って見せる。
「うん…そうだよね。大丈夫だよね…」
私からも笑顔を返すと、
「だから、今日の番組を、ミクルも見てほしい」
カイトが全てを吹っ切った、迷いのない表情で、そう口にした──。
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