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## 第26話:『鏡の中の少女』
サテライトキャノンが放たれた後の砂漠は、死の静寂に包まれていた。
直径2キロメートルにわたってえぐり取られた大地。ガラス状に変質した砂が、月光を反射して不気味な鈍色に光っている。
プロト・ウイングエックス、バスターヴァイス、シャドウエッジの三機は、地獄の業火が通り過ぎた後のクレーターの縁に降り立った。
「……やりすぎよ、バカゼロ」
静寂を破ったのは、ヴィヴァーチェのコクピットから聞こえてきたセレスの、刺すような声だった。
「あんたの派手好きな性格は知ってるけど、これじゃ戦いじゃなくて消滅じゃない。ゼストの連中、腰を抜かして今頃震えてるわよ」
「へっ、あいつらが勝手に地中に潜りやがったからだろ。掃除の手間が省けたって言えよ」
ゼロは強がってみせたが、握った操縦桿の手はまだ微かに震えていた。サテライトシステムを介して感じたあの膨大なエネルギーの余韻が、体の芯に残っている。
「まあ、新入りの言うことも一理あるね。あのままじゃ、こっちがハサミでバラバラにされてた」
シャドウエッジのジュードが、軽快な、けれどどこか緊張の混じった声で続いた。
「でもさ、次はせめて事前に教えてくれよ。こっちまで蒸発しちゃうかと思ったぜ」
「……威力は認めるが、あれは兵器の域を超えている」
カイルのバスターヴァイスが、重々しく機体を動かす。
「だが、お前があの力を振るわなければ、ゼストは沈んでいた。……文句は言うが、背中は預けてやる。今のところは、な」
「……ふん。勝手にしろよ」
三者三様の、トゲはあるが確かな信頼の言葉。ゼロは赤いジャケットの襟を正し、小さく息を吐いた。
ゼストに帰還したパイロットたちを待っていたのは、熱狂的な歓喜ではなく、戸惑いと沈黙だった。
格納庫に降りたゼロの前に、重厚な足音を響かせて艦長が現れた。その顔には、勝利の喜びなど微塵もなかった。
「……ゼロ・ドラート。そしてパイロット諸君。まずは現状を伝える」
艦長はホログラムモニターを展開した。
「敵部隊は完全に消滅した。だが、あの光の柱は、数百キロ先からも観測されたはずだ。ルカス・ギルモアの本隊が、この地点を特定するのも時間の問題だろう。我々はこれより、さらに北の岩礁地帯へ移動し、擬装潜伏に入る」
「……オッサン、言いたいことはそれだけか?」
ゼロの問いに、艦長は深くため息をつき、視線をWXの影に隠れるように立っていたミラへと向けた。
「……いや。我々が何を相手にし、なぜルカスがその娘を狙うのか。……それを話しておく必要があるだろう」
艦長に促され、一同はブリーフィングルームへと集まった。セレスは守るようにミラの隣に座り、カイルとジュードも真剣な面持ちで席に着く。
「ミラ・エクリプス。彼女は、20年前の旧連邦が作り出した『人工的な神』の成れの果てだ」
艦長の声が、静かな部屋に響く。
「彼女は生まれつき、他者の思考を読み、遠方の事象を捉える特異なニュータイプ能力を持っていた。連邦は幼い彼女を施設に閉じ込め、サテライトシステム運用のための『生体パーツ』として実験を繰り返したのだ」
「生体パーツ……だと?」
ゼロが拳を握りしめる。
「サテライトキャノンは、月から放たれる超高出力のマイクロウェーブを受信して放つ。だが、その照準設定は極めて困難だ。ミラは、そのマイクロウェーブを導く『GPS』の役割、そして発射の承認を下す『生体認証鍵』として調整された。彼女がいなければ、あのシステムはただの鉄屑に過ぎない。ルカスが彼女を欲するのは、サテライトシステムという旧時代の遺産を、現代の戦場に完全復活させるためだ」
ミラは、無言で自分の手を見つめていた。幼い頃、冷たい手術台の上で、頭の中に直接機械の声を流し込まれた記憶。それは彼女にとって、消えない呪いのようなものだった。
「ルカスは、かつてその研究所の出資者の一人だった。……彼は、世界を焼き尽くしたあの光こそが、人類を導く唯一の導標だと信じている。だからこそ、ミラとWXを執拗に追うのだ」
沈黙が流れる中、ミラがポツリと口を開いた。
「……私だけじゃない。……あそこには、他にもいたから」
「他にも?」
セレスが驚いてミラを覗き込む。
「……私の、鏡のような子。……暗い部屋で、いつも私を見ていた……。その子も、私と同じ……『光』を待っていた」
その頃。
ルカス・ギルモアの巨大要塞『ラスト・ヘヴン』の深部。
青白い培養液に満たされたカプセルが、静かに開こうとしていた。
「……目覚めの時間だ。ミラ・エクリプスが光を放った。君も、その光に応えなくてはならない」
ルカスの言葉と共に、一人の少女がゆっくりと目を開けた。
その少女の顔立ちは、ミラに驚くほど酷似している。だが、決定的な違いがあった。
ミラのプラチナブロンドとは対照的な、夜の闇を溶かしたような**漆黒の髪**。
そして、ミラの蒼い瞳とは正反対の、燃えるような**深紅の瞳**。
少女は、何も映していない瞳でルカスを見つめ、機械的な声で囁いた。
「……システム、リンク。……ミラ……見つけた……。今度は、私が……鍵になる……」
ルカスは満足げに微笑み、彼女の頭をなでた。
「そうだ。君こそが、真のニュータイプ。私の新しい『鏡』だ、ノア」
砂漠の闇の中で、もう一つの「ガンダム」が産声を上げようとしていた。
それは、ミラが持っていた優しささえも焼き尽くすための、純粋な破壊の化身。
ゼストの旅路に、さらなる不穏な影が差し込もうとしていた。
ー次回予告ー
戦いの傷を癒すべく、ゼスト内に設けられた束の間の休息。
料理当番を任されたゼロと、慣れない手つきで包丁を握るミラ。
セレスの意外な特技も明らかになり、艦内は笑いに包まれるが……。
次回、『鋼鉄のキッチン、奮闘記!』
「おい、この肉、まだ生じゃねえか! セレス、なんとかしろ!!」