合鍵

目黒の家で食事を楽しんでいる。

渡辺は、何かあると食べなくなるので目黒は度々、家に呼んで食事が出来てるかチェックしている。

今のところ食べれてる。

目黒ー美味しい？

渡辺ーん、美味い。

目黒ー明日、どこか行く？

渡辺ーん〜ん、家にいる。散歩くらいはする。

目黒ー外に出たくないの？

渡辺ーん、家がいい。

目黒ー出たくない何かあった？

渡辺ーないない、ただ家でお前と2人きりでいたいだけ。

少し赤い顔して、そう言う。

要するにイチャイチャしたいだけだ。

目黒は安心して、明日は渡辺の言う通り、家で2人きりでいよう。

そう思っていたのに、朝起きたら渡辺の姿はなかった。

電話しても出ない。

LINE送っても既読が付かない。

リビングを見回すと、渡辺のバッグはある。

中には着替えと財布はあった。

携帯と家の鍵はない。

渡辺の家に向かう。

鍵を開けて中に入ると、ソファで丸くなって眠っている渡辺がいた。

近づくと頬に涙の痕。

ブランケットを持って来て渡辺にかける。

泣いて目黒の家から帰って来る何があった？

財布は目黒の家。

どうやって帰って来たのだろう？

優しく頭を撫でる。

小さな声で「帰って」と言う。

涙がまた流れている。

目黒ーどうやって帰って来たの？

小さく首を振る。

よく見ると震えている。

身体を優しく撫でる。

涙がますます流れてくる。

目黒ー俺が関わってるんだね？

何も言わない。

ただ小さく首を振る。

タクシーじゃない。

誰かの車に乗って帰って来た。

誰？

渡辺がまた小さく「帰って」と言う。

目黒ーちゃんと話してくれないと帰れない。約束でしょ？

渡辺はブランケットを握りしめ、涙を流しながら、首を振る。

いつも同じ。何も言わない。

食べなくなるのに。吐くのに。

目黒ーお婆ちゃんち行く？

首を振る。

目黒は小さくため息を吐く。