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永琳視点
永琳は「月の頭脳」と呼ばれた天才。
月の民として、不老不死に限りなく近い存在。
でも本当は――彼女もまた、怖かった。
「永遠であることは、なぜかしら。時々、ひどく孤独に感じるのよ」
誰よりも知識があり、誰よりも長く生きてきた。
だから、わかってしまった。
自分以外のすべてが「いつか、死ぬ」ってことを。
鈴仙。
てゐ。
そして、昔の兎たち――
彼女たちは、「今」しか見ていなかった。
それがとても、愛おしかった。
だからこそ。
「れいせん、そこの棚に置いてある薬を取ってちょうだい」
「……れいせん? 返事くらいしてよ……てゐでも、いいから……」
「あっ……また言っちゃった……」
自分が無意識に、**「いない子の名前を呼んでいる」**と気づいた時、
永琳は初めて、“本当の意味での孤独”を知った。
彼女は、不老不死を研究していた。
そして、自らもそれに近づいた。
でも――
「私の隣にいてくれる子たちは、皆、いつか死んでいく」
「私はそれを見届けることしかできないの?」
永遠の時間は、孤独を濃くする。
有限の命は、輝いて消える。
それを何度も見てきた永琳は、決して“無表情”ではいられなかった。
死者蘇生異変。
死んだはずの者たちが生き返り、幻想郷が“元通り”になった。
「これが、正常だっていうの? 魔理沙……あなた、何をしてしまったの……?」
異常だと気づいた者の目だけが、正しさを奪われる。
知ってしまったがゆえに、永琳は笑えなかった。
蘇った兎たちは、永遠ではない。
また、死ぬ。
また、永琳を残して。
「れいせん……ねえ、なんであなたたちは“置いていく”の?」
永琳の知識では、それに答えることができなかった。
なぜ、人は死ぬのか。
なぜ、別れが避けられないのか。
なぜ、自分はそれを何度も経験しなきゃならないのか。
「姫様が寂しがってるんだから、たまには帰ってきてくれたって……いいじゃない……」
「あの馬鹿兎共が……ほんとにもう……」