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## 第25話:『月の光を背に受けて』
雲を割って現れた月は、不気味なほどに白く、そして静かだった。
砂漠の戦場に、銀色の光が降り注ぐ。その中心で、満身創痍のプロト・ウイングエックスが、天を仰ぐようにして静止した。
「……逃がさねえって言っただろ。どこまで潜ろうが、無駄だぜ」
ゼロ・ドラートの声は、もはや怒りを超え、澄み渡っていた。
地下数百メートルへと逃げ込み、再度の強襲を狙う『グラップ・クラブ』。だが、ゼロ・システムのノイズは、月光と共に消え去っていた。いや、正確には「ノイズが心地よい音色に変わった」のだ。
「ミラ、準備はいいか。……お前の力を、貸してくれ」
ゼストのブリッジで、ミラは目を閉じた。彼女の全精神が、戦場のゼロ、そして眠れる巨神の回路へと接続される。
「……ええ。……月が、呼んでいる。……システム、認証。……鍵を開けます」
ミラの感応波がトリガーとなり、機体各部のリミッターが強制解除された。
「ゼスト! 全員そこから離れろ! カイル、ジュード! チャージが終わるまで、その場所を死守してくれ!」
ゼロの叫びと共に、ウイングエックスが爆発的な加速で上空へと舞い上がった。夜空を切り裂き、月へと手を伸ばすかのような飛翔。
『おい、ゼロ! 何をするつもりだ!』
『新入り! まさか、あの武器を使う気か!?』
カイルとジュードが驚愕の声を上げる中、天から一本の、目も眩むような**光の柱**が一直線に伸びた。月から注がれるマイクロウェーブが、ウイングエックスのコクピット部分へと注ぎ込まれる。
「サテライトシステム……起動!!」
ゼロがレバーを引き絞った。
その瞬間、背中に畳まれていた6枚のバインダーが展開し、さらに内側から新たな4枚のバインダーが滑り出した。**合計10枚の翼**が、孔雀の羽のように夜空に広がっていく。
リフレクターの一枚一枚が、月光を反射してエメラルドやダイヤモンドのような**宝石の輝き**を放ち始めた。
『バカな……やめろ! ゼロ!! あの光を放ってはならん!!』
ゼストのブリッジで、艦長が絶叫した。20年前、一瞬にして都市を消滅させた「死神の光」。その恐怖が、彼の脳裏をよぎる。しかし、ゼロの手は止まらない。
リフレクターが全開になると同時に、背部にマウントされていた二門のブラックキャノンが自動でスライドし、WXの両肩へとがっしりと固定された。さらに、ゼロは手持ちのサテライトバスターライフルを胸部前方のドッキングポートへと接続する。
「サテライトシステム、リンク。エネルギーチャージ、開始!」
**「チャージ開始……10、9……」**
リフレクターが青白く発光し、大気がバチバチと放電を始める。
地面では、カイルのバスターヴァイスが必死に敵の増援を食い止め、ジュードのシャドウエッジが地中から飛び出そうとするグラップ・クラブを牽制していた。
「……8、7……」
ゼストの乗組員たちは、窓の外に広がる異様な光景に釘付けになっていた。10代の少年たちは、その神々しいまでの美しさに息を呑み、戦争を知る年配者たちは、恐怖で膝を震わせた。
「……5、4……」
セレスはヴィヴァーチェのコクピットから、空を見上げていた。
「これが……プロトタイプの……本物の力……?」
「……2、1。チャージ完了。マイクロウェーブ受信終了」
ウイングエックスの全身が、溢れんばかりの光に包まれる。
ターゲットスコープの中央には、地中で逃げ惑うグラップ・クラブの熱源が、ハッキリと捉えられていた。
「過ちを繰り返すんじゃない。……これは、俺たちが未来を掴むための光だ!!」
ゼロがトリガーを引いた。
「サテライトキャノン……発射ぁぁぁぁぁぁっ!!」
**ドォォォォォォォォォン!!**
夜の闇が消えた。
放たれたエネルギーの奔流は、**直径500メートルに及ぶ光の柱**となり、天から地上へと突き刺さった。
逃げようとしていたグラップ・クラブは、その圧倒的な破壊力の前に、塵一つ残さず蒸発した。光は地表を貫き、岩盤を溶かし、巨大な爆鳴と共に大地をえぐり取っていく。
数秒後、光が収まった時、そこには直径約2キロメートル、深さ数百メートルに及ぶ、巨大なクレーターだけが残されていた。
熱波によって砂がガラス状に変質し、月光を反射して不気味に輝いている。
戦場には、静寂だけが戻ってきた。
ゼストの艦内では、誰もが言葉を失っていた。
「……勝った……のか?」
一人の若者が呟いたのを皮切りに、ある者は敵の殲滅に歓喜の声を上げ、抱き合った。しかし、それ以上に多くの者が、眼下に広がる「地獄の跡」を見て、ただ唖然としていた。
「……これが、ガンダム……。これが、私たちが恐れた力……」
艦長は力なく椅子に座り込んだ。その目には、安堵よりも深い絶望の色が混じっていた。
空中からゆっくりと下降してくるプロト・ウイングエックス。
10枚のバインダーが静かに閉じられていく。
ゼロは荒い呼吸を整えながら、手慣れた手つきでシステムを休止状態へと戻した。サテライトキャノンという「禁忌」を使いこなしながら、彼は以前よりも確実に、機体と、そしてミラと一体化していた。
「……終わったぜ、ミラ」
『……ええ。……おかえりなさい、ゼロ』
ミラの穏やかな声が、脳内に響く。
だが、この圧倒的な破壊の光を見たのは、ゼストの仲間たちだけではなかった。
遥か遠く、ルカス・ギルモアの要塞。
モニター越しに、砂漠に刻まれた巨大な傷跡を見ていたルカスは、狂気じみた笑みを浮かべた。
「素晴らしい。やはり君こそが、私の望む『神の火』だ。……さあ、次の舞台を用意しよう」
勝利の代償は、まだ始まったばかりだった。
**次回予告**
禁断の力を振るったゼロに、ゼストの仲間たちから向けられる、不信と恐怖の視線。
一方、ルカス軍はさらなる新型機、そして『第二のニュータイプ』を戦場へと投入する。
偽装潜伏するゼスト、そして明かされるミラの過去。
次回、『鏡の中の少女』
「ミラの過去に新しい敵…!?」