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『貴方想い、散りゆく恋』〜身分違いの恋だとしても〜
第捌話 愛する人の救出
フィンレイ様と無事両想いになった私は
今日のデートに浮かれていた。
『♪( ◜ω◝و(و “』
『主様ご機嫌ですね!』
『分かっちゃう?だって今日はフィンレイ様とのデートだからね!何着ていこうかな〜。』
私はクローゼットを開けて服を選ぶ。
『うーん、どの組み合わせがいいかな…。』
と、その時――。
コンコンっ。
『ん?』
『主様、今開けても大丈夫ですか?』
『う、うん。いいよ。』
ガチャ
『身支度なら俺に任せてください。』
『俺もいるっすよ。』
『フルーレにアモン!どうして…』
『主様のためっすよ。フィンレイ様とデートなんすから。特別可愛くしなきゃダメっすよ。』
『アモン…。』
『服のコーディネートは俺が。アモンさんは髪をお願いします。』
『了解っす。』
アモンは私の後ろに回り込み、髪を梳いていく。
『デートの定番といえば三つ編みのハーフアップっすよね。ここで編み込んで…。あとはこれは俺からのプレゼントっす。』
アモンは私に薔薇の髪飾りを刺した。
『薔薇…?』
『はい。主様に似合うと思って。』
『ありがとう…。』
(ま、ちょっとした牽制でもあるっすけど…。俺のものにはならないのはもう分かってるっすけど。そう簡単に諦められないっすよ。)
『決まりましたよ、主様。』
フルーレは全身コーディネートを組んでくれた。
『上のトップスは春らしさを思わせる桜色で…下は涼しげな風を思わせる白いロングスカート…。鞄は黒い斜めがけのバックに…。靴は少し背伸びをしてヒールがついてる黒い靴にしました。』
『可愛い……。』
『フィンレイ様と言えば黒ですから。そして、最後はメイクです。コーデに合わせて大人メイクにしますね。唇はもちろん赤色です。』
『2人とも…何から何までありがとう。』
『これくらい当然っすよ。』
『そうですよ。俺達は主様の執事ですからね。』
2人はニコッと私に微笑む。
『ありがとう、じゃあ、私行ってくる。』
私はエントランスに向かう。
『お気を付けて。主様。』
『フィンレイ様とカフェで待ち合わせなんですよね。』
『うん。スイーツが美味しくて評判のル・シュパーレットって名前の。』
『フィンレイ様もお迎えに来てくれればいいのにな。』
『ううん。私がお願いしたの。デートの日くらい、自分の身分を忘れて、一人の人間として楽しみたいって。』
『そうか、主様らしいな。気をつけて行けよ。』
『うん、行ってきます!』
『行ってらっしゃいませ。主様。』
私は足取り軽くエスポワールへ向かった
そして、それを見ていた黒い影が――。
『これからフィンレイは悪魔執事の主とデート、か。ふん…そう上手くいくと思うなよ。』
コツコツ…。
悪魔執事の主の後をつける。
『楽しみすぎて早くついてしまったな。』
(雪華はどんな格好をしてくるのか……私に合わせてくると思って黒で統一してきたが…。)
私は時計を見てニヤついた。
『早く会いたいな。』
『晴れてよかった。あ、あそこのカフェかな?』
カフェの前でフィンレイ様を見つけて
走り出そうとした。その時――。
ガバッ!
『むぐっ!』
(っ、苦しい、誰…っ?ダメ、息、が――。
フィンレイ…様…。)
そこで私の意識は途切れた。
数時間後――。
『ん…あれ、ここは……?』
『目が覚めたか。』
『あ、貴方は――。』
『忘れたのか。お前とフィンレイとの婚約パーティで話しただろう。』
『なんで貴方がこんなこと…っ。』
『お前がフィンレイに相応しくないからだ。』
『!!』
『奴も奴だ。こんな平民の小娘にうつつを抜かして。あれはもう我らが主君、フィンレイ・グロバナーではない。堕落したただの塵だ。』
『っ…!フィンレイ様のこと悪く言わないで!』
『!!』
『フィンレイ様は…かっこよくて、優しくて、どんな時でも正しくいる冷静な人です。私がどんな貴族に罵られても助けてくれました。そんな素敵な人をそんな風に言わないでっ!!』
『っ……。』
一方その頃――
『遅いな…。雪華に何かあったのだろうか…。』
私はデビルズパレスに向かおうと歩き始めた。
『ロノに頼まれたのはこれで終わりっすね。』
俺とナックさんはエスポワールに買い物に来ていた。
『そうですね。主様今頃楽しんでるでしょうか。』
『ん?』
『アモン君、どうしました?』
『この髪飾り……俺が主様に今日刺してあげたものっす。』
『それがどうしてここに……?』
『…嫌な予感がします。』
『まさか、主様になにか…?』
『!アモン君に、ナック君。ちょうど良かった。』
『『フィンレイ様!?』』
『どうしてここに……?主様は?』
『実は、まだ来ていないんだ。』
『『!?』』
『だからまだ屋敷にいると思って、今から向かおうと…。』
『そんなはずないっすよ…?だって、楽しそうに出かけたんすから……。』
俺はギュッと薔薇の髪飾りを握りしめる。
『アモン君、それは…?』
『俺が主様に似合うと思って、付けた髪飾りっす。それがそこに落ちてて…。』
『…。』
全身の血が凍る気がした。
『何者かに攫われたのかもしれません。この落ちてた髪飾りが何よりの証拠です。』
『簡単に取れるものじゃないっすよ。乱暴に引っ張られない限り取れないっす。』
『雪華……っ。』
ぎゅっと拳を握り締める。
『アモン君。君は先にフィンレイ様と主様を探して下さい。私は屋敷に戻り、皆さんに知らせてきます。』
『了解っす!』
『ありがとう、アモン君。ナック君。』
『主様の一大事なのです。助けに行くのが執事ですよ。』
『主様より大切なものなんてないっすよ♪』
こうして、私と執事達は周辺の聞き込みを行い、怪しい者がいなかったか探した。
『チッ。主様を攫うなんて命知らずなクソ野郎が居たもんだな。』
『あぁ。絶対に許さない。』
『とにかく今は早く主様を探さないと…。』
バタバタバタ…っ!
『みなさん、主様の場所がわかりましたよ。』
『ベリアン、主様はどこへ……。』
『主様が攫われた場所はハウレス君の行きつけのお菓子屋さんです。店の中で見ていた店主が主様のことを覚えていました。』
『お前のお菓子好きが役に立ったな。』
『そ、そうだな。主様を連れて何度も来たことがあるからな。』
『主様を攫った人は身なりからして貴族だそうです。そして、胸元にはグロバナー家の紋章が……』
『……グロバナー家の憲兵ともあろうものが私の雪華を攫ったと。…ルカス。』
『はい。』
『今すぐ馬車を出してくれ。』
『かしこまりました。フィンレイ様。』
『ムーちゃん。ひと仕事買ってくれるかな?』
『はい!任せて下さい!』
一方その頃――
『っ、うるさい、黙れ!』
ビリィッ!
貴族の持っていたナイフが私の服を破る。
『あ…っ。』
(せっかくフルーレが選んでくれたのに…っ。)
『これが誇り高き貴族のすること…?』
『は…?』
『あんたみたいな人がフィンレイ様に仕えていたなんて信じられない。』
『ぐ…っ。自分の立場が分かってないみたいだな。おい!』
『!?』
その男の掛け声で入ってきたのは沢山の男達。
『こいつをめちゃくちゃにすれば金をたんまりくれてやる。』
『いいんですかぁ、貴族様。まぁ俺らも悪魔執事にはむしゃくしゃしてたし、あんたに恨みはねぇが金の為なら仕方ねぇな。』
『っ、嫌……っ。』
男の手が私を掴もうとした――。
『…けて、助けて…フィンレイ様――!!』
ドガーンっ!!
勢いよくドアを蹴破る音がする。
『!!』
『主様!ご無事ですか!!』
『みんな…っ。』
ジャキッ
みんなが武器を構える。
『フィンレイ様。私達が道を開きます。フィンレイ様は主様の所へ』
『ああ。ありがとう、ルカス。』
コツコツ……。
『っ、お前ら、やれっ!』
一斉に執事たちに襲いかかる。
『うぐっ!』『ぐあっ!』
『口ほどにもねぇな…。』
『ナック、倒した奴を縛るぞ。』
『かしこまりました。』
『雪華…っ!』
ギュッ
フィンレイ様は私を抱き締める。
『済まなかった…私が迎えに行かなかったからこんな……。』
『フィンレイ様……っ。怖かったです……っ。』
私は雪華の縄を解き、優しく頭を撫で続けた。
『さて…。この私に牙を立てた君にはお仕置きが必要なようだな。』
『っ、わ、私はただその女が貴方様に相応しいか見定めを…。』
『ほぉ。君は私の決めたことに反対するのか?』
『そ、それは…。』
『君のした行為は許されないことだ。この私に歯向かい、挙句、雪華にも手を出した。グロバナー家憲兵の紋章を剥奪…。禁錮10年の刑だ。』
『く…っ。くそ…っ!!!』
こうして、男達は縛り上げられ、グロバナー家憲兵に引き渡された。
『あの〜めでたしめでたしなとこ悪いんだけど…主様さ。それ…。』
『え?』
『露出が……。』
『っっ……!!』
(そうだ、切られたままだ……っ!)
ファサっ…。
『私の羽織りをかけていろ。』
『あ、ありがとう、ございます…。』
『ロノ、お前見ただろ。』
『は、はぁ!?お前もだろ!』
『2人とも、帰ったらマナー指導ですよ(◜ᴗ◝ )』
『……///』
『このむっつりハウレス。』
『……っ、ぁ、え、と…。』
『ここにもいたっすね…。』
『わ、私は何も見てませんからね。』
『僕もですよ!』
『……。』
(フィンレイ様…隅に置けませんね。本当にさすが紳士です。)
『ミヤジ先生、今何があったのですか?』
『ラト君にはまだ早い…かな。』
私はラト君の目を塞いだ。
『……俺は何も見てない。』
(主様の胸は大きめなんだな…。)
『今貴方が思ってることを口に出して下さい。斬ります。(◜ᴗ◝ )』
『ハナマルさん…(呆)』
『裸を見たくらいで動揺するとは貴様ら煩悩まみれか?』
『あはは…。』
『ふっ。君達の執事は面白い男だらけだな。』
『はい。私のことをいつも守ってくれる私の自慢の執事です。』
『…さて、雪華。行こう。』
『え、どこに……。』
『決まってるだろう?デートの続きだ。』
フィンレイ様は私に手を差し出す。
『付き合ってくれるかな?雪華。』
『!はい…!』
その手を握り、一緒に走り出した。
『完全に完敗だね。ベリアン。』
『えぇ。でも、私たちが見たかったのはあの笑顔ですから。』
私たちは2人を笑顔で見送る。
次回予告
2人きりの時間。それはとてもとても甘いひととき。そして、フィンレイ様は私に告げる――。
『雪華。改めて君に伝えたいことがあるんだ。』
『フィンレイ様――。』
『――――。』
フィンレイ様が私に告げたのは――
次回
最終話 身分違いの恋でも