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ミリエットがヨハンの元に連れ去られてから、早くも十日余りが経とうとしていた。
あの日以来、ヨハンがミリエットの貞操を奪おうとする様子はない。それどころか、顔を合わせることすらなかった。
恐らくは、他に優先すべきことがあるのだ。
例えば――アルタール王国・ナドラ王国・ウォズ公国の三国同盟に圧倒的な勝利を収めるための軍議。
事実、部屋の窓から外を見つめていると、たびたび将官と思しき軍服の人物が砦を出入りする様子が見られた。
(ヴォルフラム様……)
彼こそが、ミリエットの最大の弱点だ、と。ヨハンは先日の一件で熟知しているはず。
そして――逆もまた然り。
もし、ミリエットの命を盾に取られるようなことがあったら、ヴォルフラムはどうするだろうか。
国か、それとも愛する女性か。
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