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私
達は、皆同じ人間だ。
だが、なぜこうまで違うのか……。
私達の脳の構造は複雑で、 理解できないものや、納得できないことだらけだ。
しかし、そんなことを言っていても始まらない。
まずは、自分の目で見てみることだ。
自分が何者なのかを知ることから始めるのだ。
そして、他人を理解するためにも、 自分自身を理解しなければならない。
私達の世界は、広いようで狭いものだ。
だから、自分と向き合えばいいんだ。
君だってきっとそうだったろう? この世界は、 どこかおかしいんだからさ。
この世界の真実は、 誰も知らないんだよ。
「……うーん、やっぱりダメだなぁ」
薄暗い部屋の中で男が呟いた。その声色からは落胆の色が見え隠れしている。
男は椅子に深く腰掛けながら天井を見上げていた。視線の先にある蛍光灯はチカチカと点滅を繰り返している。その光景を見て男の口から溜息が漏れ出た。
(そろそろ買い替え時かな)
そんなことを思いながらも男はなかなか動くことができないでいた。それは男が今現在仕事中であるからなのだが……。
しかしそれも仕方がない。今は深夜一時過ぎだ。こんな時間に仕事をしている人間などそうはいないだろう。だが、この部屋に一人だけ例外がいるのだ。それが彼だった。
彼の名前は『藤宮誠一』。二十四歳の独身男性である。現在は一人暮らしをしており、昼間の仕事とは別に夜中の仕事をこなして生活していた。所謂フリーターと言うやつである。
藤宮は大学卒業後に就職に失敗し、そのまま就職浪人をしていたのだが三年前にようやく内定が決まり会社勤めをするようになっていた。ただ残念なことにブラック企業と呼ばれるような劣悪な環境での労働を強いられており、辞めたいと思いつつもずるずると二年間働いていた。そしてつい最近になってついに我慢の限界が来たのか、会社の備品を壊してしまいクビになってしまったのだ。
それからは貯金を切り崩しながら細々と暮らしていたのだが、それも限界を迎えようとしていた。このままではいずれお金が無くなって飢え死にしてしまう。そうなる前に何かしら新しい職を探さなければと考えたものの、今まで就活をしていなかったこともあって何をすれば良いのか皆目見当がつかなかった。とりあえず求人誌を買ってきて読んでみたりしたのだが、どれもこれも条件が良くなかったり、そもそも自分がやりたい仕事がなかったりと上手くいかないことばかりだ。そうして求人誌を読みながらうんうん悩んでいる内に時間はどんどん過ぎていき、やがて求人誌の期限切れとなってしまい、求人誌を捨てざるを得なくなった。ああもう駄目だと諦めかけたその時だった――ふとある広告を見つけたのだ。
『急募! 経験者優遇☆』
その文字を見た瞬間、僕はこれしかないと思った。何故ならそれは僕にとって天啓とも言えるような内容であったからだ。それを見て即座に電話をかけて面接を申し込むと、数日後にはあっさり採用が決まった。しかもかなり高待遇での就職となった上に給料日が毎月25日の固定給制とのことなので、こんなに都合の良い話があってよいのだろうかと逆に心配になったくらいである。
しかしそんな僕の思いとは裏腹に話はとんとん拍子に進み、気が付けば入社初日となっていた。初出社ということで緊張していたのだが、いざ会社に着くとその気持ちはすぐに吹っ飛んでしまった。というのも想像以上に職場環境が良かったからである。まず驚いたことに社員寮完備であったことに加えて食堂やジムといった施設まで揃っていたのだから驚きだ。それに福利厚生面に関しても充実しており、例えば有休消化率はほぼ100%に近いとのことであった。僕はその話を聞いて思わず「ブラック企業じゃないのか?」と思ってしまうほどだったが、実際にホワイト企業であるらしいのだ。そのため仕事へのモチベーションはかなり高かった。
そして迎えた初出社の日、僕は配属された部署へと足を運んだ。僕が所属することになった部署の名前は『情報技術部』だった。ちなみに部署の規模としてはそれなりに大きいらしく、全社員のうち実に三割近くが所属しているとのことだ。また、その部署では主にコンピュータシステムの管理業務を行っているそうだ。
僕は自分の席へと向かうと椅子に座って窓の外を見つめていた。外はまだ明るくて空は青く澄み渡っている。雲一つない青空だ。そんな青空の下に広がる校庭からは部活をしている生徒たちの声が聞こえてくる。いつも通りの放課後の風景だった。
今日から僕たちは二年生になる。去年は受験勉強に追われながら必死になって毎日を過ごしてきたけど今年からは違う。来年から高校生になったらどんな高校生活を送るのかとかまだ分からないけれどとりあえず今は青春を謳歌しようと思っている。だから僕はさっきまで友達と一緒に新しいクラス発表の掲示板を見に行ってきたんだけど……そこには僕の知っている人の名前がなかった。
「うわぁーマジかよ!俺だけ別のクラスじゃねぇか!」
そう言って落ち込んでいるのは同じクラスの男子生徒だ。彼の名前は斎藤和也。サッカー部に所属していて運動能力が高くて顔立ちも良いことから女子からの人気が高いらしい。ただそんな人気者の彼だけど何故か僕のことを慕ってくれているらしくよく話しかけてくれる。
「大丈夫だよ。同じクラスでなくても会える機会はあるんだし」
「そうだぜ。それに斉藤はモテるんだから彼女の一人くらいすぐ作れるだろ?」
「確かにそうなんだけどよぉ〜、お前らは良いよな。高嶺の花と呼ばれる如月さんと同じクラスになれたんだし」
「それは関係なくね!?」
彼の名前は高坂奏太。成績優秀スポーツ万能のイケメンで中学の頃はサッカー部に所属していたこともあり女子たちからの人気が高かった。ちなみに彼は中学時代に好きな人がいて告白をしたのだが振られてしまい傷心の日々を送っていたところを僕が慰めたことで仲良くなったのだ。
それに比べて僕の方はというと成績は中の中で特にこれといった特技もなく見た目だってそこまでカッコ良くない。