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(そうだ……あのドラマの刑事、わざと偽物の情報を流して、犯人を釣ったんだ。相手が完璧に証拠を隠したつもりになってるなら、あえて焦らせて動かすしかねぇ……!)
格闘の試合だって同じだ。防御が完璧で隙のない相手なら、あえてフェイントを仕掛けて、打って出てこさせればいい。
じわじわと、煌の瞳にギラリとした野性的な光が戻っていく。
「なぁ、燕花。証拠を隠される前に、あいつらを一網打尽にする方法がある」
「……何をするつもりですか、童殿。これ以上の独断は――」
「独断じゃねぇ、作戦だよ。あいつらに『嘘の情報』を流して釣るんだ」
煌は、不敵な笑みを浮かべて燕花を見据えた。
「静遠の耳に入るように、わざと罠の情報を流す。例えば……『朱雀の巫女が、鳳来堂の裏取引の決定的な証拠を持って、今夜極秘で玄武の商人と接触しようとしている』とかな。静遠と氷嵐ってやつが本当にグルなら、その情報を知ったら絶対に焦って、口封じか証拠奪還のために直接現場に現れるはずだ。そこを、あんたが張ってて現行犯で押さえる。――これなら、文句なしの『確たる証拠』になるだろ?」
煌の提案に、燕花は虚を突かれたように目を丸くした。
先ほどまでの凍てつくような怒気がわずかに和らぎ、代わりに熟練の工作員としての、鋭く細い光がその瞳に宿る。
「なるほど……。嘘の情報、ですか……」
燕花は顎に手を当て、煌の言葉を咀嚼するように繰り返した。
「宮廷の者たちは、真実を隠すことには長けていますが、自分たちに都合の悪い『偽の真実』を突きつけられた時の対処には慣れていない。確かに、それは面白そうな策ですが……。果たして、上手くいくでしょうか?」
「やってみなきゃわかんねぇだろ。じっと待ってて証拠を消されるのを指くわえて見てるより、よっぽどマシだ」
煌は、懐から「鳳来堂」の端切れを取り出し、それを燕花の目の前でひらつかせた。
「これがある。あいつ、これを見た時、明らかに動揺してたんだ。だったら、|これ《偽の証拠》これをネタに釣れば、絶対に食いついてくる。……俺が、その『囮』になってやるよ」
「……っ、それはダメです! 童殿を危険に晒すわけにはいきません!」
「なら、他に誰がいるって言うんだ。静遠は俺を警戒してる。その俺が動くからこそ、あいつは焦るんだ。……それに、いざとなったら助けてくれるだろ?」
不敵に笑う煌に、燕花は言葉を詰まらせた。
無茶苦茶な提案だ。あまりにも危うく、あまりにも短絡的。――けれど、その「型破り」な発想こそが、今の膠着状態を打破する唯一の鍵かもしれない。
燕花は深いため息をつくと、先ほどとは違う、どこか呆れたような、けれど確かな信頼を込めた笑みを浮かべた。
コメント
1件
おお、この話、めちゃくちゃ面白かったです!煌が追い詰められた状況から逆転の策をひらめく流れ、鳥肌立ちました。現代ドラマの刑事の手法を異世界で応用するって発想、煌らしい強かさと機転が光ってますね。自分から囮になると言い切る覚悟もカッコいい。燕花が「ダメです!」って止めるところから、呆れつつも信頼した笑みに変わる心情の動きも丁寧で、二人の関係性がぐっと深まった回でした。次が待ち遠しいです!