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東亰国立病院機構犬吠埼病院。
ロビーへと駆け込んだ一同は、息を切らせながら受付を抜ける。
「病室は?どこ?」
茜の問いに、焔垂は記憶をたどるように眉を寄せた。
「えーっと・・304号室だ!」
その瞬間、信愛は迷いなく駆け出した。
「急がなきゃ!」
突然走り出した高校生たちに、近くにいたナースが慌てて声を上げる。
「あなた達?ここは病院よ?院内は走ら──」
「すいません!緊急事態なんです!」
信愛は頭だけ下げると、そのまま言葉を遮るように走り去る。
「ちょっ、ちょっと!」
ナースの制止は、もう誰の耳にも届いていなかった。
廊下を全力で駆け抜ける焔垂が、前方を指差す。
「あそこだ!」
「早くしなきゃ!」
さくらも焦りを隠せない。
信愛は胸の鼓動を押さえながら、心の中で何度も千歳の名を呼び続けていた。
(千歳さん・・・早まらないで・・お願い)
やがて、一同は304号室の前へたどり着く。
信愛は勢いよく病室のドアを開け放った。
「千歳さん!」
病室には静かな空気が流れていた。
窓から差し込む柔らかな光の中、ベッドの上には鈴蘭が横たわっている。
そしてそんな眠る鈴蘭を、千歳は静かに見下ろしていた。
千歳は小さく口元を緩める。
「あら、もう来たの?」
まるで待っていたかのような声音だった。
「意外と早かったね」
信愛は一歩前へ踏み出す。
「千歳さん!やっぱり復讐は──」
だが、その言葉を遮るように、焔垂が突然前へ出た。
「お願いだ!」
そのまま深く頭を下げ、床へ膝をつく。
突然の土下座に、病室の空気が張り詰める。
「ほ、焔垂!?」
茜が目を丸くする。
焔垂は顔を上げ、静かに信愛へ問いかけた。
「白縫さん!」
信愛は振り返る。
「千歳さんは、そこに居るんだよな!」
信愛は千歳を見つめ、ゆっくりとうなずいた。
「う、うん・・・」
焔垂は息を整え、震える声で続ける。
「俺の言葉は千歳さんに届くか?」
#読みづらかったら言って
炭酸
47
桜井 かな
487
ぜんかもち
40
#高校生
利根きぬ
85
信愛は千歳から目を離さないまま答えた。
「言葉は・・・」
一瞬の沈黙。
千歳は何も言わず、焔垂を見つめ返している。
やがて、静かに首を縦へ動かした。
その小さな仕草を見届けた信愛は、そっと微笑む。
「う、うん・・・届いてる」
焔垂は安堵したように目を閉じ、小さく息を吐いた。
「わかった、届くって分かれば、それでいい」
焔垂はゆっくりと立ち上がると、千歳がいるであろう場所を真っすぐ見据えた。
その瞳には恐れも迷いもなく、ただ一つの願いだけが宿っている。
静かな病室に、彼の声だけが響いた。
「確かに千歳さんには相当な恨みがあるんだと思う」
言葉を選ぶように、一つひとつ丁寧に紡いでいく。
「たぶん俺なんかには想像も
出来ない苦しみを味わったんだと思う」
誰も口を挟まない。
焔垂は一度息を吸い、さらに続けた。
「でも、だからって三瓶先輩をここで殺しちゃったら」
拳を強く握り締める。
「そんなの、千歳さんを殺した連中と同じだろ?」
病室の空気が張り詰める。
「周りが何も言わないからって
好き勝手やってた三瓶先輩たちと同じだろ?」
その言葉には責める響きではなく、必死に引き止めたいという思いが込められていた。
「千歳さんには、そいつらと
同じ所に堕ちてもらいたくない」
焔垂はゆっくりと頭を下げる。
「だから──」
深く息を吸う。
「だから、チャンスが欲しい」
さらに頭を下げ、懇願するように言葉を重ねた。
「もし仮に、三瓶先輩に少しでも罪悪感があったら」
震える声で、それでも真っすぐ願う。
「殺す事は見逃してくれないか?
罪を償う機会を与えて欲しい」
焔垂は深々と頭を下げた。
「この通り!お願いします!」
床に額がつきそうなほどの深い礼。
その姿に、茜は思わず息をのむ。
「焔垂・・・」
病室は静まり返っていた。
誰も言葉を発せず、その場を支配していたのは沈黙だけだった。
やがて千歳はゆっくりと信愛の前まで静かに歩み寄り、耳元へ顔を寄せ、小さく何かを囁いた。
その言葉を聞き終えた信愛は、目を見開いたまま黙り込む。
千歳はそれ以上何も語らず、病室をあとにした。
残された信愛は、しばらく扉を見つめ続けていた。
焔垂がおそるおそる顔を上げる。
「白縫さん?」
信愛はゆっくりと振り返る。
「八乙女くん?」
「千歳さんは・・何て言ってる?」
信愛は静かに息をつき、微笑んだ。
「チャンスをあげるって」
焔垂の表情が一気に和らぐ。
だが信愛は続けた。
「でも、罪悪感がなかった時は
その時は私の好きにするって」
その意味を理解した焔垂は、小さく頷き、千歳に対する感謝の言葉を口にする。
「ありがとう・・本当にありがとう!」
コメント
1件
焔垂の土下座、めっちゃ泣けた……😭💦 自分の恨みを脇に置いて「千歳さんを♡♡♡た連中と同じになるな」って必死に止める姿、心臓ぎゅーってなったよ。しかも千歳が「チャンスあげる」って言ってくれた瞬間、一緒にホッとした……! でも「罪悪感なかったら好きにする」って保留がまた切ない。×××さんの描く焔垂のまっすぐさが光る回だった✨ 続きが気になりすぎる!