【gr視点】
A国との戦争が終わってから数ヶ月が経った。
shpの怪我も完治し、今ではciと共にバイクで日帰り旅行だと出ていくほど元気になった。
パズルはピースが一つでも欠ければ完成しない。
その1つの綻びですべてが破綻してしまうこともある。
まさにその様に。
shpを起因としてciが崩れかけたが、軍団長であるutがなんとか持ちこたえさせた。
アイツ、こういうときはいい仕事をしやがるんだ。
そんなことができるなら普段の仕事もちゃんとやってほしいものだが。
…まあ、書記長様に追いかけられる俺も人のことは言えないか。笑
そしてzmだが。
未だに目を覚まさない。
外傷は完全に治り、集中治療室から解放され、ここ最近は医務室で寝ている。
きっとA国にいる間は寝ても疲れがとれなかったのだろう。
手術成功のインカムの後、その日のうちに集中治療室に寄り、近くで顔を見た。
全身を管で繋がれている彼は見るに耐えない容姿をしていた。
げっそりとまではいかないが、shpよりも華奢な体、それでいて筋肉が美しく鍛えられていた。
決して標準とは言えない。
軍人とは言えない肉体である。
顔は死人のように青白く、隈が広がる。
そんな体に残る数々の傷。
傷は塞がっているが跡がくっきりと残っていることから、 訓練中に作られ、それを放置させられていたのだろうと考察できる。
腕、胸、腹部に複数の縫い跡。
snの努力が滲み出ていると同時にzmの心の傷を深く感じる。
特に胸や脚には肉体を掘り返したような深い傷跡を見た。
snによると、ここに身体に電流を流すための装置が埋め込まれていたらしい。
非人道的すぎるな。
背中は見えてはいないが、二の腕あたりに赤い線の跡があった。
鞭で叩かれていたのだろうか。
扱いが酷すぎる。
まあなんにしても、ここまで目を覚まさないとなると、精神的な面が大きく関わっているのかと思う。
傷や記憶が足枷となってzmを縛りつける。
それから抜け出し、目を開けて瞳をこちらに覗かせてくれるまで。
我々は見守るしかない。祈るしかない。
ああ。何かできないものだろうか。
はやく、はやく話をしたい。
…あ。肝心なものを忘れていた。
書類を作らなくては。
パソコンを起動し、ファイルを開く。
プリンターと接続し、プリントアウトされた紙を手に取り、椅子に座る。
ペンを手に取り、名前を記入する。
さて、彼はここに名前を書いて私達の手をとってくれるだろうか。
…ダメだと手を振り払われても、俺は駄々をこねるがな。
【em視点】
sn「お、emさんまた来たね!!」
em「こんにちはsnさん。また来ました。お手伝いさせてください。」
sn「ありがと!!じゃあ、道具の消毒お願いしてもいいかな?」
em「はい!もちろんです」
戦争が終わってから季節が2度変わり、 まだぎらぎらと輝いていた太陽も今では落ち着き、寒さが目立つ季節になりました。
毎日のように医務室に来ては、お手伝いをして、彼の寝顔を見て、退室する。
それが日課です。
あの緑の瞳をもう一度みたい。
笑った顔が見たい。
真剣な顔が見たい。
怒ったらどんな顔をするのか。
泣くときはどんな顔をして泣くのか。
私達と笑い会うときはどんな顔をしているのか。
目覚めたあとのことばかり頭に浮かぶ。
1日でも、1時間でも、1分でも、1秒でも。
はやく、
はやく……。
【rbr視点】
戦争が終わったあと、どうしてもzmの戦闘技術が見たくて、A国中の監視カメラをハッキングして過去の訓練の記録映像や戦争の映像を見た。
はっきり言って目を疑った。
総統とtnが惚れたと言っていたのにも納得がいった。
やっている行為自体は護身、または相手を殺傷することが理由なのに、
一つの絵画を見ているような、一種の芸術を見ているような、
言葉で表しきれない、今までにない美しさをみた。
けれど、zmがどこか堅苦しい、縛られているような雰囲気を漂わせているのは気のせいではないだろう。
きっとA国総統による弊害である。
特に戦闘訓練ではzmを幹部が囲い、四面楚歌の状況をつくり、木刀VS武器の訓練が行われていた。
一対数十名。
数的不利からの打開はもちろん、武力を使わずとも武力に勝る力を蓄えさせようとしていた。
開始の合図から時間が立つほどボロボロになっていくzmは痛々しかった。
徐々に美しさは消え、荒々しくなっていく。
最終的には気絶し、それでも戦えと叩かれ、一蹴され…。
…見るに耐えん。
ほんと、アイツはもったいないことをしたとつくづく思う。
しかし戦争時の戦闘記録映像を見てしまえばそんな負の空気はかき消され、美しさに上書きされる。
「……ふふ」
手を口元に置いて表情筋を落ち着かせようとするが、頬のニヤケが止まらない。
まだ、まだ彼を見ていたい。
そんな思いから今日、emが攫われたという一連を近辺の監視カメラの、映像を繋ぎ合わせるようにしてみた。
…
「………まっっっじぃ???」
これ、人間やないやろ。
ut「せやろ?俺もそう思う。」
rbr「ゔお゙ァ!?!?びっくりするやんけいきなり来んなや!!!」
ut「ええ?僕さっきからいたし、声かけたで??聞こえてなかったんとちゃいますの??」
rbr「ええ……そんなに真剣に見とったんか俺ェ………。ってか、声漏れとった??」
ut「ふふッ笑。おん、漏れとったし、随分長い時間見てたな。
ま、わからんこともない。grちゃんもtnちも惚れたの分かるし、僕ももっと見たくなった。」
rbr「せやな。子供助けて、遅れて登場して、自分を犠牲に助けて…そんな人間が俺らの味方になっちまったら……
…まさに」
「「正義の味方」」
ut「…やんな??」
rbr「ふははッ!!全くの同感か。ま、そうなるよな。
もう交代の時間か??」
ut「せやで、お疲れさん。」
rbr「ふぃーーお疲れさーん、頑張れよ!!」
ut「任せとき!!」
俺とutで二人交代制の監視体制を行っている。
俺はかなりの時間見てたみたいや……
いやーーーそれにしても引き込まれたな。
正義の味方さん。
はよ声聞きたいな。
部屋に戻る前に医務室でも寄るか。
窓からは大きな月が静かな夜空に浮かんでいる。
その光を受ける青々とした草は風に吹かれてなびいている。
今日は風が強いな。なにか起こりそう。
【zm視点】
辛い。
痛い。
暗い。
怖い。
逃げたい。
助けて。
もう限界なんや。
嫌や。
疲れたんだ。
寝かせて。
このまま、
ずっと。
自分の限界は自分が一番わかる。
俺を生かさないで。
助けないで。
思考が交差する。
やめて。
やめないで。
僕を助けて。
俺を助けないで。
痛い。
痛くない。
僕は自由になりたい。
俺を縛っていて。見捨てないで。捨てないで。
僕に任せて。
俺に期待しないで。見損なわないで。
僕も仲間にして。
俺を仲間にしてもどうせまた洗脳するでしょ。
遠くからずっと聞こえていたノイズが鮮明になる。
「ほんま、あんさんは正義の味方やと思うで。 」
また「正義」か。
だから、俺は違うんやって。
そんな大層な人間やない。
見合う人間じゃない。
やめて。
そう呼ばないで。
「私もそう思います」
やめて、
「助けてくださったときまさに、」
やめて…………
「この人が私にとっての正義なんやなぁと思いました。」
…ッやめて!!!!!
【sn視点】
今日は夜にrbrが来た。
zmが医務室に移ってからは毎日代わる代わる幹部が様子を見に来るようになった。
おかげでいつもは静かだった医務室も毎日うるさいし、内ゲバ巻き込まれて壁破壊されたし……。。
もう、ほんとよく寝られるね、君は。笑
もうそろそろ起きてもいいんじゃない??
みんな待ってるよ。
遠くから瞳を覗かせない寝顔に向けて心の中で声をかける。
今は近くにrbrがいる。
rbr「今日、監視カメラであんさんの戦闘時の映像見とったんやけどな。
よー美しく戦うわぁおもてん。
剣も、銃も、弓も、爆弾も。なぁんでもできるなんて羨ましいわ!!」
rbr「…でも、まずemを救ってくれてありがとう。
って、毎回俺言うてるよな、ははッ笑
……ほんと、あんさんは正義の味方やと思うで。」
まじでzmのことを皆正義の〇〇っていうなぁ
ま、俺も思ってるけど。
正義の味方だってね。
emはzmのベッドを区切るカーテンを開けて、rbrと共感の意を伝えた。
その時、
ひゅっと音が聞こえた。
zm「かッ……ハッ、ヒュッ!?!?、ふッ…かヒュッ!!!」
目が見開かれ、全身が痙攣し、呼吸が正常じゃない。
まずーい。。。。
rbr「し…、snッ!?!?」
rbr「え、な、なになに、どーすりゃええん!?!?」
急いで駆け寄り、肩を叩いて意識の確認をする。
sn「zmッ!!!!zm聞こえるッ???!…聞こえてたら手、握って!!!」
冷えた手を握るが、握り返してこない。
ただ力が入っていないのか、それとも意識がないのか。
sn「聞こえてたら落ち着いて、目を閉じてみてッ!!!!」
閉じない。瞬きもしない。
後者か。
sn「em、2番目の棚の5段目!!!抗不安薬取って来て!!!
rbrは点滴の針1回とって、そこにある色違いの点滴パック持ってきて!!!」
「「り、りょうかい!!」」
過呼吸とは、一見酸素や二酸化炭素を吸いすぎているように見えるが、実際はそうではない。
呼吸が浅く、速くなる。
そうすることで血管内の二酸化炭素濃度が低下し、血液がアルカリ性に傾く。
そうして血管が収縮して後に手足の痙攣や痺れを引き起こす。
過呼吸の原因として挙げられるものは複数あるけど、今のzmの状態を見るからに過去のトラウマや最後の戦争時の緊張、単純に環境の変化からくるストレスだと考えられる。
emには抗不安薬を、rbrには痙攣で点滴の針が動いて血管を傷つけないように、一度取るようにお願いした。
薬が効くまでは時間がかかるし、zmの呼吸はまだ落ち着いていないし、過呼吸が悪化すると、最悪心停止だ。
em「これですよね!!」
sn「そう、ありがとう」
sn「rbr、zmの胸を優しく正常の呼吸のペースで押してて」
rbr「お、う。わかった!!」
こういうときこそ落ち着いて、医者なんだ、俺は。
zm「ふッ……ヒュッ!!ッは、はッ、ァ…ッ!!?」
少し改善したけどまだまだだな。
まずは安定させるところから。
zmには悪いけど、薬を飲んでもらわなくちゃ。
彼は苦しそうに口を開けたり閉じたり、はくはくとさせている。
好都合。
sn「…ちょっと苦いのがいくよ、ちゃんと飲んでね」
口に薬を入れ、水も入れた。
吐き出さないように、口を閉じさせた。
飲み込んでくれ……
zm「ひゅッ…す、はッ…ッふ、…コクン、んぁ…」
喉の嚥下をみて一安心。
それから、口を抑えていたのもあって、鼻から息を吸わせられた。
rbrが呼吸に合わせて胸を上下させてくれていたから落ち着いてきた。
zm「すぅ、はッ…す、、…はァ……」
目もちゃんと閉じたし、痙攣も治まった。
はぁーーー………
よかった。大事に至る前にどうにかできた。
sn「…ふぅ。びっくりしたーーー…」
rbr「は、ぇ。大丈夫なん?」
sn「ストレスが誘発した過呼吸だね。環境の変化もあるし、元々のトラウマもあるだろうし…。」
そうだとしたら、目が覚めるまで外部から必要以上に接触するのは良くないな。
機会を減らすか…なしにするか……
あとで総統に要相談だな。
なんて思ったとき、
em「外部からの刺激をなくすために接触禁止なんて…言いませんよね、snさん」
うげ。
心読まれたーーーー(ちがう)
sn「うーん。せっかく通ってくれてるけど、
こうなっちゃった以上、とりあえず精神が安定するまで、目が覚めるまでの当分は幹部も来れないようになるかな…」
em「…そんなッ…!!!?」
rbr「……」
sn「みんなが速く目が覚めたzmに会いたがるのはわかるけど、相手は全くなにもわからない場所で寝かされてるんだから、zmを思うんだったら………、ね?
取り敢えず総統に相談するけど…」
しばらく沈黙が流れる。
きまずい。
今日はもう夕飯も皆済ませているし、時刻は23:30を回ろろうとしている。
十分深夜だ。
sn「さ、二人とも。さっきは助かったよ本当に。
俺一人だったらもうなってたことやら……、
本当にありがとう。もう夜も遅いし部屋でゆっくり休みな?」
em「…………、はぃ。」
rbr「…わかった、」
医務室のドアまで二人がゆっくりとぼとぼ歩いていく。
今日の目の前で起こった過呼吸という光景が、二人を縛らないといいな。
…俺があの時にあの言葉を言ったから。
…そもそも今日医務室に行かなければzmがああにはならなかったかも。
そんな思考には至って欲しくない。
zmの過呼吸に関して言えば、ストレスからだから、いつ起きても遅かれ早かれであった。
きぃ
医務室のドアが音を立てて開く。
em「…おやすみなさい。」
rbr「………おやすみ」
sn「うん。 おやすみ。」
心なしか二人の声に元気がない。
扉が閉まる最後の最後まで、彼ら二人はzmを視界に捉えていた。
ふふ。
はやく起きてもいいんじゃない?
ここなら誰も縛らない。
見捨てない。見損なわない。
それに、君を待ち侘び、大切にしようとしている。
失敗?すればいいさ、誰かが必ずカバーする。
恐怖?恐ればいいさ、誰かを介して必ず克服できる。
植え付けられた記憶の足枷の重圧。
俺には計り知れないけど。
その足枷、俺らなら外せる。必ず。
だから、おいでよ。
顔を見せてよ。
声を聴かせてよ。
一度切りますね。
なんていうか、展開の切れるところがあんまなくて、だらだら書いちゃってました。
そんで投稿が大遅刻するっていう。
わかりますか負の連鎖なんですよ。
結局私が悪いんすけど。さーせん。
まあ、なんていうんですかね。
こんなスローペースの私を待ってくださる皆様、ちゅきちゅきらぶりーちゃんです!!!
まだこれからテストが控えてますので、もう少しお待ちいただければと存じます。
テストなんて滅 びてしまえ!!!(大声)
さて、この長編も終わりが見えかけてきました
最後までご愛読のほど、よろしくお願いします(土下座)
次回はできるだけ早く投稿できるように精進します^^
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