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「アウローラから聞いた、男を捜しているそうだな」




前言撤回、信用出来ない、お喋りすぎる。




「ど、どうしたんですか。お父様いきなり」

「いや……そうだな、お前は年頃の…………娘になって日が浅いとは言え、そう……貴族の女性は婚約を……そうか」

「お父様、落ち着いて下さい」




また面倒くさいことになった。デジャブ。これ何回目よ。

顔が引きつって仕方なくて、私の表情筋が決壊するのが先か、フィーバス卿が退いてくれるのが先かという風になっていた。まあ、もしかしたら、貴族の令嬢の婚約問題は普通なのかも知れない。前世と違って、それで大きく明暗を分けるとか。それで、子供が出来なかったらようなしとか。まあ、それは前世でも時代的にあったし、残っているものだけど。

私は、フィーバス卿の方を向いたまま、にこりとした笑顔で、違いますと答えるが、フィーバス卿は険しい顔で私を見ているばかりで。




「……あの、本当に私、婚約云々は考えていないので」

「本当か」

「今のところはですよ。お父様に探して貰う必要もないですし、今は――」

「どうした?」

「いえ、何でもないです。そう言うことなので失礼しますね、ではー」




私は、その場をサッと切り上げて、部屋に戻ることにした。好きな人がいても、それを口にすることが今は許されない。まだその時ではないし、フィーバス卿を困らせてしまうかも知れない。皇太子が好きだという話をしたら、何故? となるし、出会った当初は、アルベドとここに来たわけだから……ああ、でも皇太子の存在ぐらい知っていて。だからといって、叶わないかも知れない恋に……うーん。




「もう、余計なこと!余計なことなんだからあ!」




私は、廊下を歩きながら一人で叫んでいた。考えたくもない事を、周りのせいであれこれいわれるのは好きじゃなかった。だから放っておいて欲しいのに。フィーバス卿は恋愛のことになると神経質になってしまうのだろう。ここに来てよく分かった。

私は長い廊下を一人歩いていると、前から見知った顔のメイドが歩いてきたため、呼び止めた。




「アウローラ!」

「あー、ステラ様じゃないですか。おはようございます」

「おはようございますじゃないし、アンタ、お父様に余計なこと言ったでしょ!」

「余計なことって、わー服が伸びますー!」




私は、思わずアウローラに掴み掛かってしまった。それほど強く掴んでいないので、痛くは無いはずだが、確かに服は伸びてしまうかも知れない。でも、アウローラが余計なこと言ったからこんな風になってしまったんだ。私は、ぐわんぐわんと彼女の襟を引っ張った。

アウローラはわけが分からないようで、「え、え?」と繰り返している。




「お父様から、また婚約のこと!お父様、あの話題になると、すぐに取り乱すの!だから、余計なこと言わないで!」

「ステラ様には、いい人がきっと見つかりますから」

「そうじゃないの!私が言ってるのはそうじゃないの!」




アウローラもいってしまえば恋愛脳なので、何を言っても聞き入れて貰えなさそうだった。多分、ここに私の味方はいない。アルベドだったら理解してくれるだろうけど……




(――って、いつになったらアルベド帰ってくるのよ……)




アルベドだから心配ない……と思っていたけれどやっぱり少し心配だ。もしかしたら、エトワール・ヴィアラッテアに攻略されてしまったかも知れないと、そう思ってしまった。考えたくもない事で。でも、あり得てしまうかも知れないことで。考えれば考えるほど、悪い方向に行ってしまうと思ったので、私はそこで思考を止める。なんで出ていったのか理由も分かっていないから、不安なのはその通りだけど。

私がいきなり黙ったので、アウローラは心配そうに私の顔を覗き込んだ。




「あの、大丈夫ですか?」

「大丈夫。ちょっと、疲れただけ」

「休みますか?」

「ううん。大丈夫、ちょっと散歩してくる」

「屋敷の外に出るときは言って下さいね。勝手にいなくなられると困るので」




と、アウローラはふんす、と怒る。確かに、いきなりいなくなったら、またフィーバス卿が血眼になって探すだろう。迷惑を掛けたいわけじゃないので、私は今日は外に出ないことを伝えて再び歩き出す。すると、その後ろをアウローラがついてきた。やることがあるんじゃないかと立ち止まれば、彼女も立ち止まる。




「どうしたの?」

「私、ステラ様の侍女ですし。ステラ様の身の回りのお世話をしなければ!」

「心を入れ替えたって感じだなあ」

「ひ、酷いです!心を入れ替えたんです。もうそんな目で見ないでくださいよー!」

「冗談だって。でも、やることとかないの?」

「はい、ありません。こう見えて、一応メイドとしてはそれなりの経験を積んでいるので。やることは早いですよ」

「頼もしいな」

「はい。だから何でも言って下さいね。もう、嫌味言いませんから!」




にこりとアウローラはいう。単純なんだろうなあ、と私は思いながら再び足を進めた。養子になって一週間以上は経過している。今のところ進展がない。ラアル・ギフトの元を訪れるのは、もう少し先になりそうだし、アルベドも……他の攻略キャラとの接点が全くない状況。何のために戻ってきたのか、また分からなくなって、焦って行動したら失敗しそうで動けない。一人じゃ何にも出来ないんだと痛感させられる。




「そういえばステラ様」

「何?」

「珍しく、辺境伯領にある貴族が来るそうですよ。ああ、風の噂なので、何処の誰、というのは聞いてないんですけど」

「珍しいの?」

「はい!普通に、辺境伯領が帝都から遠いのと、周りに強い魔物がいますからね。転移魔法が使えるか、それなりに強い魔法を使える貴族じゃないと」

「ということは、伯爵以上……いや、貴族の爵位と、魔法って関係無い?」

「いいえ。爵位と魔法は基本比例関係にあるので、関係ありますよ?ステラ様の言うとおり、伯爵以上ですね。そもそも、男爵とか、子爵とか訪ねてこないので。訪ねてきたところで、何を言うのやらって感じですよ」

「た、確かに……」




そうです、そうです。と、アウローラはいう。爵位と魔法は比例関係。勿論例外はあるらしいけれど、基本的にはそうだと。辺境伯領にくるのが珍しい理由は、魔物が強いのと、帝都から遠いのとと色々理由はありそうで。では何故訪れるのか。




(ラアル・ギフト?いや、違う。こっちからで向くといったし、そもそも、フィーバス卿が闇魔法の人間をむやみやたらに領地に入れないと思う……)




差別をするわけじゃないけれど、あまりいい風に思っていないようだったから尚更、闇魔法の貴族ではないだろう。それに、わざわざ訪問するということは、アルベドでもない。一体誰が来るというのだろうか。何故、フィーバス卿に会いたいのかも気になる。

私には関係無いことかも知れないけれど、気になって仕方がなかった。

私は、誰が来るのかさっぱり分からないまま、あの中庭のある廊下まで来ていた。




「あ……」

「どうしたんです?ああ、ステラ様、ここで魔法をフランツ様に打ち込んだんですよね」

「ひ、人聞きの悪い。あ、あれはテストで」

「分かってますよ」

「……」

「ひぃーっ、気分悪くしないで下さい!ね!」

「……分かってる。まあ、そう、そんな所。懐かしいわけじゃないけど、ここを通るのってあれ以来だと思って」




私はそういって、中庭の方に目を向けた。すると、ガサガサと何かが揺れ動く音が聞えた。




「アウローラ。魔物は、屋敷の中にはいってこれないのよね?」

「え、もちろんですが、何かいました?」

「……」




魔力は、感じない。じゃあ虫だろうか、それともネコとか……? 何かがいる気がして、私は思わず中庭の方へ走った。後ろからアウローラの声が聞えたが無視をして。音が聞えた方にむかい、草木をかきわけて進むと、青い草の上に、倒れた金色の毛の犬を見つけた。




「ポメラニアン……?」


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