side 阿部
俺はずっとずっと翔太が好きだ
6人時代のメンバーが次々と失恋していくのも横目に見てきた
翔太は、自信がなくて意地っ張りで、迂闊に近づき過ぎれば警戒心を持たれてしまう
だけど、新しく入ってきた3人はいとも簡単に翔太の懐に入り込んだ
ラウールは館さんの方に行ってくれたけど、めめも康二も強敵だ
あの3人の時とは違って、ここにきて俺は少し焦りを感じている
水族館を選んだのは、翔太が行きたがってたのもあるけど、俺と翔太の距離感にちょうどいいと思ったからだ
めめや康二に比べて、俺は翔太と永遠に話が弾むわけでもないし、沈黙が気まずくないわけでもない
ほどよく話せて、ほどよく黙れるし、薄暗い分表情がわかりにくいから、翔太も幾分かリラックスしてくれるはずだ
待ち合わせに現れた翔太はデニムにスニーカーを合わせてきた
スウェットとサンダルが登場しなかったことに、少しは意識してくれてるのかなと嬉しくなる
「今日の格好似合ってるね、かわいいよ」
「……どうせなら、かっこいいって言ってよ」
「ごめんごめん、行こうか」
「うん」
俺の運転する車で、最近できたという水族館に向かう
そこまで規模が大きいところではないが、プロジェクションマッピングとかもたくさん使われてて、家族向けというよりは大人向けの水族館だ
「わ、すご」
「綺麗だね」
時折足を止めながら、ゆったりと魚を見る
ちょこちょこと感想を言ったり、関連して仕事の話や近況のことを話したり
違う魚を見つけるたびにくるくると表情が変わる翔太が可愛くて思わず笑みが溢れる
周り終わって水族館に入ってるカフェで一休みする
さっきまで見てきた魚たちの話で盛り上がる
「なんかプライベートで阿部ちゃんと2人きりってなかなかないよね」
不意に翔太がそう言葉をこぼす
「そうだね、楽しんでくれてる?」
「え!うん、楽しいよ!」
「それならよかった」
我ながら女々しいなとは思うけど、確認せずにはいられなかった
「あべちゃんこそ、俺といて楽しいの?」
「え、もちろんだよ。じゃなきゃ誘わないし、俺は翔太と過ごすの結構好きだよ」
「…そっか」
翔太がちょっと照れくさそうにはにかむ
「そうだあべちゃん、この後ってどうするの?」
「え、特には…」
「え、水族館だけ?」
「俺はそのつもりだったけど…この後の時間も俺に使ってくれるの?」
「むしろ俺はそのつもりだったんだけど…」
それこそ2人で出かけるなんてことはほとんどしてきてないから、いきなり1日っていうのもどうかなって思って今日は水族館だけのつもりだった
だけど予想外に目の前の翔太は残念そうにしてて、ついちょっと踏み込んだ
「…じゃあ、俺んちくる?たぶんどこ行っても混雑してるだろうし」
「え、いいの?あべちゃんち行ってみたい…」
「いいよ、じゃあ行こうか」
そう言ってカフェの席を立った
コメント
2件
続きよみたぁい😆
